「spider」という英語はクモのことで、たいていの人には怖くて気持ちの悪い生き物だけど、オーストラリアではこんなアイスクリームフロートをスパイダーと言うのだ。
クモの巣のように見えることから「スパイダー」になったということだけど、初めてこれを聞いたときは驚いた。
ちなみに知人のアメリカ人もビックリしたと言っていたから、これを「クモ」と表現するのはオーストラリア人やニュージーランド人の独特のセンスだろう。
この逆で(かなり強引)、日本人には当たり前の言葉でも、外国人が聞くとその実態が想像できないような変な日本語もある。
これからそのひとつを紹介しよう。
この前、トルコ人とアメリカ人と一緒に桜を見に行ったとき、トルコ人がコーヒーを入れた魔法ビンを持ってきた。
台湾人や香港人など中国文化圏の人たちは外出するとき、よくお茶やお湯を入れた魔法ビンを持ってくる。理由を聞くと「むかしからの習慣」と言う人もいれば、「中国医学の考え方で冷たい飲み物は体に悪いから」と本格的な理由をあげる人もいる。
トルコ人の場合は最近、友だちから桜のデザインがあるこのサーモスをもらったから、大好きなコーヒーを入れて持ってきただけと言う。
「サーモス?ベヒーモスなら知っているけど、サーモスってなんだ?」と思って聞いたら、魔法ビンのことを英語で「thermos」と言うことを知る。
トルコ人がアメリカ人に確認にすると、サーモスでOKという。
すると今度は日本語を勉強しているトルコ人から、サーモスを日本語で何というか聞かれて「魔法ビン」と答えると、「転生したらスライムだった件」とか「まどかマギカ」が大好きなトルコ人が「魔法」の部分に食いついた。ブラックバスなみに。
「マホウってmagicのこと?え、なんでマジックなの?」
なんでって、いつか知らないけど、熱い飲み物が冷めない瓶を「魔法」と日本人が表現したからじゃないか?
とにかく日本語では魔法瓶で、それをそのまま英語にするとマジック・ボトルになると言うと、トルコ人もアメリカ人も「面白いですね!」となんか喜んでいた。
なんとなく「ディズニー感」があって夢を感じさせるからか?
このあと「マホウ」の由来を調べたけど、ハッキリとは分からない。
日本で「魔法瓶」と呼ばれるようになった説はいくつかある。
明治時代に狩猟を行う人が新聞社の取材で、持ってた瓶を「魔法瓶」と呼んでそれが記事に書かれて世間に広がったという説が有力だけど、アメリカの魔法瓶メーカーに由来するという説もある。
前者なら、「サーモス」という英単語を知っているインテリ猟師が明治にいたとは思えないから、どう言っていいか分からず、「魔法のような優れもの」といったニュアンスで表現したのだろう。
魔法瓶は外国から伝わったもので、明治の日本人には魔法のように見えたのかも。
とにかく日本では明治時代には「マホウビン」で定着していて、それをそのまま英語にすると「マジック・ボトル」になる。
でも外国人がこの言葉からサーモスを想像するのは不可能で、「え?なんで?」となってしまう。
でも、アイスクリームフロートを「スパイダー」と呼ぶ感覚よりは分かりやすいと思う。
ちなみに1909年に初めて輸入されると、日本人はすぐに国産品を作るようになった。
1911年、大阪の日本電球が国産品第1号を開発し、同社が商標登録した魔法瓶という名称が、一般に用いられる。日本初の魔法瓶が生産されるようになったのは1912年である。
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>オーストラリアではこんなアイスクリームフロートをスパイダーと言うのだ。
ああ、これ、ウルフ・スパイダー(日本名:コモリグモ)の巣(みたいな糸の塊?)によく似てますよ。子供の手のひらほどの大きさのある、毒蜘蛛の一種ですね。大雨が降ると大繁殖して、辺り一面真っ白になるほど密に糸を吐くらしいです(実物は見たことないけど)。
ネットで、「オーストラリア、ウルフ・スパイダー」とでも検索して見てください。画像を見ると納得できますから。
ウルフ・スパイダーというクモは初耳でした。
なるほど。
現地の人間にはあのクモの巣のように見えるのですか。言葉も生き物でその地に合った表現ができますね。