日本では季節を『春夏秋冬』の4つで表すことが普通。
でも昔は1年を24に分ける「二十四節気(にじゅうしせっき)」や、72に分ける「七十二候(しちじゅうにこう)」という季節の表現もあったのだ。
いまでもなくなったわけではないけれど。
くわしいことはこの記事をプリーズ。
七十二候の季節の表し方は独特で、たとえば「東風解凍(東風が厚い氷を解かし始める)」で春が始まる。
そしていまでいう春には、「草木萌動(草木が芽吹き始める)」や、「桜始開(桜の花が咲き始める)」なんて季節もある。
さて3月の終わりになると毎年、日本にいる外国人が桜の写真をSNSにアップするようになる。
最近あるトルコ人が近所で見た桜を投稿すると、親からこんなメッセージがきた。
Şu korona illeti olmasaydı bende gelip kendi gözlerimle görecektim hem sakuraları hem de seni😘🥰
コロナさえなければ、あなたと桜(sakuraları)の両方を見に行ったのに、といった意味らしい。
むかし小学校の理科の試験で「雪がとけると何になるでしょう?」という質問に「春になる」と回答した小学生がいたという。
もちろん正解は「水」だけど、こういう感受性は大事にしたい。
花が咲き始めると春の訪れを感じるセンスは日本人だけではなくて、これは世界共通だ。
ということでこれから、その一端を紹介しよう。
中国人に春を告げる花をたずねたら、「中国は梅ですね」と言う。
雪の中でも咲く梅に美しさと強さを感じた中国人は、蘭、竹、菊と並ぶ「四君子」のひとつとして梅をたたえた。
梅は古代から愛でられていて、漢詩や絵画でもよく用いられる。
中国を原産地とする梅は弥生時代に日本へやってきたとか、奈良時代に遣唐使が持ち込んだとか言われている。
桜と梅の区別がつかない外国人はよくいる。
韓国人に春の花をたずねると、「ツツジの花とレンギョウですが、勿論桜もですね」とのこと。
ネパールでは国花になっているツツジは、日本でも公園なんかでよく見かける。
レンギョウ(連翹)も日本によくあって、ツツジと同じく俳句では春の季語だ。
詩人の高村光太郎が生前にレンギョウを好きだったことから、告別式では棺の上にその枝が置かれた。
それでの4月2日の高村の命日は『連翹忌』という。
ドイツ人に聞くと春を告げる花はクロッカス。
中国の梅と同じくクロッカスは早春に咲いて、観賞用の花で『春サフラン』とも呼ばれる。
スパイスや薬用として使われるサフラン(秋サフラン)と種類は同じだ。
ドイツのクロッカス
ロシア人と東ヨーロッパのリトアニア人と一緒に、神奈川県にある金時山を登っていたとき、こんな小さな花を見つけたリトアニア人が「スノウドロップみたい」と言って写真に収める。
北極に近いリトアニアの冬は長くて寒く、ときには-15度になることもある。
雪を押しのけて姿を見せるスノウドロップは春の到来を告げる花で、これを見ると冬の終わりを実感するらしい。
花言葉が「希望」や「慰め」になっているのはこんな由来による。
*画像もこのリンク先にある。
キリスト教の伝説によると、エデンを追われたイヴが地上で初めて迎えた冬の日、野原の草花が無くなった一面の雪原に嘆いていた所に現れた天使が、イヴを慰めるために降っていた雪をスノードロップに変えたという。
これはロシア人も同じで、スノウドロップは母国では春を告げる花だという。
ただこの花をを人へ贈ると、「あなたに死んでほしい」というとんでもないメッセージになる地域もあるらしい。
七十二候の「草木萌動」や「桜始開」という春の到来の発想は世界中にある。
でも海外では雪に対抗して出てくるような、強さと美しさを兼ねそなえたものが春の花に選ばれることがよくあるようだ。
「雪がとけると春になる」は正しかった。
反論できる?「日本人が、外国人の日本料理をインチキと言うな!」
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