関係最悪の理由:「日本=加害者、韓国=被害者」設定の愚

 

2019年7月2日の韓国紙・中央日報の紙面を見ると、韓国の政府や企業の悲鳴が聞こえてくるようだ。

 

半導体・テレビ・スマートフォンの製造に必要な3品目について、日本政府は韓国向け輸出の規制を発表した。
これでいま韓国はパニック状態だ。
でも前回にも書いたけど、この原因は韓国政府の認識不足が大きい。
韓国はいまの日本や事態を甘く見るところがある。

G20開催の2日前、河野外相が韓国文政権について「認識自体が事の重要性を全く認識できていない」と批判していた。
産経新聞の記事(2019.6.26)

河野外相「韓国は事の重要性全く認識できず」 韓国紙で

河野外相は日韓関係の発展を阻害する「最大の障害物」に徴用工問題を指摘する。
でもこの問題は、そもそも問題になることがおかしい。
1965年の日韓請求権協定で徴用工問題は解決したはずなのに、韓国側がいまになってこれをひっくり返して、最高裁判所が日本企業に賠償を命じてしまう。日韓関係の“終わり”が始まった。

河野外相は「国と国の約束を韓国側が一方的に覆したこと」が問題の本質と言う。
でも司法のミスは政治が取り返せばいい。
韓国最高裁の約束破りに、韓国政府はどう対応するのか?
日本政府は約8か月待っていたけど、文政権は「慎重に検討する」と言って何もせず、事実上放置してきた。
この間に日韓関係は戦後最悪といわれるほど悪化する。

それでもG20で安倍首相と会談をしたかった韓国側は、直前になって“解決案”を発表。
でもその中身は韓国政府にだけ都合のいいシロモノで、解決できない解決策だった。
日本政府は日本企業に賠償を命じたことを問題視しているのに、韓国政府が示した案では日本企業が慰謝料を払うことになっている。
問題がまったく解決されていない。
「これでは受け入れられない」と日本政府がすぐにこの案を否定したのは、これ以上ないほど当たり前。
こんな韓国政府のいい加減な態度が「事の重要性を全く認識できていない」という批判につながる。

いまになれば分かるけど、日本政府はG20までを最終期限と考えていた。
韓国側がそれまでに中身のある解決案を示していたら、日韓首脳会談は可能だったし、半導体部品の事実上の禁輸措置なんてとらなかったはずだ。

G20が開かれるまえ、「この機会を活用できるかどうかは日本にかかっている」なんて文大統領は言っていたけど、試されていたのは韓国だったのだ。
日本でいま何が起きているのか、G20が終わったら韓国がどうなるのか、文政権はまったく分かっていなかった。
それは韓国メディアも同様で、「G20終えてすぐ刀を抜いた安倍首相(中央日報)」と日本が韓国を襲ってきたように書いている。
これではまるで韓国が被害者じゃないか。
この件については約束を破った韓国側が全面的に悪い。

 

 

日本と韓国の認識の違いは、韓国側の「被害者設定」が大きな原因となっていると思う。
当然この前提は日本=加害者(悪者)だ。
過去の歴史問題については韓国自身が「最終的な解決」を確認したはずなのに、いまでもこの考え方を引きずって日本を巻き込んでいる。

2013年には当時の朴大統領が演説で、「(日本と韓国の)加害者と被害者という歴史的立場は、1000年の歴史が流れても変わることはない」と発言して国民がよろこび、「千年恨(日本を千年恨む)」という言葉が韓国の流行語となった。
そのことはこの記事をどうぞ。

韓国の3・1独立運動とは。朴大統領の日本への言葉「千年恨」

 

日本を“加害者・悪者”にする見方はきょうの中央日報の記事(2019年07月02日)にも表れている。

日本がなぜ報復措置とも取れるようなことをしたのか」という質問を受けて「日本はとにかく韓国が痛がるところを見たかった」とし

「韓国が痛がるところを見たい」…日本の経済報復の理由は

 

日韓協定を破った韓国はいま、日本企業の財産を不当に取ろうとしている。
日本政府は自国の企業を守りたいだけで、韓国が痛がるところを見たいのはネット民だ。

朝鮮日報の社説(2019/07/01)でも韓国を被害者、日本を加害者に設定している。

自身が主催した国際的な一大行事が終わるや、隣国を脅しにかかる安倍首相の度量の狭さが目につく。

「華為制裁の10倍」の衝撃、韓国政府は日本の報復に備えているのか

ここでも日本の信頼を裏切った自国への反省はなし。

 

自分たちを“被害者設定”しているから現実が見えず、認識が甘くなってしまい、「韓国半導体業界は深刻な打撃を受ける恐れも」といういまの事態を引き起こしてしまった。
日韓関係改善の第一歩は河野外相の指摘のように、韓国が事の重要性をしっかり認識することが大切。
そのためには自分を被害者、日本を加害者(悪者)に設定することなく、ものごとを客観的に見る必要がある。
でないと次の一撃は、刀の切り傷では済まなくなる。

 

「日本を甘く見過ぎた結果」というのは韓国の認識不足による。
日本をたたくだけではこの事態は解決しない。

 

 

こちらの記事もどうぞ。

国 「目次」 ①

韓国 「目次」 ②

韓国 「目次」 ③

近くて遠い日本と韓国 「目次」 ①

近くて遠い日本と韓国 「目次」 ②

近くて遠い日本と韓国 「目次」 ③

 

2 件のコメント

  • 日本側にも責任があります。それは、今までどのような点で韓国側に非があるのか、ハッキリ主張してこなかったことです。今回の件だって、きちんと言うべきことを言って対応しているのは政府だけ。多くのメディアは未だに「喧嘩は双方に非がある」さらには「かつて迷惑かけたのだから今回も譲ってやれ」といった論調です。
    もうね、白黒曖昧にして何でも「話し合いで解決できる」と言いつつしっかり反論せず、ただ相手のご機嫌を取る、そんな国際政治の時代は終わったということですよ。自国の利益は自国民が守るのです。
    年寄りの悪慣習に惑わされることなく、これからの若い人は世界に伍してしっかり自己主張のできる、そんな生き方を目指してほしい。

  • たしかにメディアの報道を見ると、双方それぞれに責任があるといった「どっちもどっち論」が多いです。
    でも約束を破った側と守った側では、破った側が悪いですよ。
    でもそう言えない空気が日本の社会にあります。
    それはいまの日本人が解決しないといけない問題ですね。

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    今まで、東南アジア・中東・西アフリカなど約30の国と地域に旅をしてきました。それと歴史を教えていた経験をいかして、読者のみなさんに役立つ情報をお届けしたいと思っています。 また外国人の友人が多いので、彼らの視点から見た日本も紹介します。