【日本人の誇り】アメリカ社会は杉原千畝をどう見てる?

 

さいきん、いつもの「FLASH」でこんな記事(2019.09.15)があった。

グーグル創業者も…米国のユダヤ社会に広がる杉原千畝の業績

 

杉原千畝(ちうね)といえば第二次世界大戦中のリトアニアにいた外交官で、約6000人のユダヤ人を救ったことで有名な人。

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高校日本史ではこうならう。

杉原千畝

リトアニアの首都カウナスの日本領事館代理の時、ナチスの迫害を逃れたユダヤ人らに、日本通過のビザを発給。1969年、イスラエル政府から『イスラエル建国の恩人』として表彰された。

「日本史用語集 (山川出版)」

杉原が出した「命のビザ」
杉原によって救われたユダヤ人は「スギハラサバイバー」と呼ばれる。

 

イスラエルには「諸国民の中の正義の人」という名誉ある賞がある。
ナチスによるユダヤ人虐殺(ホロコースト)から、自身の生命の危険をかえりみずユダヤ人を守った非ユダヤ人に授与する賞のこと。
日本人では唯一、杉原千畝がこれを受賞している。
2018年にリトアニアを訪問した安倍首相は、「杉原氏の勇気ある人道的な行動は世界中で高く評価されている。同じ日本人として誇りに思う」と語った。

 

「諸国民の中の正義の人」認定者に贈られる表彰状とメダル

 

杉原さんがどんな人物かわかったところで、「FLASH」の記事にもどろう。

グーグル創業者も…米国のユダヤ社会に広がる杉原千畝の業績

9月12日にアメリカのユダヤ人コミュニティクラブで、映画「杉原千畝」の上映会が開かれたという。
ただ、「いまですか?」という気がしないでもない。
唐沢寿明さん主演のこの映画が公開されたのは2015年だから。

ちなみにこの映画は海外でも上映され、杉原がいたリトアニアのカウナスではこんな様子だった。

450席の劇場は満席で50人の立ち見が出た他、上映終了後には5分間のスタンディングオベーションが起きた。

杉原千畝 スギハラチウネ

 

記事によると、アメリカではいまでもこの映画が上映されている。
これまでにサンフランシスコで2回、最近もラスベガスでも上映されたらしい。
なんで杉原千畝はアメリカでこんなに関心を持たれているのか?
くり返し上映されるのは、それなりのニーズがあるからだ。
アメリカにはユダヤ人がたくさんいて、社会での影響力がとても強い。
世界中のユダヤ人の4割弱がアメリカに住んでいるといわれる。

まあくわしいことはここを見てくれ。

2007年時点で、アメリカ合衆国はイスラエルに次ぐ(統計によっては最大の)ユダヤ人居住国家であり、約512万8千人を数える。

ユダヤ系アメリカ人

 

トランプ大統領の娘はユダヤ人と結婚してユダヤ教徒に改宗したし、グーグルやフェイスブックなどの世界的企業の創業者もユダヤ系だ。
アメリカでユダヤ人の存在感はとても大きく、そうなると社会的にも杉原千畝への関心が高くなる。

そんなアメリカ社会の事情にふれたあと、記事はこう結ぶ。

また、8歳の男の子が、授業で杉原千畝について、クラスメイトの前でプレゼンしたという話もある。
アメリカ社会で、ひそかに感謝されている杉原千畝。70年以上も前の出来事に、今も感謝を忘れないユダヤ人の律儀な一面を垣間見た。

 

これに日本のネットの反応は?

・日本政府の許可なくして杉浦千畝の功績はない
・杉原は政府の指示に反したから帰国後左遷されて冷遇されたんだろ
・数年前にユダヤ人研究者が日本の国策でユダヤ難民をアメリカに移送した真実を解き明かして外国で話題になってた
・日本人の中にもアブラハムヤコブイサクの血が流れている人たちがいるらしいからな。だから日本人は血統のユダヤなんていう人もいるんだよな。アークも四国にあるとか言ってるもんな。面白い国だよ日本は
・杉原千畝だけでなく当時はたくさんの日本人がユダヤを助けていたというな

 

日本でユダヤ人が話題にのぼると、ネットではよく「日ユ同祖論」がでてくる。
「日本人の中にもアブラハムヤコブイサクの血が流れている人たちがいるらしい」というのがそれ。

信じるかどうかは自己責任でどうぞ。

日本人(大和民族)の祖先が2700年前にアッシリア人に追放されたイスラエルの失われた十支族の一つとする説。

日ユ同祖論

杉原千畝が命のビザを出していたリトアニアのカウナス

 

さてここま読み進めると、「アメリカで杉原千畝ってすごく有名なのでは?」と思ってしまいそうだけど、実際のところはよく分からない。
個人的な経験だけど、リトアニア人やユダヤ人に聞いても杉原のことは知らなくてガッカリした。
そのことはこの記事をどうぞ。

何この違い?日本人には”誇り”でも、海外では”無名”の杉原千畝

杉原千畝がすばらしい人物であることはたしかだけど、「日本だけで盛り上がっている」という気がしないでもない。
いままで3人のアメリカ人に聞いたことがあるけど、「スギハラ、フー?」という反応しか返ってこなかった。
正直、ほとんどのアメリカ人は知らないと思う。

 

でも、欧米人にとって「ユダヤ人差別」はトラウマだから、「第二次世界大戦中にユダヤ人を全力で助けた」という事実は、ふつうの日本人が思っている以上に欧米では重く受け止められる。
杉原千畝のためにも日本のためにも、この史実はいろんな外国人に伝えたほうがいい。

 

おまけ

「ユダヤ人を救った日本人」というと杉原千畝が有名すぎるので、たまには樋口季一郎さんを思い出してあげてください。

樋口が日本人だと知ると顔色を変えて家に招き入れたという。そして樋口に対し、ユダヤ人が世界中で迫害されている事実と、日本の天皇こそがユダヤ人が悲しい目にあった時に救ってくれる救世主に違いないと涙ながらに訴え祈りを捧げた。

樋口季一郎

日本陸軍の中将だった樋口季一郎

 

 

 

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日本人の誇り・ユダヤ人を助けた杉原千畝と樋口季一郎。

 

5 件のコメント

  • ちょっと細かなところで引っ掛かりますが。
    日本語文法では正式には、(英語や中国語のように)語順によって文章中での「語」の役割が決まることは、原則としてありません。例えば、主語が文の最後に来ても構わない(助詞の存在で理解できる)。なので、オーソドックスな日本語では「アメリカ社会は杉原千畝“を”どう見てる」の方が正しいと考えます。
    今回のブログタイトルのような副助詞「は」の使い方は、間違いではありませんが、日本語初心者(特に外国人)にとっては非常に難しい用例だと思いますよ。

  • ご指摘ありがとうございます!
    完全にこちら側の確認不足でした。
    すぐ訂正いたしました。
    重ねてありがとうございました。

  • 『杉原千畝』の映画の最後のメッセージは『原爆は仕方なく落とした…』と、原爆を肯定的に伝えていて杉原千畝の功績を称える感じではありません。やはり、監督はアメリカ人でアメリカ優位の目線。日本人が観たら一般国民を大量殺戮した原爆は決して許されるものではないので、なんとも後味が悪い終わり方です。アメリカは現在も繰り返し上映することで、原爆を落とした理由付けをアピールして世界の人々(もちろん日本人も)を洗脳し続けていると感じます!さらに、映画の最後では、アメリカに逃げたユダヤ人も原爆開発に加わり、早く完成したようなことも盛り込まれています。単なる『杉原千畝』の映画てない印象をもちました!ご留意を!!

  • 諸国民の中の正義の人賞を受賞したのは、日本人では一人でも、世界中で、何万人もいる。
    知っでもいる人は関係者だけだろう。
    又、外務省の意向に逆らった訳でもなく、その試すにクビになった訳でもない。
    戦後、勲章を貰ってる事からも明らか。

  • なるほど。
    この映画は見ていなかったのですが、原爆投下を肯定的にとらえているんですね。
    まあそれがアメリカの見方ですけど。
    その視点は元の記事にはまったくなかったです。
    ご指摘ありがとうございます。

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    今まで、東南アジア・中東・西アフリカなど約30の国と地域に旅をしてきました。それと歴史を教えていた経験をいかして、読者のみなさんに役立つ情報をお届けしたいと思っています。 また外国人の友人が多いので、彼らの視点から見た日本も紹介します。