外国人には不思議な日本人の宗教観・ロボット&ネット炎上供養

 

明治時代の日本に、エリザ・シドモアというアメリカ人女性がやってきた。
彼女の旅行記には、日本の印象についてこう書いてある。

日本は今世紀最大の謎であり、最も不可解で矛盾に満ちた民族です

「シドモア日本紀行 (講談社学術文庫)」

 

日本は島国で、外部との交流が少なかった。
そんなガラパゴス国家・日本では、外国人から見たら不自然なことがよくある。

いまの日本は、さすがに「今世紀最大の謎」というほどの国ではない。
でも外国人からしたら、「なんだそりゃ?」と首をかしげてしまうような不思議なことはある。
今回は、日本人独特の宗教観からおこなわれる儀式を紹介しようと思う。
日本人が見ても、「は?」と思うかもしれない。

今でも、日本人は「不可解で矛盾に満ちた民族」かもしれない。

 

アメリカの著作家で写真家、地理学者でもあったエリザ・シドモア
1885年から日本を何度か訪れた親日家で、首都ワシントンD.C.に桜並木を作ることを提案し、これがいまの「ワシントン桜まつり」につながった。

 

さて2015年に千葉県の光福寺で、犬型ロボットAIBO(アイボ)の”お葬式”がおこなわれた。
もちろん、これはネタではない。

日本の仏教寺院がマジでロボットの葬儀をした、ということで世界が注目した。
フランスAFPがこの様子を記事(2015年2月28日)にしている。

もはや生産されていない部品の唯一の調達源は「ドナー」となってくれる他のAIBOだ。「葬儀」が済んだAIBOから、修理を依頼されたAIBOに「移植手術」が行われるという。

イヌ型ロボットAIBOの「合同葬儀」 千葉

 

アイボのお葬式を見た外国人の反応は?

Japanese has always been eccentric!
日本人はいつも変なんだ!

How immensely idiotic…
なんというバカバカしさ・・・。

外国人よ、これが日本のブッディズムだ。

日本人には、物には霊魂が宿るという宗教観がある。
だから、古くなった人形を供養することはよくある。
でも、アイボはどうだろう。
個人的には、ロボットと魂は一番遠いところにあるような気がする。

 

イスラーム教(キリスト教も)では偶像崇拝が禁止されている。

この「偶」という漢字は、土偶(どぐう)の偶で「人の形に似せたもの。人形(デジタル大辞泉の解説)」という意味。

人がつくった像を崇拝するという行為は、神(アッラー)の神聖を汚すことになる。
それでイスラーム教では偶像崇拝は固く禁止されている。
*瀆神(とくしん)とは神聖さをけがすこと。

神は万物をつくった存在であるのに、神の被造物の1つにすぎない像を拝むなど、途方もない瀆神行為である

「イスラム原論 (小室直樹)」

 

「人間がつくったものに霊魂が宿る」という宗教観は、キリスト教徒や特にイスラーム教徒には理解しにくいと思う。

 

でも、科学技術と仏教のコラボなんてマジ日本的。

フランスの世界的な社会人類学者レヴィ・ストロースは日本を見てこう言った。

私が非常に素晴らしいと思うのは、日本が、最も近代的な面においても、最も遠い過去との絆を持続し続けていることができるということです

「日本賛辞の至言33撰 (ごま書房)」

AIBOのお葬式に、最も近代的な面と最も遠い過去との絆が見られるではないか。
これこそ日本だ。

 

「付喪神」に触れる外国人もいた。
日本人の宗教観をよく知ってらっしゃる。

 

でも、アイボが供養されることなら、まだわかる。

ボクの理解を超えたのは、「ネット上の炎上を供養する」という宗教行為だ。

日本仏教も来るとこまで来たらしい。

新潟県にある国上寺では、ネット炎上を供養してくれる。
「ねとらぼ」の記事(2018年10月03日)によると、炎上したツイッターやインスタグラムなどのSNSデータ(画像も可)をこのお寺に送ると、お坊さんが全力で供養してくれるという。

動画等の重いデータの場合は、ファイル便などの外部サービスを利用し、そのURLをアップロードすることで供養可能。炎上した火が広がらないよう、今後炎上しないよう、同お寺の住職が全力で供養するとのことです。

国上寺がネット上の「炎上」を供養するサイトをオープン 火渡り大祭でお焚き上げして欲しい炎上も募集中

 

このお寺は、ネット炎上を”現代型の災難”と考えている。
それで寺のホームページ上で、炎上供養専用サイトを開設した。

過去の炎上をしっかり供養することで、ネット上での無病息災を願ってくれるらしい。
「供養する」ということは、ネット炎上にも霊魂が宿っているということか?
まーいろいろとよくわからないけど、坊さんがんばれ。

でも、無料でやってくれるというから、商売をしているわけではない。

くわしいことはサイトを見てほしい。

開設されたサイトページには、「上杉謙信、武蔵坊弁慶、酒呑童子、源義経、良寛」というすさまじい人たちがいる。
国上寺にゆかりのある人たちらしい。
どう見ても、パチンコ台なんだが。

 

この”ネット炎上供養”の登場には、ネットユーザーもとまどっている。

・よく考えたら
供養ってどういう状態になるんだ?
・利用者0のままサービス終了の予感
・なんだこれ
・さすが新潟 変わってるな
・火葬の二度焼きやん
・残念、ネットの炎上データは消滅させることが出来ない。
・世俗化しすぎる宗教というのも問題だよな
・ネット上での無病息災ってなんだよwww
・無料でやるところに真面目さと本気さが出ているよね。
・おれらが成仏してまうやんか
・なかなか面白いではないか。

 

このネット炎上供養について、アメリカ人とインドネシア人の感想を聞いてみた。
でも感想を聞く前に、この話を理解してもらうことがむずかしかった。

彼らはネット炎上も供養もわかる。
でも、「ネット炎上供養」になると、よくわからなくなる。
まー無理もない。

彼らの反応は大体さっきと同じ。

「日本人はいつも変なんだ!」
「なんというバカバカしさ・・・」

日本人の宗教観はわからないけど、自分には関係ないから好きにすればいい、という感じ。

最後に、フランスの詩人で外交官だったポール・クローデルの言葉を紹介しますね。

私が断じて滅びないことを願う一つの国民がある。それが日本人だ。あれほど興味ある太古からの文明は消滅させては」ならない。

「日本絶賛語録 (小学館)」

ホントそう思う。
やっぱ、今世紀最大の謎かも。

 

これは真面目な神道の儀式

 

 

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今まで、東南アジア・中東・西アフリカなど約30の国と地域に旅をしてきました。それと歴史を教えていた経験をいかして、読者のみなさんに役立つ情報をお届けしたいと思っています。 また外国人の友人が多いので、彼らの視点から見た日本も紹介します。