久しぶりに大学時代の友人と岐阜で同窓会をすることになって、JR岐阜駅について北側にでると織田信長が出迎えてくれた。
岐阜に住む友人に、「全身黄金っていうのが岐阜人のセンス?そもそも織田信長は尾張で生まれた愛知人じゃね?」と言ってみた。
前半部分には彼も賛成で、なんでこんな仕上がりになったのかさっぱり分からない。
でも、後半部分については「浜松の人間だけには言われたくない」と言う。
「浜松だって、岡崎で生まれた徳川家康を市の公式キャラクターにしてるだろ。目くそに鼻くそを笑う資格があるのか?」
この返しはクリティカルヒットで、「ぐぬぬ」としか言えない。
家康には浜松城で過ごしていた時代があるから市が公式キャラクターに採用したけど、そんなことを言ったら別のところも同じ主張をすることができる。
江戸幕府を開いた東京も晩年を過ごした静岡市も、墓地で400年以上眠っている日光市も家康をゆるキャラにしていい。
岡崎生まれで、浜松には「いた」だけだから、結局は言ったもの勝ちだ。
英雄は色と移動を好むからこういうことになる。
ちなみに「岐阜」という県名は信長がつけたといわれる。
関係性でいえばたぶん浜松と家康よりも深い。
『信長公記』(太田牛一)によると、織田信長が美濃国を攻略した際に、稲葉山の城下の井口を岐阜と改めたと書かれている。
生誕の地・岡崎のゆるキャラ「オカザえもん」を見ると、家康は岡崎市にゆずってもいいと思うんだ。
さて前回、上の「逆バージョン」を書いた。
オーストリアで生まれてドイツで育ったヒトラーはオーストリア人かドイツ人か?
この答えはひとつじゃないから、くわしくはこの記事をどうぞ。
ヨーロッパは陸続きで移動が簡単だからこういうことも起こる。
逆に家康や信長のような偉人を、複数の国が「そいつはうちの英雄だ!」と言い張ることもある。
たとえばこの神聖ローマ帝国初代皇帝のように。
この人は世界史の超重要人物で世界の常識でもあるから、しっかりおぼえておこう。
カール大帝(シャルルマーニュ) 742~814
フランク王国最盛期の王(在位768~814)。ランゴバルド王国を滅ぼし、ザクセン人やアヴァール人、イスラーム勢力を打倒して西ヨーロッパの主要部分を統一した。(中略)800年ローマ教皇レオ3世により戴冠され、西ヨーロッパ帝国復活の立役者となった。
「世界史用語集 (山川出版)」
日本では都を奈良から京都にうつしたころ(794年)、欧州では西ヨーロッパ帝国が復活していた。
「カール大帝(シャルルマーニュ)」となっているのはどっちも正解だから。
この人物をドイツ語で発音すると「カール」、フランス語だと「シャルルマーニュ」になるだけのことっす。
シャルルマーニュ(カール大帝)
神聖ローマ帝国、領土のうつり変わり
カール大帝の時代は現在のフランスも領土内にあった。
ヨーロッパ世界の大英雄・カール大帝はどこで生まれたかハッキリわかっていない。
それで、ヨーロッパ人が書いた欧州歴史教科書にはこんな一文がある。
カール大帝(シャルルマーニュ)はフランス人とドイツ人の両者が自国の英雄としたがっている
「ヨーロッパの歴史 (東京書籍)」
だからドイツ人と話すときは「カール」、フランス人と話すときは「シャルルマーニュ」と発音しないといけないのだ。
というのは面倒くさいから、「チャールズ」と英語で言えばOK。
ドイツ(神聖ローマ帝国およびオーストリアを含めて)、フランス両国の始祖的英雄と見なされていることから、ドイツ風とフランス風の呼び方を共に避けて英語読みのチャールズ大帝という表記が用いられることもある。
このことをドイツ人にきいたことがある。
彼いわく、大昔の話だからふつうは誰も気にしない。「シャルルマーニュ」と聞いて怒るドイツ人がいたら、そいつはバカだから相手にしなくていい。
いわゆる「カールの戴冠」
称号は、「至尊なる尊厳者、神により戴冠されし、偉大にして平和的な、ローマ帝国を統治する皇帝」
神聖ローマ帝国皇帝の王冠と国旗「双頭の鷲」
ハートのキングのモデルはチャールズ(カール大帝/シャルルマーニュ)といわれる。
こちらの記事もいかがですか?
「共通点は?」とタイトルされているのに、共通点についてほとんど書かれてなかったのは残念。次に期待します。
なお、自分は名古屋中村生まれ(秀吉と同じ)で、岐阜にも岡崎にも住んだことのある、現在は愛知県人です。