知り合いのトルコ人に言わせると、上のような日本の天狗にあたる存在はトルコ(やアラブ世界)では「ジン」になる。
ジンとは精霊や妖怪、魔人などの総称で、不思議で恐ろしい力をもっているのだ。
「アラジンと魔法のランプ」にでてくる魔人がこのジン。
人に幸せをもたらすこともあれば、破滅させることあるという。
くわしいことはこの記事をどうぞ。
ジン
天狗やジンのような人知を超えた精霊や妖怪のことを、韓国では「トッケビ」と言う。
トッケビの概念はとてもあいまいだけど、以下のような存在の総称と考えておこう。
「おばけ、神霊、鬼火、付喪神、疫神、漁業神、豊嬢神、妖狐、鬼神、夜叉、鬼、河童、ゴブリン」
朝鮮語読本(1923年版)に描かれたトッケビ
19世紀末の朝鮮半島を旅行したイギリス人のイザベラ・バードが当時の人々の信仰についてこう記した。
朝鮮人は自分を苦しめる災難をすべて鬼神のたたりに結びつける。取り引きの失敗、官僚の悪行、慢性・急性の病、貧困、地位や権力の失墜といったものは鬼神の悪意から生じるのである。
朝鮮人の家屋はここもあそこもいたるところが鬼神の支配下にある。鬼神は人生の節目節目にたたるので、朝鮮人が平穏でいられるかどうかは、鬼神をなだめることができるかどうかにかかってくる。
「朝鮮紀行 イザベラ・バード(講談社学術文庫)」
これは朝鮮半島に仏教が伝わる前からある鬼神信仰で、トッケビを指していると思う。
ジンもイスラーム教が広まる前からアラビア世界にあった信仰のなごりだ。
ただ現代の韓国ではトッケビはいたずら好きで、怖れられているというより人々に親しまれているから、これとは違う存在かもしれない。
それかもともとは同じだけど、時代が変わってトッケビへの見方が変質したのかも。
千年前に殺された武将がトッケビ(幽霊)となって、幽霊が見える女子高生と出会うというドラマ(トッケビ〜君がくれた愛しい日々〜)が2016年に放送された。
なんか設定が「ヒカルの碁」に似ているような。
そしてこれが本当に韓国らしい現象で、日本との影響が指摘されると社会問題になる。
2007年には、小学国語教科書のトッケビの挿絵が日本の鬼の影響を強く受けた姿であると問題になり、教育人的資源部により修正された。
2016年にも小学英語教科書の挿絵のトッケビに「日帝残滓!」という指摘がでてきて、出版社側が否定する騒ぎがあった。
いまではトッケビよりも、「日帝残滓」と言われるほうがオソロシイ。
1926年に描かれた鬼の集団
韓国政府は1968年に、北朝鮮に対する特殊部隊「トッケビ(鬼)部隊」を創設した。
トッケビ部隊に与えられた任務は、下の韓国紙によると「金日成の首を取り、主席宮を爆破しろ」というもの。
神出鬼没の忍者集団か?
でもその仕事が回ってくることもなく、その後部隊は解散させられて、いまでも正式な韓国軍の部隊として認められていない。
それで元トッケビ隊員が朝鮮日報の記事(2019/11/29)でこう嘆く。
チャン・ビヒョンさんが語った。「息子が小さいころ、私に『お父さんは罪人なの?』と尋ねた言葉がまだ胸に刺さっています。祖国に献身した私たちの失われた時間を認めてもらいたいのです
命を懸けて9回も北派作戦を行ったトッケビ部隊…「私たちの失われた時間を認めてほしい」
この人のケースは分からないけど、無念を残したまま息を引き取ると、この世を去ることできずにトッケビになってしまう。
ムン政権はこの部隊の存在を早く認めたほうがいい。
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