【古代中国の殉葬】放送禁止が当然の「未亡人」って言葉

 

日本では職場で働く女性を「OL」と呼んでいるけれど、「オフィス・レディー」という言葉は“侮辱的”という批判があがって最近ではあまり使われなくなった。

でも、OLよりはるかにヒドイ言葉が「未亡人」。
「夫に先立たれた女性」という意味で数十年前まではフツーに使われていたこの言葉も、いまは放送禁止用語になって社会的に葬られた。
例えば新聞に「ジョンレノンの未亡人オノヨーコさんが~」と書かれていたのが、いまでは「故ジョンレノン氏の夫人オノヨーコさんが~」という表現になっている。

ちなみにウィキペディアによると「穢多」や「非人」はもちろん、「転売ヤー」や「上級国民」も禁止用語だから、ネット用語をそのまま口にしないよう気を付けよう。

 

 

「未亡人」という言葉が女性にとってどれだけヒドイ言葉なのかは、「精選版 日本国語大辞典の解説」の説明をみれば分かる。

「夫と共に死ぬべきであるのに、未だ死なない人の意」

言葉をそまま解釈すると、「未(いま)だ亡くならない人」で上のような意味になる。

2000年以上前の中国の古典「春秋佐伝」に出てくる「未亡人」は、夫を亡くした妻が「本来なら一緒に死ぬべき人間なのに、恥ずかしながらまだ生きている」と自分で自分をさげずむ言葉だった。
前に中国人の日本語ガイドから、古代中国で女性は男性の「所有物」の扱いをされていたから、夫が死んだら妻もその墓に生き埋めにされたという話を聞いて戦慄した。

そんなことをふと思い出したから、中国人が集まるSNS上のグループに、はるか昔の中国でそんな残酷な儀式が行われていたかを聞いてみたところ、こんな返事がくる。

*日本語はこちらで修正済み。
ちなみに夫を亡くした妻は中国語で「寡妇」という。

 

・Yes we had this before. We call it “殉xun葬zang”.

・昔、「陪葬」という儀式がありました。
皇帝がなくなったら、一定の地位以下の妃に首をつるためのロープや毒の入った酒を与えて自殺をせまります。嫌だと言っても皇帝の従者が手にかけます。

・古代中国では主人が亡くなったら、主人が生前1番好きだった妻が一緒に生きたままで墓に入ります。
残った妻たちは未亡人と呼ばれます。これはあくまでも皇帝や地主など地位の高い人や金持ちの人の家庭で行われる儀式です。

・皇帝が死んだら、皇后と妃達は一緒に埋められたというケースがあったし、奴婢がついていくこともあった。

・夫を亡くしたからといって死なせるわけがないと思います。
皇帝や貴族なら殉葬はありえますが、一般人はないと思います。ただ、夫が全てと思い生き甲斐を失ったり、夫に対する忠誠心から自ら死を選ぶ人はいました。

・「心中有座坟,葬有未亡人」。昔から、良く聞く漢詩ですね。

 

ということでコメントをまとめると、古代中国では「殉葬」や「陪葬」といった形で夫が死んだら妻も生き埋めにされることがあったようだ。
でもそれは王侯貴族の話で庶民は関係なさそう。

王や貴族などの権力者が亡くなると、その臣下や従者も一緒に死んで葬られる「殉葬」は、エジプトや中国などで実際にあって、古代王朝の殷の墓からは多くの殉死者が見つかっている。
墓の入口を守るための人や馬なども葬られていたという。
こんな儀式と「未亡人」という言葉が直接つながっているかは分からないけど、考え方としては結びついている。

こうした考え方はずっと昔のことで、昭和の日本で使われていた未亡人は「夫に先立たれた妻」という意味でしかない。
でも、もともとの意味を考えると、「ジョンレノンの未亡人オノヨーコさん」という表現はとんでもなくヒドイことが分かる。

 

 

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今まで、東南アジア・中東・西アフリカなど約30の国と地域に旅をしてきました。それと歴史を教えていた経験をいかして、読者のみなさんに役立つ情報をお届けしたいと思っています。 また外国人の友人が多いので、彼らの視点から見た日本も紹介します。