まったく知らなったけど、ベルギー北部の都市アールストには、ユネスコから無形文化遺産に登録されたカーニバルがあった。
「あった」と過去形なのは、つい最近それが取り消されたから。
ことし行われたカーニバルでこんな山車(だし)が登場して、これが人種差別と認定されたから。
さて、どんな人への差別行為かわかりますか?
問題となった山車(ツイッター画像のキャプチャー)
黒い帽子と長いもみ上げから、欧米人ならすぐに下のようなユダヤ人(ユダヤ教徒)が頭に浮かぶはず。
肩にはネズミがいるし、ニヤリと笑う表情からも悪意が感じられる。
あの山車を見たユダヤ人やヨーロッパ人から批判が噴出して国際問題となり、とうとう国連教育科学文化機関(ユネスコ)政府間委員会によってユダヤ人への差別にあたると認定され、数百年つづいてきたこのカーニバルは無形文化遺産の登録を抹消された。
これは前代未聞で過去に例がない。
こうしたユダヤ人に対する憎悪や敵意、差別思想などを「反ユダヤ主義」という。
キリスト教の価値観がそのまま社会の価値観やルールになっていたヨーロッパでは、ユダヤ教徒への蔑視や差別が1000年以上前からあった。
たとえばこれは17世紀のドイツの様子
明確な目的になしに街路を通行することの禁止、キリスト教祭日や君主の滞在期間中の外出禁止、市場ではキリスト教徒が買い物を済ませた後でなければ買い物はできなかったなど、制限されていた。
やっていることは違っていても、ユダヤ人への差別的待遇はヨーロッパの各地で行われていた。
それが人類史上最悪のかたちであらわれたのが、ナチス=ドイツによるユダヤ人虐殺(ホロココースト)。
これに深く関わったアイヒマンはその“目的”をこう語る。
ユダヤ人は、ドイツ国民の永遠の敵であり、殲滅(せんめつ)し尽くさねばならない。
われわれに手のとどくかぎりのユダヤ人はすべて、現在のこの戦争中に、一人の例外もなしに抹殺されねばならない。
今、われわれが、ユダヤ民族の生物学的基礎を破壊するのに成功しなければ、いつかユダヤ人がわがドイツ国民を抹殺するであろう「アウシュヴィッツ収容所 (講談社学術文庫)」
この憎悪や殺意の背後には、ヨーロッパでの長い長い反ユダヤ主義の悪しき伝統がある。
これはけっしてナチスだけのものではない。
ナチスはこんな強制収容所を建てて、「ドイツ国民の永遠の敵」を殲滅していた。
毒ガスで殺害されたユダヤ人
画像は「NHK 映像の世紀 第5集」のキャプチャー
ホロコーストの中心人物だったアイヒマンは戦後、ユダヤ人に捕らえられて自業自得の最期をとげる。
1時間ほど絞首台にぶら下がったままだったという。イスラエルでは戦犯以外の死刑制度は存在しないため、建国以来同国で執行された唯一の死刑である。遺体は焼却され、遺灰は地中海に撒かれた。
アイヒマン
これを黙認することは反ユダヤ主義を認めて広げることにつながってしまう。
差別禁止は伝統や芸術の上にある。
この山車が全体の中のひとつでもあっても一発レッド、無形文化遺産の抹消は当たり前。
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