はじめの一言
「ニコニコしている所から判断すると、子供達は朝から晩まで幸福であるらしい(モース 明治時代)」
「日本絶賛語録 小学館」
今回の内容
・「アジール」ってなに?
・アジールの歴史
大学生のころ、電車で大学に通っていた恩の子から痴漢にあったという話を聞いたことがある。
そのときその子は、ショックと恐怖で体が動かなくなってしまう。
声を上げるどころか、口が開かなかったという。
そのとき感じた怒りや屈辱の記憶はたぶんこれからも残ってしまう、と言っていた。
女性専用車両が導入されることによって、男性が不便を感じることはあるだろうけど、ここまで不快な体験をすることはない。
理想としては、痴漢がいなくなって女性専用車両の必要性がなくなればいい。
でも、現実的にむずかしい。
痴漢がなくなることはないだろう。
これまでにも考えられる限りの対策をしてきたけど、痴漢がなくなることはなかった。
痴漢をなくす手段なんて現時点ではない。
先ほどの女の子のように、痴漢にあうと動けなくなって声も上げられないような人がいたら、「男性差別であってもこの車両の導入はやむを得ないかなあ」と思う。
それは一種の「アジール」として。
そんなことを前回書いた。
今回はその続き。
・「アジール」ってなに?
「アジールってどんな意味だ?」
と思う人がほとんどだと思う。
アジールとは、「聖域」という意味の言葉。
アジール
聖域を意味する語。そこに逃げ込んだ者は保護され,世俗的な権力も侵すことができない聖なる地域,避難所をいう。古くはユダヤ教の祭壇,ギリシアやローマの神殿,日本の神社や寺院の領域が,これに当たる。
(ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典の解説)
アジールを簡単に言ったら、「そこに行ったら、絶対に守ってもらえるという避難所」でいいと思う。
ウィキペディアをみると、このアジールに近いものは各国にある大使館や領事館になる。
現代の法制度の中で近いものを探せば在外公館の内部など「治外法権(が認められた場所)」のようなものである。
(ウィキペディア)
教会が「アジール」だった。
「亡命」を例にとって説明する。
亡命
refuge政治的,思想的,宗教的,人種的,民族的相違などから,迫害などの身の危険を回避するために本国から逃亡し,外国に庇護を求める行為をいう。
教会および国家の支配層による弾圧を逃れてアメリカに渡った非国教徒たる清教徒,フランス革命の勃発によって諸外国に逃亡した亡命貴族 (エミグレ) ,既成秩序の転覆や民族独立革命を企図して本国から脱出した革命家など,古今東西の歴史において枚挙にいとまがない。
(ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典の解説)
*余談
このフランスの「亡命貴族 (エミグレ)」という言葉が、旅行者がよく使う「イミグレ」という言葉の語源じゃないかと思う。
入国管理を意味する「immigration」のこと。
調べてみたけど、確認できず。
それはおいといて。
「このままここにいたら、自分は殺されるかもしれない!」といった理由で他国へ亡命することがある。
そのときには、外国にある大使館や領事館に駆け込むという方法が多い。
大使館に入ったら、とりあえずは必ず保護してくれるから。
この保護してくれるところが「アジール」になる。
最近、18歳の北朝鮮人が亡命した。
数学五輪参加の北朝鮮生徒が亡命申請 香港で韓国総領事館に逃げ込む 富裕層も脱北
この場合、韓国総領事館がこの北朝鮮人にとっての「アジール」になる。
ここは実質的に「韓国の領土」だから、ここに逃げ込んだら香港の警察も中国や北朝鮮政府も手を出すことができない。
この「アジール」では、これ以上ないぐらいの安全を確保される。
・アジールの歴史
ウィキペディアには、イギリスでのアジールの例がのっている。
14世紀前までは、ウェストミンスター寺院を始めとするいくつかの教会がこのアジールとして認められていた。
だから罪を犯した人間ても、ここに逃げ込んだら一定期間は絶対的な保護下におかれていた。
ウィンチェスター大聖堂、ウェストミンスター寺院、ヨーク大聖堂が含まれる。これらの聖域に逃げ込んだものは40日間王の令状によって逮捕されない権利を得た。
(ウィキペディア)
国王の命令すらも、このアジールには通用しない。
だから、アジール(聖域)に入った人間を逮捕することは誰にもできなかった。
でもアジールにいられるのは、ここに逃げ込んできてから40日間だけ。
教会に逃げ込んだものは、告悔をし、武器を渡し、逃げ込んだ教会の責任者または修道院長の監督を受けた。この聖域にとどまる40日間に、罪人は2つの選択肢のうち1つを選ばねばならなかった。
ひとつは当局に渡されて裁判を受けることであり、もうひとつは有罪を認めて最短距離で「王国ノ領土外ニ」亡命し、王の許しを得ぬ限り帰国しないことであった。
後者を選んだものは、誰であれ再び戻れば法によって処刑されるか、教会から破門された。両方の処罰が課されることもあった。(ウィキペディア)
つまり教会というアジールに逃げ込んでも、40日の保護下にある間に2つに1つを決めなくてはならなかった。
アジールから出た後、元のイギリスに戻るか?海外に亡命するか?
このイギリスの話は、亡命とよく似ている。
韓国総領事館に逃げ込んだ北朝鮮人にしても、いつまでもそこにいることはできない。
イギリスの例では教会に逃げ込んだ後、またイギリスに戻るか外国に亡命するかを選んでいた。
この北朝鮮人の場合、北朝鮮に戻ることは考えられない。
戻ったら処刑されてしまうだろう。
だから、韓国に行っている。
現在の世界でおこなわれている亡命というのは、このアジールとそれを求める「アジール権」が元になっているのではないかと思う。
ということで、ここまでが「アジール」というものの説明。
次回、これをもとに日本の鉄道にある「女性専用車両」のことを書きます。
こちらもどうですか?
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