日本という島国を飛び越えて、いまや海外にいる外国人のあいだでもすっかり人気になった日本のアニメ。
アニメがワールドワイドになって各国で愛された結果、日本人にとっては不思議な方向や目的キャラが使用されることもある。
最近ではタイの若者が中心となって行われた反政府デモで、なぜか「ハム太郎」がそのシンボルになってしまった。
これに日本のメディアはもちろん、ロイター通信やインデペンデントなど大手海外メディアも食いついて大きな話題となる。
デモの参加者が大合唱しているのはハム太郎の替え歌で、「大好きなのはヒマワリのタネ」の部分を「大好きなのは納税者の血税」にしてタイ政府を批判する。
若い人たちが政府の言動や対応に不満を持ってデモを行うのは、世界各国であることだからそれはわかるとして、なぜ「ハム太郎」がその中心に?
もともとタイで日本のアニメは爆発的な人気があった。
10年ぐらい前、首都バンコクを歩いていたときになじみのある歌がきこえてきて、その方向に向かったらタイ人の高校生か大学生がアニソンを熱唱していた。
アニメキャラを使った反政府デモが生まれる土壌はすでにできていた。
カンボジアと違って国教にはなっていないものの、仏教国のタイで「一休さん」は誰でも知っているほどの知名度と人気がある。
まえにタイ人を京都の金閣寺に連れて行ったとき、「キンカクジ」も「ゴールデンテンプル」も聞いたことがなかった彼が実物を見ると、「あっ!一休さんのお寺だ!」と大喜びになって写真を撮ってすぐにSNSにアップした。
彼にとっては思わぬ聖地巡礼。
タイ人なら「キンカクジ」という名称は知らなくても、「一休さんの寺」と言えば「ああ、あれね」とすぐ分かるらしい。
さて話を反政府デモに戻すと、参加者のあるタイ人は「ゆがんだ社会構造のもとで将来への見通しが立たない自分たちをカゴのなかのハムスターに見立てた」と言う。
またネットには、「Run! Hamtaro! Run! Run for Democracy!」(走れハム太郎!民主主義に向かって!)というタイ人のツイートもある。
いやいや、ハム太郎には民主主義よりひまわりのタネだろ。
デモクラシーよりは、その日暮らしの生活だから。
反政府デモというと警官隊との衝突で死傷者が出ることもあるのだけど、そんな重大でシリアスな場で小学生のアイドル・ハム太郎をかつぎ出すことには、日本人のボクとして違和感を感じてしまうのだけど、タイ人の感覚ではそのギャップこそが魅力。
かわいいアニメキャラを加工して反政府的な言動をさせることで、ユニークさや大きなインパクトが生まれ、多くの人の興味や共感を呼ぶことできるという。
そのへんの事情を国際政治学者の六辻彰二氏がこう説明する。
この上なく健全なハム太郎だからこそ、社会の矛盾を糾弾する場にふさわしくなる。だとすると、ギャップの大きいハム太郎をあえて持ち出すことで、そういったことを理解しようともしない「エライ政治家」と「自分たち」を識別するコードにもなるかもしれない。
「とっとこハム太郎」はなぜタイで反政府デモのシンボルになったか
日本のアニメキャラでよくある、一種のギャップ萌えだったのか。
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ブログの中のビデオの冒頭(画面の右端)に出ている絵も、明らかに「えびちゅ」ですね。
なお念のために申し上げますが、「えびちゅ」の方が「ハム太郎」よりも先に登場した作品ですからね。
ちなみに、「新世紀エヴァンゲリオン」の中で、葛城ミサトが飲んでいる缶ビールが例外なくエビスビールであるのは、庵野秀明監督の「えびちゅ」に対する思い入れが反映さえれているからだという説もあります。