はじめの一言
「日本の母親程、辛抱強く、愛情に富み、子供につくす母親はいない
(モース 明治時代)」
「日本絶賛語録 小学館」
今回の内容
・「青の都市」ジョードプル
・妻たちの手形
・1987年にあったサティー
・「青の都市」ジョードプル
インドには、サティーという悪名高い宗教行為があった。
サティー
ヒンドゥー社会における慣行で、寡婦が夫の亡骸とともに焼身自殺をすることである。日本語では「寡婦焚死」または「寡婦殉死」と訳されている。 本来は「貞淑な女性」を意味する言葉であった。
(ウィキペディア)
夫が亡くなったら、その夫を焼く炎に飛び込んで自分も一緒に焼け死ぬという恐ろしいもの。
詳しくは前回書いたから、そっちを見て。
インドを旅行していて、ジョードプルという都市を訪れたときにこのサティーの「なごり」を見たことがある。
*ジョードプルは乾燥したラージャスターン州にある都市で人口は約130万。
青い壁の家が多いことから、「ブルーシティー」なんて呼ばれとる。
ジョードプルの一番の観光名所は、かつてこの地を治めていたマハラジャ(王)が住んでいた「メヘランガール城」だろう。
ここにサティーの「痕(あと)」がある。
メヘランガール城
・妻たちの手形
世界遺産にもなっている有名なこの城には、サティーをおこなった女性の手形が残されている。
あるとき、ここのマハラジャ(王)が亡くなった。
この当時の習慣として、そのマハラジャの妻だった女性もサティーをしなければならない。
つまりマハラジャの死体を焼く炎に飛び込んで、自分も生きたまま焼かれることになる。
これらの手形は、そのサティーに向かうときに妻たちが残していったもの。
このサティーがおこなわれたのは1843年だったという。
サティーの様子(ムガル帝国誌 ベルニエ)
当時のインドには、サティーをおこなう前に手形を残す習慣があったのかこの女性たちがこの世に何かを残したいと願ってこの手形を押したのかは分からない。
いずれにせよこの手形を押したときには、これから自分は焼かれて死ぬことを覚悟していたはず。
「このとき、マハラジャの妻たちは、どんな思いで手形を押したのだろう?」
この小さな手形を見ていて、つくづくそう思った。
いろいろなものを見たインド旅行の中でも、この手形はとても印象に残っている。
当時の女性の衣装
・1987年にあったサティー
1987年、インドに衝撃が走る。
インドからなくなったと思われていたサティーがおこなわれたから。
場所は、ジョードプルと同じラジャスターン州の中で、「ジャイプル」という州都の近くにある村。
1987年9月4日、18歳のループ・カンワルは病死した夫の遺体と共に生きながら焼かれる。8ヵ月にも満たない結婚生活だった。
この村は大都市のジャイプルの近くにあって、決して教育レベルが低い「未開の村」ではなかったという。
そのときの様子も詳細に分かっている。
4000人の人たちが見ているなか、こんな惨事が行われていたという。
彼女は火葬用の薪に上がる前、麻薬を大量に飲まされていたこと、火の中から叫び声をあげ3度逃げ出そうとするも、火の周りで彼女の心変わりを見張り、警護していたラージプート族が竹ざおで逃げ出すのを防止したこと、また叫び声もドラムの音にかき消されたこと、等によりサティーは強制されたものだったと報告された。
ここに「ラージプート族」という言葉がある。
ラジャスターン州には「ラージプート族」という人びとが住んでいる。
彼らのカースト(ヴァルナ)は「クシャトリア」で戦士カーストになる。
ラジャスターンとは「ラージプート族の土地」といった意味で、ここでは彼らの影響力がとても強いのだ。
前回の記事で書いたのだけど、17世紀に行われたサティーの様子を思い出してほしい。
もう手遅れなのです。悪魔のようなバラモンがそこにいて、大きな棍棒を持って彼女達を動転させ、励まし、中に押しやります。
(中略)女性は、身の周りや衣服に火がつくのを見てもがいていたところ、あの死刑執行人達が棒で彼女を二、三度押し戻しました。(ムガル帝国誌 ベルニエ)
ラジャスターン州を旅行していたときに、現地のガイドからこんな話を聞いた。
むかし、ラージプート族が戦いにいくときには、恐怖心を減らして戦意を高めるためにアヘンを飲んでいたという。
サティーをおこなうときも、同じ理由で女性にアヘンを飲ませていたらしい。
棒をもって女性が逃げ出さないようにしたり麻薬を飲ませたりするなど、これでは17世紀のサティーとほとんど変わるところがない。
もちろんこの出来事は現代のインドの常識から大きく外れたもので、インド人に大きなショックを与えた。
よかったら、こちらもどうですか?
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