中国人の日本の呼び方:神仙の住む蓬莱と霓虹醤(日本ちゃん)

 

日本にとって歴史的・伝統的にもっとも関係の深い国といったら中国一択。

古代の日本が隋の煬帝(ようだい)にあてた国書で、「日出ずる処の天子、書を日没する処の天子に致す」と、日本の天皇と中国の皇帝を「同格」にして煬帝を怒らせたことは有名だ。

その辺のことは小野妹子を見てもらうとして、当時の日本人は自国を「太陽が昇る国」、中国を「太陽が沈む国」とみていたわけですよ。
この「東と西の国」という見方は中国人も同じで、日本をはるか東の大海に浮かぶ島国とイメージしていた中国人はいろんな呼び方を考え出した。

いちばん知られているのはきっと「倭」だけど、他にも「蓬莱」(ほうらい)という呼称がある。
蓬莱とは古代中国で東に広がる海の中にあって、不老不死の神のような仙人が住むといわれていたところ。
考え方としては、道教の影響を受けて成立した神仙思想のものだ。

中国最古の地理書「山海経」に「蓬莱山は海中にあり、大人の市は海中にあり」と記されている蓬莱は伝説上の場所で、紀元前3世紀には秦の始皇帝が徐福に「東方の三神山に長生不老の霊薬があるという。おまえ、行って取ってこい。」と無茶ぶりをしたと史書にある。
この神仙が住むという三神山「蓬莱・方丈・瀛州」のうち、蓬莱と瀛州(えいしゅう)がのちに日本を指す言葉となった。

いまの日本でも蓬莱という苗字の人がいるし、ときどきこの言葉を聞くけど、「瀛州」はほとんど消えてしまって「えいしゅう」と入力しても漢字変換されやない。

ちなみに竹取物語で「あなたと結婚したいです!」と言う求婚者に、「では、東の海に蓬莱という山があるので、その蓬莱の玉の枝を持ってきてください」とかぐや姫が無茶ぶりをしたのも、元ネタは秦の始皇帝と徐福の話だろう。

 

さて時代は一気に進んで、話は2020年の現代だ。
ちかごろ中国の人たちがネットで、日本を「霓虹(国)」と表現するのを見るようになった。
霓虹(こうげい)とは虹やネオンの意味だけど、日本を表す新しいネット用語として定着しつつある。

古代の中国人は「ニジ」を雄の龍(虹)と雌の龍(霓)に分けて考えていたから、「虹霓」でニジの意味になる。
ということは日本語でオスの龍(虹)しかないのは男尊女卑か?

でこれを反対にして、「霓虹」にすると日本を表す言葉になるという。

中国のインターネット辞書(维基百科)で「霓虹」を見るとこんな説明がある。

「与日语中的 “日本” にほん (Nihon) 同音 网友论坛贴吧回复的代名词」

霓虹の中国語発音「nihong」は二ホンとほぼ同じという。

つまり日本に旅行に行ったりアニメやマンガを見るなどして、中国社会に日本の影響が広がった結果、誰かが霓虹を発見してネットで使ったところ、多くの中国人の共感を得てこれが日本の代名詞になったようだ。

それでいまでは訪日中国人向けに、いろんな質問に答えるコンシェルジュ「霓虹醤」(日本ちゃん)も登場した。

 

 

蓬莱とかいう仙人が住む伝説の島に比べて、中国人にとって日本は本当に身近になった。

 

 

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今まで、東南アジア・中東・西アフリカなど約30の国と地域に旅をしてきました。それと歴史を教えていた経験をいかして、読者のみなさんに役立つ情報をお届けしたいと思っています。 また外国人の友人が多いので、彼らの視点から見た日本も紹介します。