10年ぐらい前、アメリカ人かイギリス人から「日本では女の人が寿司を握ることができないと聞いたけど、それは本当か?」と聞かれた。
そんな話は初耳だけど、そういえば女性の寿司職人を見た記憶がない。ひょっとしたら、寿司は“女人禁制”の世界かもしれない、とそのときはそんな話をした。
なんでそんな質問をするのか聞いたら、最近見た海外メディアの記事に日本にある女性差別の例として、“閉鎖的な寿司の世界”が書いてあったからと言う。
結論からいえば、女性が寿司を握れないというのは間違いだけど、欧米でこういうイメージがあることは事実だ。
ことしの夏、ヨーロッパから日本へ旅行でやって来たリトアニア人女性も、「女性は寿司職人になることはできないと聞いた」と話していた。
それはどこ情報か聞いたら、アメリカやヨーロッパのメディアにそう書いてあったらしい。
「女性を低く見る日本社会」というのは欧米人の興味を引くテーマだと思う。
それは分かるけど、「サウジアラビアでは最近やっと女性の車の運転が認められた」という話と同じレベルで語られるのは納得いかない。
このとき一緒にいたベトナム人も、「自分もそんな記事をどこかで読んだから、日本で女性は寿司を握ってはいけないと思っていた」と言う。
アジア人からもそう言われたのは初めてて、わりと驚いた。
*このリトアニア人は茶道が好きと言う。
その理由のひとつは「女性が活躍しているから」。
欧米人にこれは大きなアピールポイントになっていそう。
2か月前にそんなことがあって、最近こんなツイートを見つけた。
「お前の寿司は本物じゃない」
「化粧の粉が寿司に落ちる」
「女性の手のひらの体温が高く、ネタが傷む」
客や同業者らの差別や偏見と戦いながら、「なでしこ寿司」は10年目に突入した。 pic.twitter.com/vaW2Nmr9Zf
— ハフポスト日本版 (@HuffPostJapan) November 1, 2019
「女性は男性より体温が高いから、寿司を握ると鮮度が落ちてしまう」といった話は俗信で、実際にはそんなことはない。
ここでいう“差別”や“偏見”を持っているのは男だけど、ネットの反応を見る限りでは、寿司に性差を求める人はほとんどいない。
・今ならオッさんが握るより美人が握る方がプレミアつくだろ
・おばあちゃんの朴葉寿司をもう一度食べたいがもう不可能なのだ
・漫画の影響じゃないか?
・男女とも素手は止めて欲しい
・女性のシェフって普通にいるが…寿司は別物か?
・そんなことないだろうよ
寿司業界にくわしい人の話を読むと、「女性差別」まではいかないけど、寿司業界には「ここは男の世界」という観念があって女性を遠ざける雰囲気があることはたしからしい。
そういう考え方が先にあって、それを正当化させるために“体温説”が生まれたようだ。
でもたしかに女性の寿司職人は少ない。
ただ、「業者らの差別や偏見と戦いながら」ということをアピールしているのを見ると、不必要な敵をつくって差別や偏見がよけい増えそうな気がしないでもない。
男性中心の寿司社会を逆手に取っているのか分からないけど、この店は対決姿勢を明らかにしているようだ。
「なでしこ寿司」という店名やホームページの「女性ならではの気配りや心遣い」「世界初の女性寿司職人専門店」という宣伝文句からは、ここが“女性”を全面的に押し出しているのが分かる。
なんか「ケンカ寿司」みたいで、普通の男性よりマッチョな感じ。
ノーベル平和賞を受賞した女性人権活動家マララ・ユスフザイさんもここでお寿司を食べている。
女性の寿司職人というよりは、フェミニスト寿司職人と呼んだほうがふさわしいのでは?
寿司は世界中で知られる日本のアイコンだから、それが「女性差別の象徴」と見られるのはマズい。
そういうネガティブなイメージを壊してくれるなら歓迎だ。
ちなみに日本料理界の伝説的人物・北大路魯山人はネタの良し悪しを第一に考えている。
いったい寿司のウマイマズイはなんとしても魚介原料の問題で、第一に素晴らしいまぐろが加わらなければ寿司を構成しない。その他、本場ものの穴子の煮方が旨いとか、赤貝なら検見川の中形赤貝を使うとかで、よしあしはわけもなくわかるが、とにかくまず材料がよくなくては上等寿司には仕上がらない。
「握り寿司の名人」
よかったら、こちらもどうですか?
宗教と女性差別③キリスト教(アクィナス)の女性観「女は失敗作」
寿司職人の世界が女人禁制なのか?と疑われるのであれば、欧米の有名レストランで、一流シェフがほとんど男であるのと同じことだと言ってやればいいと思うね。他国を非難する前に、自分達の国ではどうなっているのかよく考えろ。
これは完全に誤解ですね。
「プリンセス・マサコ -菊の玉座の囚われ人」と同じように、偏見や事実誤認で、日本では女性の地位が低いことをアピールする記事は欧米メディアであると思います。
慰安婦をいまだに「性奴隷」と書くメディアがありますし。