「文学の神様」、「小説の神様」なんて呼ばれていた横光利一が1936年(昭和11年)にヨーロッパへ渡ったとき、フランスのパリでこう思った。
パリーではアメリカ人であろうと、黒人であろうと、イギリス人であろうと同じことだ。ここでは人間など通用しない。通用するのは金だけだ。
「 欧洲紀行 (横光 利一)」
横光 利一(明治31年 – 昭和22年)のヨーロッパ滞在についてはここをクリック。
同日夕刻には街角で、疲れて沈み込んだ群衆を目撃して、「これがヨーロッパか。―これは想像したより、はるかに地獄だ」と書いている。
このまえの記事で、イタリアを旅行中の日本人2人がローマのレストランで、ぼったくり被害にあったということを書いた。
彼らがやられたのはこんな内容だ。
スパゲティ2皿 + 魚料理 + 水 + チップ=約5万円。
現地でこれは違法ではないらしいのだけど、やられた側の感覚としては間違いなくぼったくり。
日本人旅行者は店に抗議したけど受け入れられず、結局この額を払わされた。
この日本人も「これがイタリアか。―これは想像したより、はるかに地獄だ」と思ったかもしれない。
*その後、アメリカCNNがこれを取り上げるなどして大きな騒ぎになり、ローマ警察は「日本人客にチップを強要した」ということで店に罰金を払わせた。
逆にいえば、料理の値段は法の範囲内ということ。
このレストランは「常習犯」だったようで、CNNニュースでは、ドイツ在住のベトナム人がこの店で経験したぼったくり被害を紹介している。
魚料理(4人分)+ サービス料 + チップ=約5万6千円
このニュースについて日本のネットの反応をみたら、以外と多かったのはいわゆる自己責任論だ。
・承知で注文したんだろ?
払わなきゃダメだろ
・値段見てからオーダーしろよ…(´・ω・`)
・訳もわからずヨーロッパなんか旅行するからだよ(笑)
・イタリア旅行では日本人はカモ。
これは例外だけど、寿司の「時価」を持ち出す人もいる。
・マグロ握り一貫5000円はボッタクリにならなくて
さすが高級となるんだよな
・時価のウニを頼んだら一折乗っかってきてウニだけで8000円したw
この時価について、ぼったくりとは言わなかったけど、「値段が書いてないのは問題があると思う」と文句を言う外国人がいた。(たしかアメリカ人)
だったら回転寿司に行け、で終わりだけど、時価を疑問視する人は日本にもいる。
お通しもそうだけど、ぼったくりではなくて文化の違いという場合もある。
でもせっかくだから、このベトナム人の経験を反面教師にさせてもらおう。
*日本人のケースはどんなふうにオーダーしたのか書いてない。
ヨーロッパに限らず、海外でぼったくり被害を避ける方法について考えてみようと思う。
結果からいうと、彼らは注文するときに値段をしっかり確認していなかった。これがマズかった。
ローマのこの店を訪れたベトナム人たち一行はウエイターからシーフードを勧められる。
値段は100グラムで6.5ユーロ(約760円)というから、「それぐらいならいいか」とその魚料理を注文。
で、ウェイターが持ってきたのは4.8キロの魚料理。(約3万7000円)
お皿だけで2キロもあって、それも料金にふくまれていた!
つまり、お皿の代金(使用料?)で約15200円を請求されたことになる。
これにチップとサービス料で合計476.4ユーロ。(約5万5700円)
被害にあった人たちはドイツ在住のベトナム人とその友人というから、全員ヨーロッパにいる人だろう。
そんな彼らが抗議してもダメで、支払いを強要された。
日本人も魚料理を食べたから、同じ手口でやられた可能性が高い。
このレストランはローマのサンタンジェロ城近くにある「 Antico Caffe di Marte」。請う注意。
さて先ほど、こんな日本人のコメントがあった。
「承知で注文したんだろ?払わなきゃダメだろ」
「値段見てからオーダーしろよ…(´・ω・`)」
ベトナム人のケースだと承知したのは100グラムで760円で、15200円の皿代はその範囲外。
それは代金を請求されるときになって、はじめて気づいたはずだ。
ヨーロッパに住んでいる人たちも支払ったのだから、食べ終わった後ではどうしようもできないのだろう。
イタリアだけではなくて、「値段見てからオーダーしろよ」がうまくできないようにぼったくり店は悪意の創意工夫をしているのだ。
CNNニュース(2019.10.02)を見ると、そういう被害にあった外国人は山のようにいる。
ローマのレストラン、観光客からぼったくりの苦情続出 2人で5万円の請求
問題があるのは客ではなくて店、またはそういう店を野放しにしているローマとしか思えない。
ということで結論を貝木泥舟ふうに言えば、今回の件から得るべき教訓は、あらかじめ合計金額をしっかり把握しておけ、ということだ。
自宅やカフェでネットを見ている状態ならそれが簡単そうに思えるけど、実際はそのときの当事者になってみないと分からない。
請求金額に納得がいかなくても払ってしまったことについて、日本にいるのなら何とでも言えるけど、「あのときその場」にいた人でないとその心理状態は分からない。
場面や状況に応じて考え方や態度が変わるのが普通の人間で、どんなときでも冷静沈着、いつも同じ思考状態を維持できる人なんて、日本海海戦での東郷平八郎ぐらいしか思い浮かばない。
だからそういう状況にならないように、事前にすべてを確認しておくしかない。
イタリアのレストランで食事をしていたら、「これは君たちへのプレゼントだ。ようこそイタリアへ」とオーナーが笑顔で果物をくれたけど、あとからその代金を請求されたという日本人もいる。
値段を見てからオーダーするができないし、食べたら終わりということもあるのだ。
海外では、最終的に支払う金額が事前の想定と違っていることがある。
知ってるとできるはまったくの別問題だ。
この記事はじめに出てきた横光 利一がイタリアに滞在していたとき、こんなことがあった。
ミラノのホテルにあった灰皿を気に入り、いままで見た中でこれが一番良いとほめたら、では持って行けとホテルの従業員が紙につつんで横光にわたす。
タダではもらえないから、横光が二リラの札を出したところ、
ところが十リラくれと向うからの催促だ。万事万事この調子は、イタリアに限らず、いかなるときにもつきまとう。
およそ隙間を見せたら最後、そこへは必ず常に何ものか喰い込んで来ているものだ。「 欧洲紀行 (横光 利一)」
こちらが頼んでいないことを向こうが勝手にやりはじめ、あとからお金を請求する手口は21世紀のいまでも海外ではよくある。
スキを見せないことが大事だけど、知っているからといってできるものでもない。
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