【閻魔とサタン】仏教とキリスト教の“王”、その共通点と違い　

 

３月16日は「閻魔（えんま）の日」
といってもそれは今日だけじゃない。
毎月16日は「閻魔の縁日」になっていて、この日に閻魔にお参りすると寿命が延びる、なんてオイシイ話もある。
京都市上京区・閻魔前町にある引接寺には「千本ゑんま堂」があって、毎月16日に限定販売される「えんま餅」がうまいと評判だ。

ということで今回の話は閻魔とサタン。
ともに仏教とキリスト教では、『王』と呼ばれる存在だ。

 

閻魔はもともとインド神話にでてくる死の神・ヤマのことで、ヤマは『人類で一番はじめに死んだ人』という位置づけをされている。
そのうち死者があとからあとからやって来て、孤独で泣きそうだった閻魔は「よく来たっ」と彼らをハグして歓迎したという。たぶん。

ただ、死者がどんどん増えていくことで問題も起きてきた。
秩序や平和を乱す悪人も死の世界に入ってくるようになったことで、「これではマズい」と思った閻魔は悪人と善人を別々の世界に住まわせることにした。
閻魔は裁判官となって、「おまえ、生きてるときに良いこといっぱいしたじゃん！ハイ天国行き」とか、「おまえの人生、鬼畜じゃねえか。地獄に逝ってよし」と裁いて、死者の行き先をきめることとなった。

裁判官はほかにも秦広王、都市王、平等王などがいて（十王信仰）、この中で最もよく知られている代表的な存在が閻魔だ。
それで『閻魔王』とか『地獄の王』なんて呼ばれることもある。
ちなみに閻魔の好物はコンニャクらしい。
コンニャクには裏表がないから、ということで。

 

閻魔

 

一番先に死の世界へ行って、そこの王となる。

仏教でそんな存在が閻魔なら、キリスト教ではサタンになる。
もちろんこれはワタクシの独断と主観。

『光をもたらす者』を意味するルシファー (ルキフェル、ルシフェルなど) は、天界にいたときは神に仕える天使だった。
天使の中でも別格の美しさを誇る大天使だったルシファーは、あるとき神の怒りを買って天上界から下界に堕（落）とされた。。
こういう天界から追放された（堕天した）元天使をキリスト教では『悪魔』と呼ぶ。
そして最も早く堕天したのがこのルシファー。

ルシファーが悪魔になった理由には諸説ある。

・創造主である神に対して謀反を起こしたから。
・土からつくった人間（アダム）に拝礼せよ、という神の命令を拒否したから。
・ルシファーが何らかの罪を犯したから。

こうした理由から最高位の天使だったルシファーは堕落し、地獄の王サタンになったといわれる。

 

ルシファー（天使だったころ）

 

天界を追放され、地球に向かうルシファー

 

悪魔大王（サタン）となったルシファー

 

デビルもサタンも日本語では「悪魔」になる。
ちなみにデビルの語源はギリシア語のディアボロス（悪魔）から。

デビルとは堕落した天使のことだから複数いるけれど、サタンは一番はじめに堕天使（悪魔）になったことから、「悪魔の王」や「魔王」などと呼ばれる。
十王の中でも別格だった閻魔が「大王」と言われるようなものだろう。

 

以上、この話の元ネタは知人のイギリス人の感想だ。
一緒にお寺へ行って閻魔の説明をしたとき、「地獄の王」と聞いた彼が「キリスト教ならそれはサタンだな」と言う。
ほかにも閻魔とサタンには、「最も早く“異界”に行った」という共通点がある。
そしてそれぞれ、そこの長となった。
もちろん仏教とキリスト教には決定的な違いがあって、閻魔は元人間だけど、サタンは元天使で神の創造物だ。
つくられたか生まれたかは、キリスト教と仏教との根本的な発想となっている。

でも欧米で毎月「サタンの日」があって、その日に祈るとご利益があるとか、限定の「サタン餅」が販売されることはない。
あと気になるのはサタンの好物で、悪魔の王はコンニャクが好きかどうか。

 

 

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