ヨーロッパ人も月見をする? 日本と違う“邪悪な”イメージ

 

ことし2020年の月見の日、十五夜(中秋の名月)は10月1日(木)にあった。
でもその日は中国から伝わった月見で、日本には十五夜のほかにも「十三夜」という独自の月見の日がある。
中国では1回だけなのに2回も月を眺めるとか、むかしの日本人はどれだけお月様が好きだったのか。

ことしの十三夜はきのう10月29日(木)だった。
はい、十五夜より前だと思ってた人は廊下に立ってるように。

日本には月見という全国的な文化があって、この時期にはマクドナルドで「月見パイ」が出るのがお約束なのだけど、ヨーロッパにも月を眺める風習があるのだろうか?
リトアニア人にそんな質問をすると、「そんな話は聞いたことがない。いまは違うけど、ヨーロッパでは伝統的に月には悪いイメージがあったんだ。狼男が月を見ると人間から獣に変身するのは、そんな見方の象徴だね」と言う。
日本では月に「お」と「様」の敬語を2つも付けるのに、これだと見方が日本の反対で邪悪じゃないか。と意外に思ったのがきょねんのこと。

きのうの十三夜、満月を見てもの思いにふけっているとき(ウソ松)、このことを思い出して、リトアニア人にメールで「ヨーロッパ人と月」についてくわしく聞いてみた。

 

でもその前に、東ヨーロッパの国リトアニアの位置を確認しておこう。
下の地図では北海道の左にあるバルト三国のひとつで、杉原千畝やカニカマで有名だ。

 

 

ここではふつうのヨーロッパ人の認識や考え方を紹介したい。
だからこれは個人の意見なので欧州を代表するものではないし、化け物の出身地とか内容も客観的に正しいかどうかも保証できぬ。
つまりファクトではなくてオピニオン、ということを念頭に読んでほしい。

「Werewolf originated from Switzerland and vampire, I believe, from Italy. It appeared at the same time when the witch hunt began in Europe. In the wild, wolves were howling in the night (or at the moon you could say).So maybe people believed that wolves has some connections to the moon, and therefore the werewolf as well.」

狼男(Werewolf)はたしかスイスで、吸血鬼(vampire)はイタリアで生まれたと思う。
ヨーロッパでは魔女狩りが始まったのと同時に、それらのモンスターも現れた。
野生のオオカミは夜(またはあなたの言う月)に吠えていたから、人々はオオカミと月には何らかの関係があると信じていたのかもしれない。
狼男もこれと同じ。

 

オオカミの遠吠え(ハウリング)
オオカミは吠えることで、仲間との連絡や縄張りの主張などをする。

 

狼男(18世紀・ドイツの木版画)

 

「I can’t say, that it means that the moon, in general, was a bad sign. Blood moon, on the other hand, yes. It was a bad sign, and full moon maybe. So I would say, that maybe only the phase of the moon and not the moon itself was a bad sign.」

ヨーロッパで一般的に、月が悪いサイン(前兆)を意味していたとはボクは言えない。
でもブラッドムーンならそう。それは悪いサインだった。たぶん満月も。
だから月自体ではなくて、月の満ち欠けが悪いサインだったと思う。

ブラッドムーン(血のような月)とは皆既月食の影響で赤く見える月のこと。
これは2003年のブラッドムーン。

 

なんか禍々(まがまが)しい。
数百年前の人間がこれを見たら、何か悪いことが起きそうな不安を感じてもおかしくない。
アニメでこんな月が登場すると、次に叫び声をあげて人が殺されるシーンが出てきそう。またはブラッドムーンに断末魔を重ねるとか。
こんな月の夜にオオカミのハウリングがきこえたら、ヨーロッパ人はそれをどう思ったか?

 

ウィキペディアで確認してみても、ヨーロッパ人は月というより満月に対して恐怖や不吉を感じていたようだ。

西洋では月が人間を狂気に引き込むと考えられ、英語で “lunatic”(ルナティック)とは気が狂っていることを表す。また満月の日に人狼は人から狼に変身し、魔女たちは黒ミサを開くと考えられていた。

月・ヨーロッパの伝統文化

 

こんな地域じゃ、満月を眺めがら酒やお菓子を楽しむほのぼの文化が生まれるわけない。
お月様とだんご&ススキ、ブラッドムーンと狼男&吸血鬼に、月に対する日本とヨーロッパの伝統的な見方がよく表れている。
日本にもそんな見方があって、アニメやマンガで「危険で邪悪なキャラ」は太陽ではなく、月をバックにして登場することがよくあるし、月を見せてこれからヤバいことが起こることを予感させることもある。
「お月様」からこんなダークなものまで、月が見せるイメージ顔はホントいろいろだ。

 

 

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1 個のコメント

  • ローマ神話の女神ルーナ、ギリシャ神話では女神セレネーに相当しますが、どちらもその美貌により男どもを狂わせるエピソードが数多く残っています。紀元前からのその伝統が未だに「ルナティック」という単語にも残っているとすれば、欧米人が満月に対して恐れを抱くのも当然でしょうね。
    女神の美貌に狂ってしまえば、どんな男だって狼になってしまうのも、ごく自然のことです。
    一般人は、イエスやブッダほどには悟りを開いていないのですから。

    そうだな、たまには狼にでもなりたいな。

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    今まで、東南アジア・中東・西アフリカなど約30の国と地域に旅をしてきました。それと歴史を教えていた経験をいかして、読者のみなさんに役立つ情報をお届けしたいと思っています。 また外国人の友人が多いので、彼らの視点から見た日本も紹介します。