日本と外国ではことばも感性もちがう。
だから日本の商品を海外で売り出すと、日本人には意外な展開になることがある。
福岡の日本酒「豊醸 美田(ほうじょう びでん)」もそのひとつだ。
この英語表記「HOJO BIDEN」が、アメリカの新大統領バイデン氏の名前「Joe Biden」とよく似ているということから、いまアメリカでこのお酒が売れている。
コロナのせいで売り上げが落ち込んでいたメーカー側にとって、これはうれしい予想外だったとか。
でもこれには当然、逆パターンもアリ。
日本マクドナルドがきょねん「大人のクリームパイ」を売り出したところ、日本人には特に問題はなく、味も良かったのだけど、それを英語にした「Adult Cream Pie」が英語のわかる外国人を絶句させた。
このことばを見るとすさまじく下品なものが思い浮かぶので、在日外国人のあいだでこの商品名が大きな話題となった。
知人のアメリカ人は「友達と大笑いした!(my friends and i laughed at this alot)」というが、「Cream Pie」の日本語は下品すぎてここではとても書けない。
まわりに人がいないことを確認してから、アメリカ版ヤフーで画像検索してほしい。
日本のヤフーだと生クリームたっぷりのおいしそうなパイの画像が出てくるけど、英語版ではありえない画像が表示されるはず。
さてきょう2月3日は「にゅう(2)さん(3)」から「乳酸菌の日」になっている。
ということで最後に、日本初の乳酸菌飲料「カルピス」を取り上げよう。
いまでは日本の国民飲料となったこの飲み物は、三島 海雲(みしま かいうん:カルピスの創業者)が明治41年に内モンゴルを訪れときに口にした酸乳を参考にしてつくられた。
三島が「心とからだの健康」を願って、乳酸菌を日本に広めることを志して商品化されたカルピスは1919年(大正8年)に発売がはじまった。
国境を越えて海外に広がったカルピスは、アメリカで「ことばの壁」とぶつかった。
日本人は英語の「l」を「エル」と発音するけど、英語ネイティブがそんなカタカナ発音をするわけがなく、「ウ」と言うことが一般的。
正確な発音はネットで聞いてもらうとして、たとえば「I will go」なら、アメリカ人やイギリス人は「アイウ・ゴー」と言う。
少なくとも「アイ・ウィル・ゴー」はない。
この法則をカルピス(Calpis)に当てはめると、「カウピス」という発音になってしまう。
「Cow(牛)」は乳酸菌らしくていいとしても、アメリカ人に「ピス」の響きはまずい。
「Piss」とは尿のことだから、Calpisだと「Cow Piss(牛のおしっこ)」に聞こえる人がでてきた。
そこでアメリカでは「Calpico(カルピコ)」と、日本人の耳にはちょっとかわいい音の商品名に変更された。
だから、アメリカ(他の国でも?)では「カルピコ」が販売されているはずだ。
いまアメリカでカルピコがどれだけ受け入れられているか知らないけれど、「Adult Cream Pie」を全米デビューさせる暴挙に比べれば成功しているはず。
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「Adult Cream Pie」という商品名は確かに絶句ですね。場所によっては下手すると警察に捕まりそうだ。
確かに、Lの発音ってホント難しい。この記事にも出ている「カウピス」とか、「ビューリフォー」「ピーポー」(人々は救急車?)「バッタフライ」(バッタとハエがどうしてチョウに?)「リル(little)」「ラ・ラ・ラ~ンド」とか、同じ「L」なのに、いったいいくつ発音があるんじゃ~! って感じです。慣れるしかないですね。
英語に比べりゃ、日本語って発音が極めて簡単な言語ですよ。真面目に勉強する外国人だったら、3ヶ月程度で、大半の日本人の英語発音力よりはマシな日本語が発音できるようになります。でも漢字を含めた読み書きはとてつもなく難しいのですが。