「わが社は富山県の出身者は採用しない!」
ちょっと前に、富山市にある会社の会長がそんな発言をして問題になった。
その会長に言わせると、富山の人間は閉鎖的な考え方をする。
だから採用したくないという。
「まあ、好きにしたらいい」と静岡県民のボクは思ってしまうけど、富山県民はそうはいかない。
この会長の言葉に激怒した。
ビジネスジャーナルの記事(2017.07.25)から。
地元の企業経営者や行政は「富山県民を侮辱している」と怒り心頭である。富山県民全体を敵に回した発言は、百害あって一利なしだ。
「富山出身者は採用しない」発言で波紋、東京出身社長の「ご経歴」
「県民性」はたしかにあるとしても、この会長の言葉はマズイ。
主観にもとづき、「そこの出身者は採用しない!」とやってしまうと差別になりかねない。
でもある意味、これは日本らしいできごとだ。
アメリカ社会では、出身地ではなくて社員の人種が注目される。
「フェイスブックには黒人社員が3%しかいなかった!」ということが明るみになって、いま問題視されている。
フォーブス誌の記事(2017/08/08)から。
人種別の構成比率を見てみると全従業員のうち白人が49%、アジア系が40%、ヒスパニックが5%、黒人は3%となっている。また、マネージメント層の70%は白人で、72%が男性だ。また、マネージメント職の女性社員の68%が白人だった。
米フェイスブック、黒人社員はわずか3% 「人種の多様性」に懸念
アメリカは世界中からの移民が集まってできている。
移民だけではなくて、黒人が奴隷として連れて来られた歴史もある。
白人・黒人・アジア人など、アメリカにはいろいろな人種の人たちがいる。
理念(憲法)のうえでは、すべての人種の人間に「公平」や「平等」が約束されている。
そんなアメリカで従業員の割合が「白人は49%で黒人が3%」ということでは、批判されても仕方がない。
しかもその会社はフェイスブックだ。
世界でも先進的な会社だっただけに、人々の関心と非難が集中したのだ。
「白人が49%、アジア系が40%、ヒスパニックが5%、黒人は3%」
「マネージメント層の70%は白人」
これは外部の組織がフェイスブック社を調査した結果ではない。
フェイスブックが調べて公開したデータだ。
フェイスブックでは「職場のダイバーシティ(人種や性別の多様性)の向上」を目的に、こうした社員の人種割合を公表しているという。
でもこれを公開した結果、「フェイスブックは人種の多様性に関する意識が低い」という非難をあびてしまう。
フェイスブックでは上層部にいる人間(マネージメント層)の70%は白人だった。
アメリカではよく、人種が問題視されたり話題になったりする。
2015年にスターバックスが、ドリンクを買った客に「人種について話し合ってもらおう」というキャンペーンをおこなった。
バリスタがコーヒー・カップに「Race(人種) Together(共に)」と書きこみ、客と人種問題について語り合ってもらおうと考えたのだ。
スターバックスがこのキャンペーンを始めたところ、多くのアメリカ人の怒りを買ってしまう。
「スターバックスの経営陣には白人がたくさんいる。でも、低賃金で働いているバリスタの多くはマイノリティじゃないか!」といった、社員の人種構成を非難するコメントが殺到する。
「黒人社員が3%しかいない!」と、フェイスブックが浴びた批判と同じ考え方だ。
あまりにも多くの批判的なコメントが来たことから、スタバの上級副社長がまいってしまい、自分のツイッターアカウントを閉鎖してしまった。
アメリカ人の大反発を受けて、このキャンペーンはすぐに終了。
「人種問題について語り合おう」という目的は良いと思う。
でも、コーヒーショップで気軽に話す話題ではなかったらしい。
日本とアメリカのもっとも大きな違いは人種問題だろう。
日本では、大ざっぱにいえば、はるか昔から日本列島に住みついていた人間がそのまま今の日本人になっている。
アメリカのように世界中の移民が集まってできた国とは、根本的に社会構成が違う。
アメリカではフェイスブックやスターバックスのように、社員の人種比が問題視されることがよくある。
でも日本の会社で、社員の人種割合が問題になったなんて聞いたことがない。
ウィキペディアで見るとアメリカの人種比はこうなっている。
人種のるつぼと形容される米国であるが、2011年の時点で白人が78.1%を占める大多数であり、黒人が13.1%、その他が8.8%となっている。
この割合にもとづいて、フェイスブックやスターバックスでも、社員の人種構成比を「白人78%、黒人13%、その他9%」にしたらいいのか?
そんなわけがない。
*ちなみにシンガポールでは、アパートの入居者の割合を国の人種比で割り当てている。
最近もアメリカのバージニア州で、人種差別が原因となる事件が起きた。
白人至上主義とそれに反対する人たちとの間で衝突が起きて、多く死傷者が出ている。
この事件に対して「どっちもどっち」と言ったトランプ大統領の対応もまずかった。
この態度に対する抗議活動は全米に広がっている。
「NHK NEWS WEB」から。
アメリカ各地で抗議のデモが行われ、ニューヨークでは数百人が「白人至上主義はテロリズムだ」などと書かれたプラカードを掲げ、タイムズスクエアやトランプタワーの近くを行進しました。参加した黒人の男性は「大統領は白人至上主義を隠していて不適切だ」と話していました。
「米 白人至上主義事件 大統領の対応に抗議デモ」
スターバックスがカップに「Race Together」と書きこんで、「人種について語り合おう」とキャンペーンをしたのは、こうした事態が起こらないようにするためだったはず。
でも、そのキャンペーンはすぐ中止になってしまったのだから、アメリカでの人種問題は本当に深くて重い。
日本では「わが社は富山県の出身者は採用しない」と言っても、怒られるだけですむ。
アメリカで「わが社は黒人は採用しない」と言ったら、絶対にそれだけではすまされない。
エリス島にある建物。
エリス島はアメリカの移民局があったところ。
世界中から来た移民がここでチェックを受けていた。
ウィキペディアにはこう書いてある。
19世紀後半から60年あまりのあいだ、ヨーロッパからの移民は必ずこの島からアメリカへ入国した。移民たちによって『希望の島』(Island of Hope)または『嘆きの島』(Island of Tears)と呼ばれてきた。約1200万人から1700万人にのぼる移民がエリス島を通過し、アメリカ人の5人に2人が、エリス島を通ってきた移民を祖先にもつと言われている。
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