【人種差別と意識】日本と海外で「不適切」となった言葉たち

 

言葉は「生き物」で、使う人間の意識が変わればそれまでの表現も別のものに変化する。

日本語でいえば、以前はフツーに使っていた「精神薄弱」はいまではNGワードで、「知的障害」という言葉に置き換えられた。
これはドイツ語の「薄い精神」、または英語の「弱い精神」を直訳したもので、前々からこれには「障害者の人格を否定する言葉だ」、「侮辱的・差別的な用語だ」という批判があった。
同じように「精神分裂病」も当事者の人権を考えると不適切な表現だから、いまでは「統合失調症」と呼ばれている。

これ以上のことは厚生労働省の「これまでの用語変更事例」を見てほしい。

 

さて、ここからの話は海外。

アメリカで2020年5月、黒人男性が白人の警察官から暴行を受けて(首を膝で押さえつけられて)死亡する件が起きたことをきっかけに、「Black Lives Matter」(黒人の命は大切)という人種差別撤廃運動が全米に広がった。

これによって人種差別について見直す動きが活発となって、いろいろ言葉が「廃止」されて別の言葉に置き換えられている。
例えばアメリカのツイッター社は、「マスター(主人)」「スレーブ(奴隷)」「ブラックリスト」といったプログラム用語を使用禁止にして、それぞれ「リーダー」、「フォロワー」にすると発表。
「ブラックリスト」がどう変わるのかは分からない。いま検討中ということか?

 

特定の人たちを差別、侮辱するような用語は擁護できぬ!

そんな動きは他の国にも広がっていて、デンマークのアイスクリーム会社ハンセンス・イスは「エスキモー」という商品名を変更すると発表した。
北米先住民のイヌイットを指すエスキモーという言葉には、「生肉を食べる人」という侮辱的な意味があるということで、1970年代から北極圏に住む14万人ほどの先住民族から批判の声が上がっていたという。

エスキモーという用語についてくわしいことはここをクリック。

語源は「かんじきを編む者」という意味であったが、後に「生肉を食らう野蛮人」という侮蔑の意を帯びるようになった。

イヌイット

 

それでハンセンス・イス社はこれまでの考え方を改めて、「エスキモー」を廃止することをきめた。

AFPの記事(2020年7月16日)

熟慮の末、よりふさわしい名称にすることを決めたという。同社は、「少数民族や先住民族に対する軽蔑的扱いや不平等」をめぐるより多くの情報と議論が今ではあるとしている。

デンマークのアイスクリーム会社、商品名「エスキモー」を変更 先住民に配慮

 

この記事には「Black Lives Matter運動」には触れていないけど、このタイミングでの決定は、この人種差別撤廃運動も関係しているはずだ。
もしこのアイスクリームをアメリカやカナダで販売していたら、いまの現地の価値観からすると「エスキモー」はマズい。

アメリカでは、アニメのキャラクターの人種と担当する声優の人種を一致させる動きもある。つまり、黒人やアジア人のアニメキャラを白人の声優が担当することはできないということ。
日本人のボクからすると「顔は見えないし声ぐらいなら、いいんじゃないの?」と思うのだけど、アメリカではその意識は時代遅れで「差別的」になりつつあるらしい。

黒人だけではなくて、人種差別に向けられる目はこれからさらに厳しくなることは確実で、エスキモーの「廃止」はそれを示唆する出来事だ。

 

これを考えると、森永には先見の明があった。

31年間使っていたアイスクリームブランド名の「エスキモー」を終わらせて、2010年に「森永乳業」に変更したのは、BLM運動が盛んとなったいまでは大正解。
*ピノ・MOW(モウ)・PARM(パルム)なんかは、エスキモーブランドで販売されていた。

 

でも、言葉の変更だけではただの言葉狩りで不十分。
「精神薄弱」が「知的障害」に、「精神分裂病」が「統合失調症」に変わって日本人の人権意識はどのくらい進歩したか?
「障害者」が「障がい者」になって、日本は当事者にとってどのぐらい住みやすい社会になったのか?

アイスクリーム会社はそこまで考えていないだろうけど、外国人との付き合いのある人なら、使う言葉には注意した方がいい。
たとえばスポニチアネックスのこの記事(2020年7月16日)だ。

藤井七段、勝負メシはソウルフード「みそ煮込みうどん」 渡辺棋聖は「ハンバーグ」

「ソウルフード」はアメリカの黒人の言葉。
だから知人の白人やヒスパニック系アメリカ人は、普通はこの言葉を使わないと言っていた。

 

 

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