日本人のカン違い:中国語の「あなたは清楚ですね」で喜ぶな

 

もしあなたが20代の既婚女性で、夫の母親から「あなたは清楚ですね」と言われたらどう思うだろう?

「いえいえ、とんでもないです」と謙虚に否定したら、それはほめ言葉ではなくてまったく違う意味だった、というのが今回のはなしですよ。

 

さて前回の記事で、阿修羅から「阿」を抜いて修羅にする理由について書いた。

阿修羅と修羅・阿弥陀と弥陀、阿を取るのは“かわいくなる”から

この中である中国人の「修罗本意指什么我不清楚」というメッセージを紹介したのだけど、この文の意味が分かるだろうか?
まーボクも中国語は知らないけど、機械翻訳から考えると「修羅の本来の意味はわかりません」ということらしい。

「本意」や「指(す)」という漢字は日本語でも使うからいいとして、問題は「我不清楚」だ。
「わたしは清楚ではありません」とはどういう意味なのか?
この人は、自分は下品でイヤらしい人間と告白しているのか?

もちろんそんなワケはなくて、「清楚」について白水社の中国語辞典で見てみるとこんな説明が載っている。

(形状・輪郭・痕跡・映像・方向・目標・思想・考え・言葉・態度・状況があいまいでなく)はっきりしている,明瞭である

 

清楚を英語で言うと、「clearly」になる。
*日本語の清楚は「Neat and clean」。

だから中国語で「状況が清楚である」と言うと、「状況がハッキリしている」という意味になるのだ。
強調したいときは「清清楚楚」と言うらしい。
明白を「明明白白」と言うのと同じ発想でしょ。

さて、もうここまできたら「我不清楚」の意味が清楚になったはず。
この場合は動詞だから「はっきりと知る,わかる,理解する」だから、「わたしはわかりません」という文意になるのだ。

 

ということで、冒頭の話も見えてきたとおもう。

20代の女性というのは台湾人の夫と結婚した日本人で、あるときダンナのお母さんと中国語で話をしていたら、「あなたは清楚ですね」と言われた。
それは「あなたの性格はとてもハッキリしている」といった意味だったのだけど、彼女は日本語脳で考えて「あなたは上品でおしとやかですね」と理解し、「わたし、ホメられちゃった!」とカン違いする。

でも話をつづけると、何かおかしい。
どうやら、お互いの「清楚」の意味が違うらしいということに気づいて、日本人女性が辞書で見てみたら、中国語の「清楚」がどんな言葉かわかった。
お母さんは「日本人女性は静かでおしとやかな性格と聞いていたけど、あなたは違ってハキハキしている」という意味で、自分が考えたことのほぼ反対。
ようやく「我清楚」になったわけだ。

その日本人の理解では、中国語の「清楚」という言葉は川底が見えるような清流のイメージで、そこに誤解は生じない。ちょっとでもにごって見えなくなると、それは清楚ではない。
「声が小さくてよく聞き取れない」と言うときには「聽不清楚」と言うらしい。

 

中国語の「楚」はハッキリしている状態や美しい様子をあらわす良い意味の言葉で、「楚楚动人」という熟語は人の心を動かすような美しい風情を表現するときに使われる。
中国人女性で「楚さん」がいたらきっとそういう意味。
古代中国の楚という国名にも、そんな意味がこめられていたかもしれない。

 

 

中国 「目次」 ①

中国 「目次」 ②

中国 「目次」 ③

【徐福伝説】中国人が日本人になった?/末裔を自称する元首相

【鬼の王・鍾馗】中国と日本で魔除けの神になった理由

 

2 件のコメント

  • ??? もう、ブログ主さん自身が混乱していませんか?

    >20代の女性というのは台湾人の夫と結婚した日本人で、あるときダンナのお母さんと中国語で話をしていたら、「あなたは清楚ですね」と言われた。
    >それは「あなたの声は小さくてわかりづらい。もっと大きな声で話なさい」という意味だったのだけど・・・

    → 「あなたは清楚ですね」、つまり、言うことがハッキリと話してよくわかるという意味ですよね?
    それをわざわざ自分で否定しておいて、しかも「ありがとうございます」などと言うから、謎空間に陥ってしまったのではないですか?
    あるいは、若い嫁のくせに、年長者に向けてそんなにハッキリ主張するとはけしからん!と注意されたのかもしれないですが。

  • ご指摘ありがとうございます。
    まったくおっしゃる通りで、わたしがカン違いをしていました。
    訂正しましたので、よかったらご覧ください。

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    今まで、東南アジア・中東・西アフリカなど約30の国と地域に旅をしてきました。それと歴史を教えていた経験をいかして、読者のみなさんに役立つ情報をお届けしたいと思っています。 また外国人の友人が多いので、彼らの視点から見た日本も紹介します。