日本のお正月文化・七草粥。その目的や歴史、中国の影響

 

きょう1月7日はロシアではクリスマス、日本では伝統的に七草粥(かゆ)を食べる日になっている。

クリスマスとお粥という日ロの文化、この2つにはまったく接点がないと思うかもしれないが、実際のところまったく関係ない。

さて縁起物が大好きという日本人の国民性はむかしから変わらないようで、この古代の風習は令和のいまでも残っている。
1月7日は「せり、なずな、ごぎょう、はこべら、ほとけのざ、すずな、すずしろ」の春の七草(七種)を入れて作った七草粥を食べる日で、これには邪気を払って病気にならないという目的がある。
健康に過ごすための、一種のおまじないだ。

 

七草粥

 

このお粥を作るには独特のルールがあって、歌を歌いながら春の七草を包丁で刻むことになっている。
その歌は地方によって違っていて、たとえば関東にはこんな歌がある。

「七草なずな 唐土の鳥が 日本の国に 渡らぬ先に ストトントン」

ほかにも静岡県浜松市の水窪町ではこんな感じ。

「七草なずな 唐土の鳥が 日本の国に 渡らぬ先に ヒョウゴの国に 追い越せ追い越せ ストトントン」

まぁボクは浜松市民なんだが、水窪の住民じゃないからこれは初耳。

そういえば秋葉原のメイドカフェに行ったドイツ人が、「注文したオムライスを食べようとしたら、その前にメイドが“おいしくなる魔法”をかけてくれた」と喜んでいたけど、その原点は七草粥にあったらしい。

このお粥について食材や歌などは地方によって違うから、くわしいことはここで確認してくれ。

七草かゆ・地方での差異

 

七草粥はただの縁起物やおまじないではない。
おせち料理でいろんな物を食べて疲れた胃腸を休める目的があるし、野菜が少ない冬に必要な栄養素を摂取するという意味もあった。

現代的な視点からみると、セリやナズナには免疫力を高めて風邪を予防するビタミンAや疲労回復に効果的なビタミンBがあるし、スズナやスズシロには消化を助けるアミラーゼ、美白にいいビタミンCがふくまれている。
食物繊維もたっぷりだから、七草粥はいまでも日本人に必要な食べ物だ。

 

セリ

 

はるか昔の日本では年の初めに、雪の残る地表から芽を出した草を摘む「若菜摘み」という風習があった。
また古代中国には、7種類の野菜を入れたあつもの(とろみのある汁物)を食べて無病を祈る風習があった。この汁物を「七種菜羹(しちしゅさいこう)」という
*羹は「あつもの」。羊羹(ようかん)の羹と同じ漢字。

日本の七草粥の文化はこの「若菜摘み」と「七種菜羹」が組み合わさってできたと考えられている。

新年7日にセリやナズナなど若菜を食べる風習は、平安時代に天皇や貴族がおこなう宮中行事として始まり、江戸時代には将軍家の公式行事となって庶民にも広がっていった。
だからこの日に七草粥を食するのは、1000年以上つづく日本の正月文化なのだ。

このころには若菜が売れるから、松尾芭蕉はこんな句を詠んでいる。

「蒟蒻(こんにゃく)に 今日は売り勝つ 若菜かな」

 

この文化はすっかり社会に定着しているから、食材や調理法などくわしい情報を求める人は多い。

 

 

でも中国は違う。
あちらでは「七種菜羹」の風習はかなり消えてしまったと、毎日新聞のコラム「余禄」にある。(2021年1月7日)

中国では広東省などの一部に残るだけの食習慣だが、日本では現代まで続いてきた。若菜が豊富に手に入る自然があったからではないか。万葉集にも若菜摘みの歌は多い。日本の風土にぴったりと合ったのだろう

<蒟蒻に今日は売り勝つ若菜かな…

 

中国人から話をきくと、日本で「失われた中国文化」を発見する人がけっこういる。
「昭和・平成・令和といった元号が残っているのは日本だけですね」と言う中国人もいれば、京都を旅行して「唐の長安がこんな感じだったのかな、と思いました」という感想をもった人もいた。

七草粥もふくめていまでも残されている文化や風習は、日本の風土にぴったりと合ったものばかりだろう。

 

 

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今まで、東南アジア・中東・西アフリカなど約30の国と地域に旅をしてきました。それと歴史を教えていた経験をいかして、読者のみなさんに役立つ情報をお届けしたいと思っています。 また外国人の友人が多いので、彼らの視点から見た日本も紹介します。