オーストリアで生まれたヒトラーをドイツ人はどう思う?

 

歴史に「if」はつきものだ。
ということで考えてみよう。

もし、日本が統治していた時代の朝鮮半島から、日本の総理大臣がでたとする。
その朝鮮人(韓国人)の総理大臣がアメリカとの戦争を決断し、その結果、敗戦して日本を破滅に追い込まれたとしたら、いまごろ日本人はその総理大臣についてどう考えているのか?

「当時、彼は日本国籍をもつ日本人だった」と自分たちのこととしてとらえる人もいれば、「やつは韓国人だ。あいつのせいで日本は戦争に巻き込まれてメチャクチャになったんだ」と被害者感情をもって恨む人もいると思う。

これはただの空想だから、話はここで終わり。

ただあの時代、日本は台湾人や韓国人にも選挙権と被選挙権を認めていたことは知っておいてほしい。
それによって、朴 春琴(パク チュングム)は衆議院選挙に当選して政治家になった。

内地居住の日本帝国国籍男子であれば朝鮮人・台湾人であっても選挙権・被選挙権をともに有していた。また、1930年1月の内務省法令審議会はハングルを使用した投票を有効とし

朴 春琴

 

上の人物は人類史上最悪の行為をおこなった悪魔、アドルフ・ヒトラー。

ヒトラー率いるナチス=ドイツはユダヤ人を”害虫”のように考え、その絶滅を計画・実行した。
それによって、600万人のユダヤ人が虐殺されたといわれる。

このホロコーストは学校でならったと思う。
これは1942年にきめられた「ユダヤ人問題の最終的解決」によるもので、ユダヤ人への差別や虐待はその前から行われていた。

1939年ごろのドイツ国内のユダヤ人の様子。

ホロコースト

ユダヤ人はもはや市民でなく,公立学校に通えず,実際いかなる商売,職業にもつけず,土地を所有できず,非ユダヤ人と一切交際できず,公園や図書館,博物館への出入りも禁じられ,ゲットーに住むよう命令された。

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典の解説

 

*すこし脱線*
あの時代の日本をナチスと同一視する人がいるけど、それは歴史の事実として違う。
それは朴 春琴とユダヤ人との待遇の違いを見れば明らか。

 

ヒトラーが生まれたオーストリアできのう、その生家が警察署になることがきめられた。

AFPの記事(2019年11月20日)でオーストリア内相がこう話す。

「警察が今後この家を利用することで、この建物がナチズムをたたえる場所には決してならないという明確なメッセージを伝えることができるはずだ」

ヒトラーの生家を警察署に オーストリア政府が発表

 

オーストリア政府としては、ここがネオナチの聖地になることだけは絶対に防ぎたかったらしい。
それはソレでいいとして、ところで、ヒトラーがオーストリア出身だったことをご存じだっただろうか?
ヒトラー1889年にオーストリアのブラウナウで生まれて、そのあと家族と一緒にドイツへ移った。

ボクがこのことを知ったのは20年ほどまえ、ベトナム旅行でハロン湾クルーズの観光船に乗っていたとき。
船の上で2人の白人男性が口げんかを始めた。
1人は昼食を食べたときに知り合ったドイツ人で、あとからその人に聞いた話では、自分がドイツ人と分かるとアメリカ人がホロコーストのことで彼を責めだす。
そのアメリカ人がユダヤ系で、身内にホロコーストの犠牲者がいたらしい。
そうは言われても、それは戦前の話で、生まれる前のことで自分が責められる筋合いはない。
それで口論になったらしい。

一戦を終えたドイツ人が「ヒトラーはオーストリア人なんだ。あいつのせいで、ドイツはいまでも世界中で非難されている」と言うのを聞いて、はじめてそのことを知る。

記事の始めに「歴史のif」のたとえ話をしたのはそういうことっす。

ことし8月、日本に留学していたドイツ人に上のことをたずねてみた。

いまドイツ人はヒトラーをドイツ人と考えているのか?
それともオーストリア人と思っているのか?

彼の認識ではヒトラーはドイツ人で、ほとんどの人がそう思っているだろうと話す。
一方で、先ほどのドイツ人のように考える人もいる。
でも、ヒトラーの罪を全部ドイツに押し付けて、自分は被害者の側に立とうとするオーストリアを苦々しく思う人はわりと多いらしい。

まあ、どっちの気持ちよくもわかる。
太平洋戦争中、日本軍には韓国人兵士もいたのに、「日本はアジアでの蛮行を謝罪せよ」と韓国に言われると複雑な思いがする日本人もいるだろう。

 

おまけ

ベトナムの首都ハノイの夜

 

 

こちらもどうぞ。

ヨーロッパ 目次

日本にある「ナチス式敬礼」:運動会や高校野球の選手宣誓

ナチス政権下のユダヤ人①  ~水晶の夜~

日本人が犯した「ナチスの失敗」。しまむら・欅坂46・Jリーグ

旅行・歴史雑学:ヨーロッパ主要国が誕生した時代ときっかけ。

 

コメントを残す

ABOUTこの記事をかいた人

今まで、東南アジア・中東・西アフリカなど約30の国と地域に旅をしてきました。それと歴史を教えていた経験をいかして、読者のみなさんに役立つ情報をお届けしたいと思っています。 また外国人の友人が多いので、彼らの視点から見た日本も紹介します。