日韓関係の闇と光：「安倍土下座像」の背景／怒る韓国人

駐日大使をしていた韓日外交の専門家・シン・ガクス氏が、最悪といわれるいまの韓日関係で、韓国が譲れない点についてこう話した。

「過去の問題の解決は被害者と加害者である韓国・日本の協力で実現しなければいけない。加害者の真の反省・謝罪が被害者の寛容と結びついてこそ持続性のある解決をもたらす。」

「不幸だった過去が繰り返さないよう加害者に正しい歴史認識を抱かせることに重点を置かなければいかない。」

これは韓国の全国紙に載った意見だから、そのまま国民の常識と考えていい。
実際、韓国では反日感情が優先されて韓日を「被害者と加害者の関係」と設定して、それを前提に主張をはじめることがほとんどだ。

この価値観や考え方を具体的に表したモノが、ことしの夏に日韓で大きな話題と非難を呼んだ「安倍土下座像」だ。
イスに座る慰安婦を象徴する少女像に向かって、安倍首相が頭を下げて両手両膝を地につけて謝罪しているという衝撃的な像が植物園に設置されていることが発覚して、これには韓国国内でも「やりすぎでは？」という声が一部であった。

想像を超える反響におどろいた設置者の園長は、「あの像は必ずしも安倍を指しているわけではない。でも安倍かもしれない。」という供述をする。

でも基本的には、
「過去の問題の解決は加害者の真の反省・謝罪が被害者の寛容と結びついてこそ」
「不幸だった過去が繰り返さないよう加害者に正しい歴史認識を抱かせる」
という認識のもとに土下座像が設置されたことには変わりはない。

デイリー新潮の記事（2020年8月18日）で園長が像の目的をこう話している。

像には少女（慰安婦のこと）に対して過ちを犯した誰かに謝罪してほしいという気持ちが込められている。加害者が最低限の礼儀として過ちについて謝罪してくれたらいいなと。

韓国「土下座像」が観光名所に　園長が語った“本音”とは

とにかく日本は謝罪しろということだけど、こんな園長とまったく違う意見を持つ韓国人もいる。
ベストセラー『反日種族主義』の共著者である李宇衍（イ・ウヨン）氏は、中学生ぐらいに見える少女像についてこう話す。

実際の慰安婦は10代の少女ではありませんでした。韓国では、慰安婦は日本の官憲に無理やり連れて行かれたというイメージも定着していますが、これも事実ではない。つまりこの像は、ありもしない歴史的事実を前提に、日本の総理に謝罪しろと要求しているわけです。何の根拠もないでたらめをもとに、日本のトップに跪けとは、外交的にあり得ず、無礼にあたります。

この像は韓日関係に利益をもたらすモノではなく、イ・ウヨン氏は話題性を見込んだ『反日商売』と切り捨てる。
韓国人の事情や気持ちは韓国人がよく知っている。
イ氏の言っていることが歴史の事実で、慰安婦の実態とかけ離れた少女像は国民に誤ったイメージを定着させてしまう。
何の根拠もないでたらめをもとに、日本に反省や謝罪を要求するから日本人には響かない。