前回、東南アジアの仏教徒からみた「日本の不思議」について書いた。
仏教で肉食は禁止されているはずだけど、日本のお坊さんはハンバーグでもステーキでも食べることができる。
まえにそんな宗教の「禁忌」(きんき)についてドライブ中にアメリカ人と話をしていたとき、後部座席にいたトルコ人が「いまキンキって言った?変態について語ってるの?」とか言い出す。
オマエは何を言ってんだ?と思ったら、英語の「kinky」は「変態・性的に異常」のことだから、「キンキ」と聞いてそれを連想し、2人がどんな話をしているのか気になったらしい。
禁忌とkinkyでは銀河系レベルでちがうけど、外国人にはどっちも「キンキ」に聞こえるからまぎらわしい。
そんな日本語と英語のちがいで困ったのが近畿大学だ。
外国人が「KINKI UNIVERSITY」という表記を見たら、「え?変態大学」と誤解してしまうかもしれない。
ということで近畿大学HPの英語版では「KINDAI UNIVERSITY」という大学名になっている。
カルピス(Calpis)を英語圏の人は「カウピス」と発音してしまい、それだと「Cow Piss(牛のおしっこ)」に聞こえる人もいるから、アメリカでは「Calpico(カルピコ)」に変更された。
「KINDAI」の背景もそれと同じだ。

これだと「キンダイ大学」になってしまうけど「変態大学」よりはマシ。
きのう2月11日に、108歳の誕生日をむかえたトンボ鉛筆がこんなツイートをした。

建国記念の日が創立記念日とか、なんという日本らしい会社なのか。
大正2年に「小川春之助商店」という名前でデビューしたこの企業が、現在の「トンボ鉛筆」に社名を変えたのは昭和2年のこと。
トンボは『勝ち虫』ともいわれて縁起の良い虫だったことと、古事記にでてくる日本の名称「秋津島(あきつしま)」の秋津とはトンボのことだからこの会社名にしたという。
幸運と日本にこだわった会社名なんだが、この英語表記を見て違和感を感じないだろうか?

「tombow」だと「トンボウ」になってしまう。
さっきも書いたように、日本語と英語は違うことばだから思わぬ誤解を招くこともある。
「tombo」の表記だと外国人が「お墓(tomb)」を連想するかもしれないということで、ローマ字の社名は『tombow』にしたという。
会社にとってイメージは命。
縁起にこだわったトンボ鉛筆が「死」を避けるのは当たり前。
「変態大学」と誤解されないよう近畿大学は「KINDAI UNIVERSITY」という大学名にして、「牛のおしっこ」にならないようカルピスは「Calpico(カルピコ)」に社名を変更した。
世界を舞台に活躍するなら、予測と柔軟性が必要だ。
おまけ
いまどのぐらいの人が覚えているか知らんけど、「首ちょんぱ」という言葉がある。
これは元はトンボ鉛筆を1ダース分買うと、おまけで付いてきたおもちゃのことだった。
1970年代にトンボ鉛筆がザ・ドリフターズをCMに起用したとき、メンバーの顔をかたどった「首ちょんぱ」という人形をつくってプレゼントした。
首がポーンと飛んで行く仕掛けで子供たちには大うけしたが、親からの苦情で「首ちょんぱ」人形はなくなった。(そりゃそうだ)
でも絶妙でキャッチーなネーミングだったせいか、いまでは首が飛ばされる現象を「首ちょんぱ」と言うことがある。
「虎は死して皮を留め、人は死して名を残す」という格言を体現した例といえる。
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