ネット民を怒らせる恐怖の現象「炎上」。
これを日本で最も警戒し、使う言葉には細心の注意を払っているのは視聴者の受信料で成立しているNHKだろう。
NHKには中立・公正の立場から「企業名や商品名を出さない」というルールがあって、山口百恵さんが紅白歌合戦で「プレイバックPart2」を歌ったときには、歌詞の「真っ赤なポルシェ」が「真っ赤な車」になっていた。
そんなNHKがしたツイートをめぐり、批判が起きて炎上騒ぎに発展している。
毎日新聞の記事(2020年8月21日)
ひろしまタイムラインに“差別扇動”批判 NHK原爆企画 「朝鮮人」ツイート巡り
「もし75年前にSNSがあったら」という設定で、実在した3人の被爆者の日記や手記にもとづいて、NHK広島放送局がツイッターで「1945ひろしまタイムライン」を展開している。
原子爆弾が投下された日の様子を、架空の広島市民がリアルタイムでツイートする。
そんな新しい試みが大反響を呼んで、いまは41万超のフォロワーがついているという。
これは1945年8月6日当時、中学1年生だった「シュン」がした原爆投下の日のツイート
この「ひろしまタイムライン」で、“これは差別を扇動しているのでは?”という批判が上がったのは、日本がアメリカに降伏したあとの8月20日、シュンが列車に乗っていたときにしたこのツイート。
これが韓国人・朝鮮人に対する差別を“あおっている”と批判が噴出。
では具体的に、このツイートに寄せられたコメントを見てみよう。
・これが激しい差別を煽動することになると考えもせず、注釈なしでツイートした担当者は、報道に携わる資格も適性もありません。
・新型コロナで社会不安が高まっているのに、もしもジェノサイドを誘発したら、責任とれますか?
・今も昔も在日Koreanの方は不当に扱われていることの方が多いのに、なぜこういう時だけこんな形で言及するのですか?
こんな擁護もあるけど、数は少ない。
・すごくいい企画なので、言葉狩りに負けないように、ご本人の当時の言葉そのままに続けてほしいです。だってそのための企画なのですから。
・当時の考えを今の考えに無理やり合わせて差別だ!って…
でもなぜか、ネット掲示板ではこうした支持派がすごく多い。
ただ批判コメントを見ると、このツイートの即刻削除を要求している人と注釈を加えるべきと条件付きで認める人がいる。
それでNHK側はこんな釈明をおこなった。
十分な説明なしに発信することで、現代の視聴者のみなさまがどのように受け止めるかについての配慮が不十分だったと考えています。
あのツイートは被爆者の体験に基づいた事実で、表現も当時の感覚をそのまま言葉にしたものだから、現代の価値観とは当然ちがう。
あの時代は「鬼畜米英」と言って、アメリカ人やイギリス人を人間以下の存在と見ることもあった。
ちなみに当時、「戦勝国民」と称する朝鮮人が列車の中で座っていた日本人をどけて、自分たちが座ってしまったシーンはマンガ「はだしのゲン」でも出てくる。
その場面はいまは削除されているけど、ネットで検索したらすぐにわかる。
個人的にも、この手の話は祖父から聞いた。
現代の価値観から消したり加えたりして、歴史を再構成するのも問題だ。
NHK側もこれからは、必要に応じて注釈をつけたり出典を明らかにするといった対応を取り、「配慮に欠けたり、誤解が生じたりすることがないように努めます」と約束しているから、もうそれで十分。
なんせ今はすぐに火がつく時代だ。
「となりのトトロ」を見て「児童虐待だ!」と怒る人もいるし、一切の批判がこないようにするには貝になるしかない。
現代の人間の全方位の価値観に合わせていたら、あの混乱した日本のリアルを知ることは不可能になる。
そのときの歴史をそのまま伝えなかったら、「もし75年前にSNSがあったら」の意味がない。
必要に応じて、時代背景などの説明を加えるのが最適解。
「はだしのゲン」もこうすればよかった。
寄せられた批判の中には、「これは人種差別・民族差別を呼ぶものです。通報しました。」というツイートがあったけど、「ひろしまタイムライン」のこのツイートはいまだにツイッター社から削除されていない。
つまり、「問題はない」と認められたということだ。
これを消したら、きっとまた炎上する。
こんなふうに横暴な日本人を非難するツイートもある。
今回のNHKの試みには「元ネタ」がある。
歴史の生き証人が年々減っていくのは第二次世界大戦中、ナチス=ドイツによる大虐殺(ホロコースト)を経験したユダヤ人も同じ。
このときドイツは国家として意図的・計画的にひとつの民族を絶滅させようとし、600万人ものユダヤ人が犠牲になったと言われる。
この負の歴史を現代に伝えるためにイスラエルに住むユダヤ人が、
「What If a Girl In The Holocaust Had instagram?」
(もしホロコーストの時代に、インスタグラムがあったら?)
という設定で、実在した13歳のユダヤ人少女「エヴァ」がリアルタイムでインスタグラムに投稿する企画をはじめた。
くわしいことはこの記事を。
この記事の中で、「インスタグラムでホロコースト前後の日々を伝えるという新しい発想は原爆投下にも使えるはず。日本でもこんな動画ができたらいいのに」と書いたボクとしては、「1945ひろしまタイムライン」には大賛成。
当時の価値観と表現をこれかもブレずに伝えてほしい。
エヴァは1944年にアウシュヴィッツ強制収容所で殺される。
この結果が分かっているだけに、インスタの中の笑顔を見るのがつらい。
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>この記事の中で、「インスタグラムでホロコースト前後の日々を伝えるという新しい発想は原爆投下にも使えるはず。日本でもこんな動画ができたらいいのに」と書いたボクとしては、「1945ひろしまタイムライン」には大賛成。
そうですか。
私は、インスタグラムによるエヴァ・ストーリーにも、ひろしまタイムラインにも反対ですね。当時はSNSなんてなかった。それだけが重大な事実なんです。架空の存在であるユダヤ人の少女も、原爆投下の場にいた広島の中学生も、もしもSNSがあったらそんな発言したでしょうかね? (まあ、おそらく手段はあっても「できなかった」でしょうけれども。)
元の日記なり記事なりを画像の形でそのまま公開することが、最善の方法だと思います。
SNSという手段を借りて必要以上に感情を煽る方法で世の中へ向かってアジることが、どうして正しい方法だと言えるのですか? 「歴史の証拠がないなら我々が証拠を作ればよい」といって嘘の歴史の映画を作った人と、やっていることはほとんど同じですよ。
エヴァ・ストーリーとひろしまタイムラインをどの程度読んだでしょうか?
>必要以上に感情を煽る
>世の中へ向かってアジる
これは具体的にどの箇所でしょう?
なお今後は、客観性や具体性に欠けるものはここに掲載できないこともありますので、ご承知おきください。