欧米の人種差別:中国・韓国・日本人が「狩り」の被害者に

 

知人の黒人女性がいま韓国のソウルで暮らしている。
彼女がそれまで住んでいたニューヨークを後にした理由のひとつは、「トランプのアメリカ」では人種差別がひどくなって生きづらさを感じたから。

このアメリカ社会の“病気”が、新型コロナウイルスをきっかけにいま表面化している。
アジア系住民に対する憎悪や敵意からヘイトクライム(憎悪犯罪)や嫌がらせ行為が急増していることを受けて、ニューヨーク市で議員や市長など約200人が参加する差別反対の集会が開かれた。

共同通信社の記事(2021/02/28)

「ニューヨークは多様性の街だ。立ち上がろう」と訴えた。新型コロナを「中国ウイルス」とやゆしたトランプ前大統領を批判し「トランプ氏が偏見を広め事態が悪化」と指摘した。

米NYでアジア系差別反対の集会 「多様性」訴え

 

2019年にはニューヨーク市で1件だったアジア系住民へのヘイトクライムが、2020年には30件と激増し、複数の日本人も嫌がらせなどを受けたという。

でこれに日本のネットの反応は?

・BLMはものすごく盛り上がって多くのセレブも反応したけど、アジア人の人権になると誰も何も言わない。
・アジア差別は今回だけじゃないんだろうけど嫌な話だな
・イエロー ライブズ マター を盛り上げるべきじゃね?w
・アジア系の差別が増えたのは黒人に八つ当たりできなくなったからだろ
・全部トランプのせいにしてれば楽だよね
・人種差別反対の白人リベラルや黒人はさぞかし多くの方が参加されたんでしょうね?

 

この傾向はニューヨークだけではない。

最近、韓国メディアの中央日報にもこんな記事があった。(2021.02.26)

キムさんは「男性2人が私の額と目を殴った。私は地面に倒れたが、彼らはずっと私を殴った」とし「彼らは私を殺すと言った。命を奪われるのではないかと思って怖くなった」と明らかにした。

「中国ウイルスだ、殺してやる」LAコリアンタウンで韓人無差別暴行

 

ヒスパニック系の男性が中国人をバカにする「チンチョン」ということばを口にしながら襲いかかり、この韓国系住民のキムさんは、鼻の骨が折れて目にアザができたと記事にある。

アメリカのアジア人権団体によると、昨年3月から今年1月まで47州で、こうした人種差別に基づく犯罪や嫌がらせの被害が2800件ほど報告された。
その内容は、ことばの暴力が45%、サービス拒否22%、敵対的な身体接触が10%だったとか。

韓国移住を決意したアメリカ人のチョイスは正しかったらしい。

 

欧米人の目には日本人・中国人・韓国人はほとんど同じから、アジア人への人種差別は人ごとではない。
実際今月10日、日本人がパリで塩酸をかけられる事件が発生。
フードをかぶって下を向いていた人間(性別は不明)が液体の入ったボトルを取り出して、いきなり顔に向けてその液体をかけてきたという。
瞬時に「ヤバい」と思って手で顔をガードしたからまだよかったものの、判断が遅かったらその日本人は光を失っていたかもしれない。

外務省ホームページにこう書いてある。

顔(特に目など)にかかっていた場合、失明など取り返しのつかない事案に発展していた可能性があった。

強酸性の液体を用いた傷害事件の発生(注意喚起)

 

事件があったパリの区長は「アジア人差別による襲撃かどうか、現時点ではまったく確認できていない」といった声明を出したけれど、 フランスにいる日本人のSNSを見ると「アジア人がねらわれた」と考えている人がほとんどだ。
アジア人に対する差別的・侮辱的な言動は、以前からよくあったらしい。
だから「パリの名誉」を守ろうとする区長に怒る日本人もいた。
犯人とこの日本人に個人的な関係はないだろうし、金が目的でもない。
この人が塩酸をかけられた理由を「アジア人だから」以外に求めることは不自然だし、不誠実だろう。

フランス社会にあった負の感情がコロナに呼び覚まされ、中国人などがいきなり殴られるといった「アジア人狩り」につながったと現地在住の日本人が指摘する。(2021/02/18)

もともとフランスには、アジア人に対する差別というものは、特に表面化することはなくても、存在していました。(中略)フランスでは、アジア人差別や「アジア人狩り」なるさらに暴力的な動きが活発化しており

パリ17区で起こった日本人への塩酸襲撃事件で考えさせられること

 

ドイツやイタリアに住んでいる日本人には、「明日は我が身」と考える人が何人もいて、SNSでこの事件を取り上げては、憎悪犯罪のターゲットにならないよう注意を呼びかけあっていた。

昨年のいまごろフランスやイタリアでアジア系住民が、差別的な嫌がらせや侮辱行為を受けていたとAFPの記事にある。(2020年1月31日)

「まるでアジア系全員が保菌者扱い」 新型肺炎で人種差別相次ぐ、欧州

だからいまのヨーロッパで、自衛のための用心は当たり前。
それにしても、この事件は日本ではあまり報じられていない気がする。

 

欧米社会を日本の多文化共生の理想とみて、「日本はまだまだ遅れている」という意見をチラホラ見かける。
それは正しいし、間違っている。
欧米社会は長い歴史の中で多文化共生のノウハウを身につけているから、日本が参考にできる点はある。
でも、何かのきっかけで表面化する人種差別の感情や憎悪を、“欧米推し”の日本人さんは無視していないか。

違う人種の人間にいきなり殴りかかったり、塩酸をかけるようなヘイトクライムは日本で聞いたことがない。
多様性の尊重が大事と訴える集会がNYで開かれたように、一部を切り取れば先進的な国もあるだけで、多文化共生は結局どこも発展途上だ。

 

 

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アメリカ 「目次」

日本 「目次」

客のニーズに応えると、黒人差別になる日本の社会。

 

1 個のコメント

  • > 知人の黒人女性がいま韓国のソウルで暮らしている。
    > 彼女がそれまで住んでいたニューヨークを後にした理由のひとつは、「トランプのアメリカ」では人種差別がひどくなって生きづらさを感じたから。
    > 韓国移住を決意したアメリカ人のチョイスは正しかったらしい。

    うーん、まあ私だったら、そのチョイスは中国移住と同じく、決して勧めませんけどね。
    それらの国における黒人差別は、おそらく、日本よりもずっと厳しいと思いますし、色々知人から聞いたりもしているので確信しています。
    ま、彼女が支障なく海外生活を送れるよう、祈るだけです。

    ああそれと、欧米人に、日本人・中国人・韓国人を見分けろと言っても無理な話ですからね。もしも絶対に日本人として見られたいのであれば、そのことを大きな声で周囲に訴えるより他に方法はありません。
    我々日本人が、米国人の中でドイツ系・イタリア系・フランス系・スペイン系・ギリシャ系・ロシア系を見分けられないのと同じです。

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    今まで、東南アジア・中東・西アフリカなど約30の国と地域に旅をしてきました。それと歴史を教えていた経験をいかして、読者のみなさんに役立つ情報をお届けしたいと思っています。 また外国人の友人が多いので、彼らの視点から見た日本も紹介します。