【コロナが変える憲法観】ワガママ日本人の続出で怒りも噴出

 

5月3日、憲法記念日企画の第二弾。

いま日本では護憲派よりも憲法改正を支持する人が増えていて、関西学院大学の井上武史教授がその理由を「新型コロナウイルスの問題に対し、今の憲法が、十分に対応できてないという疑問を持った人が増えたことが影響したのではないか」と分析した。

まあくわしいことは前回の記事を読んでくれたまえ。

いま日本国民の考えは?憲法を改正するか、維持するべきか

 

しかしまあ、これは十分あると思いますわ。
新型コロナが引き起こす問題に、今の憲法が対応できてない。さらにいうと、コロナが生み出すワガママ野郎に今の憲法では対応できない。

政府の対応には限界があるから、はっきり言えば甘いから、憲法を変えてでも今回のような緊急事態に備えるべきと考える人が増えているのだ。

読売新聞は社説(2020/05/03)で、「一度も改正されていない憲法は、急速に変化する日本や国際社会に対応しきれていない」と改正の必要性に触れてこう書く。

読売新聞社の世論調査では、憲法で特に関心があるテーマとして、緊急事態を挙げた人は約4割にのぼり、前年より増えた。新型コロナウイルス感染の拡大が影響したとみられる。与野党は、真摯に議論しなければならない。

非常時対応の論議を深めよう

 

個人的にも今回のコロナ騒動で、日本人の“民度”には限界があるということを思い知らされました。
海外のようにロックダウン(都市封鎖)をしなくても、政府が緊急事態宣言を出せば、国民が一致団結してコロナの感染拡大を抑えられると、本気で思ったときがわたしにもありました。

「違うのだよ、欧米人とは」と高をくくっていたけど、実際には外出自粛要請を一蹴してサーフィンをする人はいるし、「3密」を無視してパチンコ店の前で長い行列をつくる人たちがいる。
感染が広がっていることから、政府は緊急事態宣言はさらに延長される見通しだ。
想定外ではなくて、敗北と言ったほうがいい結果。

 

いまの政府の権限では国民に外出自粛を要請するのが限界で、欧米諸国のように外出禁止令を発動して違反した人を罰することはできない。
残念ながら、「お願い」だけじゃ通じない日本人がたくさんいる。
クルーズ船の乗客には、国の検査を断固拒否して公共交通機関を使って自宅へ帰った人がいたし、岐阜ではコロナの感染が確認されて、市から入院要請を受けたにもかかわらず断固拒否する人間が複数いる。

言葉や誠意が通じない人間に対してもひたすら頼むしかないというのが現状で、今回のコロナ騒動では、ボクの予想をはるかに超える規模のジコチューがいて驚いた。

 

知り合いの香港人は日本から戻ったあと2週間の自宅待機と、違反したら即わかるようにGPS機能のついたブレスレットを付けるよう命じられた。
いまの日本政府の権限からしたら、こんなことはアニメの世界。

 

政府や自治体がゴールデンウイーク中の自粛を強く求めたことに対して、神戸女学院大名誉教授の内田樹氏が違和感を感じてツイッターでこうつぶやいた。

「GWを迎えて「外出自粛」が言われていますけれど、どうしても遠出しなければならない事情の人だっているはずです。「自粛」は自己決定することです。他人に向かって「自粛しろ」と命じる権利も罰する権利も誰にもありません。」

こんな言葉を聞いたら、毎日新聞の記事(2020年4月30日)にでてくるパチンコ店や客が歓喜するに違いない。

「コロナよりパチンコできないストレス強い」 大阪府外へ「転戦」する客も

大阪府の休業要請に応じないパチンコ店があって、客は「コロナは怖いが、パチンコをできないストレスの方が強い」と、“どうしても行かなければならない事情”を話す。
また自分が負けると、「店が閉まっていたら良かったのに」と後悔するという救いようのない身勝手ぶりを披露。
また別の客は「スーパーだって3密(密閉、密集、密接)なのに、パチンコだけ批判するのは差別だ」と怒り出す。

いまさっき見たニュースでは山梨の女性が、自分は陽性であることを知りながら高速バスに乗って東京へ行き、保健所ではウソの申告をしたと報道していた。
これも本人に言わせれば、「どうしても遠出しなければならない事情」だったはず。
でも海外なら逮捕案件だ。

 

いま日本には、政府や自治体の指示を「聞く派」と「無視する派」がいる。
不満があっても外出自粛を守っている大多数の人からしてみたら、こういうワガママな連中には、殺意とまではいかなくても少なくとも怒りがわくはずだ。
そうなると、緊急時には個人の権利や自由を制限して、政府にもっと強い力を与えてもいいと思う人が増えてくる。
それが憲法改正を問うアンケートで、改正派の増加という結果にもつながった。

「コロナ危機への対応がうまくいかないのは、安倍首相が無能だからであって、憲法のせいではない」というツイートをリツイートする内田氏は護憲派とみて間違いないだろう。
でもいまこの状況で、「他人に向かって「自粛しろ」と命じる権利も罰する権利も誰にもありません」という現実離れした理想論は、憲法改正への動きを加速させる。
改正派にとっては最高のナイス・アシストだ。

 

 

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7 件のコメント

  • ほんとそう。パチンコを全否定するつもりはないけど、こーゆう時にまでパチンコに行くようなやつは…ねぇ。人としてどうかと思う。
    先日の誰かのコメントで、フードコートか何かに老人が集ってマスクもせずに話し込んでるのを見て怒りを感じたってゆうのに対して、怒りを感じるのは意味がわからない、そんな人らが勝手に感染するのは放っとけばいいし距離を保てばいいってありましたが、いや、やっぱり憤りは感じますよ。実際に感染して死の覚悟をした方が復帰後に書いた記事に、平気で外をうろついてる人間を見ると怒りを感じるとありました。実体験した人ほどそう思うんではないでしょうか。

  • >外出自粛要請を一蹴してサーフィンをする人はいるし、「3密」を無視してパチンコ店の前で長い行列をつくる人たちがいる。
    そりゃ当たり前ですよ。いくら日本人だって、個人個人の思想、行政信頼度、服従性向が完全に一致しているわけじゃない。サーフィンを禁止する必要があると考えるならば、その海岸に管理責任のある自治体が「遊泳禁止」とすればいい。パチンコ店への入店を許さないなら、営業許可を出している自治体が「営業禁止」にすればいい。それだけの話です。国が、全国一律に「やめろ」と命令するのはおかしいでしょう。ナチスや共産党じゃあるまいし。

    >でも海外なら逮捕案件だ。
    それは、海外(少なくとも欧米諸国)ではそのように法律ができているからですよ。特に、直接民主制のもと、行政の長として、時には国家元首や軍最高司令官として、国民に直接選ばれる大統領制の国では、大統領が強大な権力を持っている。そのような存在こそが大統領なのだから、当たり前。大統領とは一種の独裁制なのです。
    間接民主制で議会の中から首相を選ぶ我が国とは、システムが違います。

    >でもいまこの状況で、「他人に向かって「自粛しろ」と命じる権利も罰する権利も誰にもありません」という現実離れした理想論・・・
    ???
    理想論じゃないでしょ。むしろ「現在の法律に従った」現実論ですよ。
    非常時だからと言って、法律を適当に無視してよいということにはならない。平時の法律をそのまま適用するのは不適切であると判断されるような状況が続いているから、まずは非常時の法律を定めて、それに基づいて非常時だけの行政権利と刑罰権利を行政へ与えようという話です。それが法治国家としての考え方。

    >・・・は、憲法改正への動きを加速させる。(改行)改正派にとっては最高のナイス・アシストだ。
    どうかな? そんな方向への加速につながるとは、私には思えないのですが。特に、ブログ主さんのように誤解している人が多いとすればね。
    ちなみに私は憲法改正論者です、第9条も含めて。

  • 営業自粛しているパチンコ店の経営者が「一部の店のせいで業界全体のイメージが下がる」と怒っていました。
    自分のことしか考えていないのは本当に迷惑ですよ。
    この時期にフードコートでたむろする人もそう。要請を守っているのがバカバカしくなる。

  • >自分のことしか考えていないのは本当に迷惑ですよ。
    自分のことだけを「考える」ことが「迷惑」ですか? その言葉の意味をよく考えたほうがいい。
    自分のことしか考えずに、何らか他人へ被害を及ぼすような具体的な行動を取れば、それは「迷惑」だろうけれども。思想は個人の自由でしょ。
    まあでも「揚げ足取り」のように聞こえるかな。
    そのような、(今までの多くの日本人には通じるであろう)肝心な点を省略した表現は、外国人にはもちろん通じないし、今後は日本人同士でも通じにくくなってくると思いますよ。

    >要請を守っているのがバカバカしくなる。
    他人の振る舞いを目にしただけで本当にそう思うのであれば、自分もやめればいい。それを罰する人はいませんよ。
    (のように、ブログ主さんのこの表現を、外国人および外国人的な日本人は字面通りに受け止めるのです。)
    法律、社会的要請、エチケット、慣習、ルール、これらは何のために存在するのか? なぜ従うのか? 日本人はもう一度よく考えてみるべきだと思いますね。
    ルールに対して「バカバカしい」と思うのは、意味のない(≒効果のない)ルールであると考えるからでしょ?

    ***

    大半の日本人が勘違いしていることは、「世の中は自分と同じ考えをしている人が多いはずだ」「自分の日本語表現は、当然、世の中の他の人にも理解できるはずだ」ってことです。そんな時代はもう終わりました。今は、日本で暮らす外国人も、そのような外国人に近い考えの日本人も次第に増えつつあるのです。
    外国人だったら日本人と違う考え方・話し方をしているのも当然だが、日本人では、それはあってはならないことなのですか?
    多文化共生社会を考えるって、そういうことだと思う。

  • 人にはいろいろな価値観や考え方はありますが、いまは一致団結してコロナの感染拡大を防ぐべきだと思います。
    自粛要請を無視して、好き勝手する人間を正当化する気はありません。

  • 「自粛要請を無視して、好き勝手する人間」と「自粛要請が出ているけれども、好き勝手したいと考えること」では大きな違いがあるということです。人間、誰しも「考えたとおりに即、行動する」わけじゃない。

    適切に説明しないと理解できないのが当然の外国人に向かって、ちゃんと説明をせずに、日本の「常識」とやらを無理やり押し付けるような人間を正当化する気にはなりませんね。
    多文化共生を考えるって、そういうことでしょ?

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    今まで、東南アジア・中東・西アフリカなど約30の国と地域に旅をしてきました。それと歴史を教えていた経験をいかして、読者のみなさんに役立つ情報をお届けしたいと思っています。 また外国人の友人が多いので、彼らの視点から見た日本も紹介します。