【消えゆく昭和】学校から二宮金次郎の像が撤去される理由

 

先週の土曜日、日本の小中学校で英語を教えていたアメリカ人と一緒に、静岡の観光地・寸又峡へ行ってきた。

上の写真はそこにある「夢のつり橋」で経験上、ここに連れてきてよろこばなかった外国人はまずいない。
*コロナのせいで地元は大ダメージを受けたので、もう少し落ち着いたら県外の人もぜひここに行ってほしい。静岡県民からのお願い。

ただ「まずいない」と書いたのは、目の前でこれを見て「こんなに怖いだなんて、聞いてなかった!」と別のアメリカ人から文句を言われたことがあるから。
はっ、チキンめ。

でも今回のアメリカ人はそんなビビりではなくて、「これは面白い!」とつり橋を進んでいき、真ん中のあたりでこちらに振り向いて、「見ろよ。フロリダのワニみたいだ」とここを指さす。

 

ワニというよりヘビのような

 

寸又峡を満喫したあと駐車場に戻る途中、小学校でこんな像を発見。

 

 

まきを背負いながら本を読む二宮金次郎の姿はかつては日本人の模範とされ、全国の学校でこの像が建てられていた。

明治・大正の日本でこの人物が尊敬され、愛された敬意ついてくわしいことはここをクリック。

明治37年(1904年)以降、国定教科書に修身の象徴として尊徳が取り上げられるようになった。小学唱歌にも『二宮金次郎』という曲がある。

二宮尊徳#崇敬・記念

 

これを見たアメリカ人が、この像は前に勤務していた小学校で見たことがあると言う。

「横を通るたびに「これは誰だろう?」と思ったんだ。でも校門を出ると、「今夜はどこに遊びに行こうか?」と考えていたから、結局誰にも聞いたことがなかった」

いやいや、そこはちゃんと日本人の神髄に触れろよ。

 

この銅像が昭和世代のボクにノスタルジックなのは、いまや全国の学校からこれが撤去されているから。
浜松にある母校でも撤去されたと聞いたけど、こんな山奥の小学校ではまだまだ健在で何より。
毎日新聞の記事「二宮金次郎像:勤勉精神いまは昔、各地で撤去相次ぐ」(2012年1月25日)によると、この像が老朽化して修理が必要になっても、保護者や教師からこんな反対意見が出るようになって、それができずに取り外されることが多い。

「努力を尊ぶ姿勢は受け継ぎたいが、子どもが働く姿を勧めることはできない」
「児童の教育方針にそぐわない」
「戦時教育の名残」
「歩いて本を読むのは危険」

 

でも、子供が働くといってもいまは明治とは状況がぜんぜん違っていて、児童労働なんて法律で禁止されているから、やろうと思っても不可能だ。
これは現代でいえば勉強と部活を両立させるとか、勉強と家の手伝いの両方に励むといった意味で、「児童の教育方針にそぐわない」というのは当てはまらないし、「子どもが働く姿を勧めることはできない」なんて見当違いもいいところ。
歩いて本を読んでいたら人とぶつかって、「あ、ごめんなさい」という展開はアニメの第一話でありそう。

と個人的には思うのだけど、いまの日本でそんな意見は少数らしい。
中には「スマホ歩きを助長させる」という声が尊重されて、2016年には立像ではなくて座像の二宮金次郎像が栃木の小学校に登場したというからビックリだ。

 

戦前は国家に政治利用された面はあるけど、二宮金次郎の生き方や考え方を全否定するのはやり過ぎ。
それに撤去したとして、これに代わる理想的な日本人には一体誰がいるのか。
明治から昭和の日本人が大切にした価値観をこのまま消去しないで、後世に伝えたほうがいいと思うだけど、いかがだろうか。
こう考えると、じつはあの座像は新旧を融合したバランス感覚に優れた逸品かも。

さて梅雨入りしたということで、「降る雨や昭和は遠くなりにけり」なんて中村草田男みたいなことを言ってみる。

 

おまけ

ロサンゼルスのリトルトーキョーにはいまでも二宮金次郎の像がある。
アメリカに戦時教育の名残があるという皮肉。

 

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1 個のコメント

  • >保護者や教師からこんな反対意見が出るようになって、・・・
    >「努力を尊ぶ姿勢は受け継ぎたいが、子どもが働く姿を勧めることはできない」
    >「児童の教育方針にそぐわない」
    >「戦時教育の名残」
    >「歩いて本を読むのは危険」

    あはははは~。
    どれもこれも、保護者や教師たち自身が、二宮金次郎ほどには自分は努力をしていないものだから、子供の手前バツが悪くて。そのため銅像を撤去させるようもっともらしい屁理屈をこねているようにしか、私には見えませんけどね。

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    今まで、東南アジア・中東・西アフリカなど約30の国と地域に旅をしてきました。それと歴史を教えていた経験をいかして、読者のみなさんに役立つ情報をお届けしたいと思っています。 また外国人の友人が多いので、彼らの視点から見た日本も紹介します。