外国人が見た日本の男性差別②アメリカにはない「女性専用車両」

 

はじめの一言

「私は今まで、このような立派な稲、またはこの土地のように良質の米を見たことがない。(ハリス 江戸時代)」

「逝きし日の面影 平凡社」

 

ハリスは重要人物だから、覚えておこう。

日本の江戸時代後期に訪日し、日米修好通商条約を締結したことで知られる。(ウィキペディア)

この日米修好通商条約を結んだことで、大老の井伊直弼は「桜田門外の変」で暗殺されている。

 

 

前回の続き。
今まで外国人の友だちとつきあっていて、彼らから指摘された日本の社会にある「男性差別」について書いていきたい。

 

今回の内容

・海外の女性専用車両
・日本の女性専用車両
・「これは、差別」の事例

 

・海外の女性専用車両

友だちのアメリカ人が東京に行ったときに、女性専用車両に乗ったらしい。

「話には聞いていたけど、本当にあった!」

アメリカにはないものらしくて、ちょっと興奮気味に話す。

 

アメリカにはないけれど、女性専用車両がある国はある。

ボクはエジプトで、それと知らずにこの女性専用車両に乗ってしまった。
まったく理由が分からなかったけど、そこにいた女性たちに猛烈と怒られた。
それはもう、トラウマになるぐらい。

 

そのうちの1人が英語で説明してくれて、やっと理解できた。
エジプトの場合は、宗教上の理由で女性専用車両がもうけられている。
パキスタンのバスにも、女性だけが座るスペースがあった。
これも、宗教上の理由によって。

イスラム教やヒンズー教では男女の同席が忌避されるため、これらの宗教の信者の多い国では、戒律に基づき女性専用車両(男女別車両)を設定している例がある

(ウィキペディア)

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エジプトの首都カイロ

 

日本では宗教上の理由ではなく、「痴漢対策」としてこの女性専用車両がある。
これが外国にはなかなかないらしい。

最近も、「ニューヨークで『女性専用車両がある』なんて言っても、冗談だと思って誰も信じてくれない」という記事を見た。
東京でその車両に乗った友だちも、ニューヨーク出身のアメリカ人。
彼女からしたら、これは間違いなく男性への差別になるという。

「なんで、男は誰も文句を言わないの?」
と不思議に思うレベルらしい。

 

・日本の女性専用車両

日本では、女性専用の車両は明治時代にあったという。
でも、現在の女性専用車両が登場したのは、2000年のころ。

2000年代
この頃になると、車内における迷惑行為や痴漢行為が社会問題として大きく取り上げられ、明瞭な犯罪として意識されるようになった。このような状況を背景に、女性が安心して乗車できる事を目的として女性専用を謳った車両が導入され始める事になる。

(ウィキペディア)

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JR東日本のステッカー

 

2000年ごろから、痴漢が大きな会門問題になっている。
そうしたことを受けて、女性専用車両が導入されることになったようだ。

 

では、女性専用車両が「男性差別」にあたるかどうか?
これについては、正解はない。
「差別だ」
「差別にはあたらない」
いろいろな立場から、賛成・反対の意見を述べているのが現状。

 

海外に目を向けると、台湾でも女性専用車両が導入されたことがある。
でもこれが男性への差別とみなされて、すぐに姿を消した。

台湾では女性専用車が男性差別であるとされて3ヶ月で廃止になっている(ウィキペディア)

 

・「これは、差別」の事例

この「WOMEN ONLY(女性専用)」が差別になるかどうかについては、議論が分かれている。

でも、「~専用」「~以外お断り」といったもので、「これは、完全にアウト」というのはある。

1つ目は、「JAPANESE ONLY(日本人専用)」。
これは、2014年に起きた「浦和レッズ差別横断幕事件」のもので記憶に新しいと思う。

浦和レッズ差別横断幕事件

当日行われた試合において人種・民族差別を想起させる横断幕を掲出した事件である。

試合中警備員により撤去を求められたが、横断幕は試合終了まで掲出されたままであったため、クラブ側の責任も問われた。
浦和にはJリーグ初となる無観客試合という処分が下された。

(ウィキペディア)

これは、議論の余地はなくダメ。

 

 

2つ目は「犬と中国人はお断り」。

20世紀初めの中国の上海には、フランス租界があった。
そして、その中の公園には「犬と中国人は入るな」という侮辱的な規則がもうけられていた。

「犬と中国人、入るべからず」の規則で悪名が高かった共同租界内とフランス租界内の公園

(ウィキペディア)

 

こうしたものは、自分たち以外の存在への「蔑視」が根底にある。
だから、これは差別になってしまう。

 

日本の鉄道の女性専用車両については、「男性への蔑視」にもとづくものではない。
その点で、上の2つの例とは性質がちがう。
だから、これが差別になるかどうかの判断が分かれているんだと思う。

このことは次回も書いてきます。

 

 

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5 件のコメント

  • 鉄道会社は、男性の運送を差別的に拒否しているわけではありません。
    鉄道会社は男性を他の車両(多少混雑中かもしれませんが)により目的地まで安全に運送をします。
    ご安心を!
    どうしても、男性が女性専用車両に乗りたいならば、駅の係員は拒否しますよ
    (鉄道運輸規程第2条   旅客、貨主及公衆は鉄道係員の職務上の指図に従ふべし)

  • そうですか!
    安心しました。
    まあ、女性専用車両に乗り込もうとする男性は例外でしょうね。
    前にそんなことがあったと聞きましたけど。
    この問題はどうしようもないです。

  • 女性専用車両は男性差別です。

    コラム氏ならご存知だと思いますが、その理由は「分離すれども平等」の経験からです。従ってどんな属性でも「公共空間を分離した時点」で差別なのです。これが世界的(実際は欧米的な)な常識であり守るべき価値です。

    で、日本でなぜ評価が定まらないかというと「日本的な価値観と欧米的な価値観が対立していて、公共社会の通念は日本的なものが優先だから」です。

    個人的には、女性専用車両は「差別」だと認識していますが、日本人として「日本的な価値を優先する」なら許容します。
    ただ一貫性は要求します。

    たとえば「男女紅葉機会均等法」による女性の社会進出は「日本的な価値とは違う」のでやめるべきだし、近年日本の男女平等の進み具合の指標として使われる世界男女平等ランキングも「日本的な価値観と合わないから参考にしない」とすべきです。

    日本は1964年の女性差別撤廃条約批准から「欧米並みの男女平等推進」に舵を切りました。雇用均等法も条約に批准するために改正されたものですし、その結果女性専用車両が出来たわけです。
    だから、本来日本の男女平等は「欧米基準」によって整備され推進されているので、女性専用車両は欧米基準で「差別」なのです。

    日本の政府はこれを熟知しているので「法律による男性排除」はしていません。法律で男性が乗れないとすると(皮肉なことに)女性差別撤廃条約に抵触してしまうからです。

    だから東大平行線氏の言説は間違いで、鉄道会社も国交省も「男性も乗れますよ(ただ、男性側は任意の協力で乗らないですよね)」としているだけなのです。

    女性専用車両は差別の原則から見ればアウト、日本の価値観からみればセーフ、ただしそれは法律じゃなく「男性の協力にしているから」という姑息な状態なのです。

  • 東京で女性専用車両を見たアメリカ人やイギリス人はおどろいていたから、これは欧米の価値観ではないですね。
    これを法律で定めることはむずかしいから、「男性の理解と協力のもとに」運行されているのが現実でしょう。
    でもそれを必要としている現実がありますから、社会的な暗黙の了解ですね。
    「日本的な価値観と合わないから参考にしない」というの態度はまったくそのとおりで、キリスト教の価値観や移民から成りたつという背景が違いますから、日本の価値観に応じて取捨選択しないとダメです。

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    今まで、東南アジア・中東・西アフリカなど約30の国と地域に旅をしてきました。それと歴史を教えていた経験をいかして、読者のみなさんに役立つ情報をお届けしたいと思っています。 また外国人の友人が多いので、彼らの視点から見た日本も紹介します。