人種差別。
コロナ禍が、アメリカ社会のパンドラの箱を開けてしまったようだ。
サンフランシスコにあるチャイナタウンでは、いま住民がこんな自衛や警戒をしないといけない状態だ。
クーリエジャポンの記事(2021.3.20)
ボランティアの地域パトロール隊は、警笛とパンフレットだけを持ち、アジア系の住民が襲撃された区域のATMや小さい商店を確認し、通りを見回る。度重なる襲撃事件によって、同地域は緊張状態に置かれてきた。
アメリカで止まらないアジア系アメリカ人への暴力は、150年続く差別に起因している
こうした自発的なパトロールはロサンゼルスやニューヨーク市など、アジア系住民が多くいるところで行われている。
きょねん米メディアが「中国起源のウイルス」といったことばを使うようになってから、人種差別的な暴力や嫌がらせが増大したという。
ことし1月には、サンフランシスコで84歳のアジア系アメリカ人へが襲撃されて(激しく突き飛ばされ)、その後死亡した。
同じ1月にはニューヨーク市で、61歳のアジア系住民が地下鉄に乗っていたところ、突然顔を切りつけられる事件が発生。
「誰も来てくれませんでした。誰も助けてくれず、誰もビデオにも撮ってくれませんでした」と被害者が語る。
客観的に人種差別による犯罪(ヘイトクライム)かどうかを判断するのはむずかしいけれど、アメリカにいるアジア系の人たちは常識的にそう考えているようだ。
「それは、理由のない暴力行為で、私たち誰にでも起こりうること」と恐怖を感じる人は多く、警察もあまり頼りにならないから(コトバの壁もある)、 自分の身は自分で守らないといけない。
いまアジア系で銃を購入する人が増えているという。
こうした人種差別行為の原因を、トランプ前大統領の言動に求める声は多い。
トランプ氏は在任中、コロナウイルスを「チャイナ・ウイルス」、「カンフルー(カンフー+インフルエンザ)」と何度も呼んで国民の人種差別意識をあおり、アジア系に対する暴力が増加した。
多くの人がこの要因を指摘する。
でも、いま現れている人種差別をもっと根深いものと考える人もいて、アジア人への差別や偏見は150年ほど前にさかのぼると記事にはある。
アメリカでは、中国人労働者の米国への移民を禁止した1882年の中国人排斥法の頃から、アジア系の人々に対する陰湿な見方、人種差別感情が煽られてきた。同法律も「黄禍論」という、中国人移民が白人の職や西洋式の生活に対する脅威になるという、被害妄想の産物だった。
このニュースに日本のネットの反応は?
・そういう昔のことはいいんだよ😀
今この瞬間からやめろ
・狙われてるのって中国人と韓国人だろ?
・差別はあってもここまでされることはなかった
・今のアメリカは自分のこと棚に上げて
正義、人権とか押し付けてくる
・そういえばリトルトーキョーって
もう無いんだってな
・日本人だって日系外国人とか帰国子女とか差別するでしょ
つい先日もジョージア州で白人男性がアジア系8人を殺害し、うち6人が韓国系だったことで韓国社会に衝撃が走った。
新聞ハンギョレの社説(2021-03-18)
最近、米国でアジア系を狙った犯罪が相次いで発生している中、銃撃死亡事件まで起きたことにはショックを禁じえない。
韓人女性が銃撃を受け死亡、憂慮される米国の「人種犯罪」
この事件を受けてバイデン大統領が演説で、「多くのアジア系米国人は不安を感じながら街を歩いている。攻撃され、非難され、犠牲になって苦しんでいる」と言い、「変わらなければいけない。我々は声を出して行動する必要がある」と訴えた。
アメリカ社会は本当に変わることができるのか。
最近SNSにニューヨークに住むアジア系の男性(日系人っぽい)が、「残念ながら今の時期、アメリカでは着物を着て歩かない方がいいでしょうね」とメッセージを投稿しているのを見つけた。
この男性はNYで以前、着物を着ていたといううだけで、見知らぬ男にタックルされ吹っ飛ばされた経験があると言い、アジア系がいま着物を着て外を歩いていたら、「殴られたりタックルされたり襲われる恐れがあります」と警告する。
アジア系、そしてすべての人種に対するヘイトがなくなりますようにと書くこの人物が、ウソを言っているとは思えない。そうする理由やメリットがない。
彼の言うことが事実と裏付ける事件ならある。
ことし2月、シアトルの街を歩いていた日系アメリカ人の女性が、石をつめた靴下で顔面を殴られて意識を失った。
気づいたときには、女性の鼻の骨は折れ歯も砕けていた。
幸い(でもないが)犯人の黒人男性は捕まった。
でも、この女性は医者からもう前歯では食べられないと言われたうえ、いまは保険適用外となる高額治療に苦しんでいる。
このヘイトクライムの被害者、ノリコ・ナスさんへの支援キャンペーンがいま行われているので、関心があったらここを開いてほしい。
Support Inglemoor HS Teacher Noriko Nasu
ちなみに同じ2月、ロサンゼルスにある東本願寺の寺院が襲撃されて火をつけられた。
京都新聞の記事(2021年3月20日)
東本願寺ロサンゼルス別院で放火や破壊 ヘイトクライムか、写真で被害鮮明に
アメリカ社会での人種差別行為はけっして「白人と黒人」ではなくて、黒人やヒスパニック系の人がアジア系を襲うこともある。その逆もあるだろう。
加害者と被害者が入れ替わって、次はどっちが“される側”になるか分からないカオス状態。ボランティアの地域パトロール隊も必要になるわけだ。なんつーか北斗の拳の世界観。
この原因はトランプ前大統領の扇動と、150年前からつづく差別意識のコンビだろう。
この記事の10日後、韓国紙の中央日報日本語版にはこんな記事が載っていた。(2021.03.30)
走行中の地下鉄車内でこうした暴行が行われる間、だれも立ち上がって彼らを制止しなかった。(中略)他の乗客は暴行の途中で意味不明な歓呼の声を上げたりもした。
ニューヨークの地下鉄で黒人がアジア人無差別暴行…結局気絶
その1週間後の中央日報日本語版のコラムによると、いまアメリカでアジア人は「無差別暴行が与える恐怖感」の中にいる。(2021.04.06)
これといった予防法がなく「誰もが」「時を選ばず」襲われるところにある。被害者は主にアジア系高齢者や中壮年、女性が報告されている。
【グローバルアイ】暴力が横行する「ジャングル」になった米国
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