日本文化の大きな特徴に「アレンジ」がある。日本人は外国から伝わったものを、自分たちの好みや価値観に合わせて変形し、日本化してしまう。
中国に起源を持つものを日本風に変化させた結果、今では中国人でさえ、そのルーツが中国にあるとは気づかないものもある。
たとえば「鯉のぼり」で、これは中国の「登龍門」の話に由来する。でも、日本に住む中国人や香港人に聞くと、鯉のぼりを純粋な日本文化と思っていて、ルーツが中国にあることを知っている人は1人もいなかった。
日本人はそんな魔改造が得意だ。イギリス発祥のキットカットを日本風にアレンジして、日本酒や抹茶味のキットカットをつくり出し、イギリス人を驚かせることは珍しくない。
着物や扇などの日本文化も起源は中国にある。でも、中国にルーツを持たない文化もある。
日本料理はそのひとつだ。中国から伝わった食材はあっても、料理方法は中国と大きく違う。
評論家の山本七平氏の本の中で、日本料理を見た中国人がこんな感想を述べている。
豆腐や味噌は中国伝来ですが、料理そのものの基本は全く違うというのです。
「日本人とは何か (PHP文庫)」
その中国人は「料理に関する限り、日本人は縄文的であって中国的ではないらしい」と指摘する。
では、日本料理と中国料理にはどんな違いがあるのか?
「キッコーマン国際食文化研究センター」のサイトで、専門家が日中の食文化について説明しているので、以下のサイトを参考にして書いていこう。
まず、中国料理では油と火を使って作るものが多い。強力な炎を使って、大きな中華鍋をダイナミックに振って、チャーハンや野菜炒めを作る様子は本当に中国的だ。ちなみに、中国語で「がんばれ」は「加油」と書く。
これに対して、日本料理の大きな特徴は、生食が多いという点にある。日本には刺身や寿司のほかにも、TKG(卵かけご飯)があって生食の文化が発展している。ドイツ人とサイゼリヤへ行った時、彼は『半熟卵のミラノ風ドリア』を見て、「ドリアは西洋の食べ物に見える。でも、半生の卵を使っているのは日本人らしい発想だ」と言った。
上のサイトでは、日中でそのような食文化の違いがうまれた理由を「水」に求めている。
島国の日本は良い水に恵まれ、生のまま・茹でるだけ・煮るだけで食べることが多い。生で食べるということは水で洗っただけで食べられることであり、茹でる・煮るは水が良くないとおいしくない。
日本には豊かでキレイな水が豊富にある。そんな自然環境が日本の生食文化を生み出したという。汚れた水でも加熱すれば浄化されるから、東アジアでは「蒸し料理」が広まったという。
レコードチャイナの記事(2019-02-28)でも、中国人が日本の「生卵」に驚いている。
生卵は「ハードルが高すぎる」・・・日本人は生で食べて大丈夫なの? =中国メディア
「食」ほど分かりやすい文化の違いはない。
中国を旅行していて、カエルやヘビ、サソリやムカデも食べる人民の胃袋には何度も感心した。
広東料理は「4本足なら机とイス以外、2本足なら親以外なんでも食べる」と言われるほど、いろんなものを食材にしてしまう。
しかし、中国には「生食」の食文化がない。
あったとしてもそれは本当に例外的で、普通ははそんなものを食べないから、日本人の生食に驚く中国人は多い。
それで、中国メディアの『今日頭条』が「日本人は生卵を食べるが、寄生虫が怖くないのか」という記事を載せた。中国人が卵かけご飯を見ると、寄生虫を心配してしまうらしい。
実際には、生卵で注意しないといけないのはサルモネラ菌などの「細菌」で、日本の卵はその問題をクリアしている。紫外線で殺菌処理したり、サルモネラ菌などが入っていないかチェックしたりしているから、日本で販売されている卵は安全だ。
スーパーに並んでいる卵には賞味期限も明示されているから、日本では「生卵を安心して食べることが出来る」と中国メディアが太鼓判を押す。
一般的に、中国で販売されている卵には賞味期限の記載がないため、卵を生で食べるのはとても危ないらしい。
しかし、そもそも中国には食材を生で食べる文化がなく、卵も加熱することを前提にしているから、賞味期限は気にしなくていいらしい。
だから、中国に行って、日本の感覚で卵かけご飯を食べることは絶対にやめたほうがいい。

北京の屋台で見かけたサソリやタツノオトシゴの串焼き
中国には、「羹(あつもの)に懲りて膾(なます)を吹く」という言葉がある。熱い物を食べて痛い目にあったから、次に膾(生食料理)を食べるときには、フウフウと息を吹いて冷まそうとする。この言葉は、過剰な心配や無意味な用心を意味する。
古代中国には生食の文化はあったが、明の時代のあたりから姿を消したという。
おまけ
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