伝統か男女差別か?聖火リレーで愛知の「女人禁制」が物議

 

「女性がたくさん入っている理事会は時間がかかります」と言ったり、女性タレントをブタに例える演出を提案するなど、東京五輪組織委の重要人物が男女平等をうたう五輪憲章に反する「女性蔑視」の言動をして大問題になった。

そんな嵐を乗り越え、何とか聖火リレーをスタートさせたと思ったら、今度はこんな騒動がぼっ発。

毎日新聞の記事(2021/4/1)

愛知の聖火リレーで男性限定区間 舟「女人禁制」理由も批判の声

 

愛知県半田市には五穀豊穣(ほうじょう)などを願って、毎年4月に「ちんとろ祭り」が行われる。
江戸時代から続くこの祭りは男性だけが舟に乗り込んで、おはやしを奏でるというにぎやかなもの。
その「女人禁制」の伝統にしたがって、この舟には男性のランナー、警察官、報道関係者が乗ることになって女性はNG。
それでいま、男女平等を掲げる五輪憲章を理解していないのでは?といった批判が上がっている。

市の担当者はこう話す。

「五輪精神にそぐわないところもあるかもしれないが、祭りはそういうもの。歴史と伝統文化か、最新の常識かの問題だ」

県実行委の説明はこうだ。

「地元の魅力を発信したいという市の意見を尊重した。相撲などと同じ伝統なので、特段問題にはならず承認した」

 

それに対し、大学教授2人はこう疑問を呈する。

「そもそも神事舟をなぜ聖火リレーで使うのか疑問。祭りとイベントを分けて考えるべきだ」

「誰も疑問に感じずに決められてしまったこと自体にジェンダーの視点が入っていないという問題がある」

 

これにネットの反応も賛否両論だ。

・伝統文化はそれと認め
説明と注釈をすればいいだけだろ
・そんなややこしい問題が起こりそうな場所をコースに入れるなよw
・はいはい、じゃ全競技全種目男女混合な
・問題視してるんじゃなくて問題になるのでは?と疑問を呈した形にして曖昧な批判でずるい
・伝統を尊重したいならオリンピックなんかに関わるなよ

 

聖火が市内のどこをどうやって通るかは市がきめることで、地元祭りのPRを意識しすぎて空気を読み間違えたのだろう。
つい最近、女性蔑視で大失敗した事例があって、特に気をつけないといけない時期にそのままゴーサインを出したのはまずかった。

 

地元だけで行うなら伝統重視でいい。
でも、世界的なイベントにこの感覚を当てはめたら問題になるのは必至。
アップルは最近、音声アシスタント機能の「Siri(シリ)」で、女性の声をデフォルトとするのを取りやめることにした。

デフォルトとは債務不履行という不吉な意味もあるけど、この場合は初期設定のこと。
この声の性別については前々から批判があって、たとえば国連は2019年にこんな報告書を発表した。

米CNNニュース(4/1)

音声アシスタントが、女性は愛想がよく、従順で、心を込めてもてなす助力者であり、ボタンひとつや、ぶっきらぼうな声による命令で利用できるという考えを固定化させると警告していた。

Siriの音声、「女性がデフォルト」を取りやめへ 米アップル

 

いまの時代、「男女平等」の空気をはね返すには、かなりの理由がないとダメでビジネスできっと無理。

 

ただギリシャで行われる聖火の採火式は「男子禁制」で、11人の処女であることが参加者の条件だ。
これは男女平等を掲げる五輪憲章に違反していないのか、それとも別の理由があるから知らないけど、問題視されていない。
でも日本のネットでは「二重基準」と突っ込まれてはいる。

 

 

後日談

「伝統文化を守ることは大事だが、五輪にはなじまない」ということでこの問題は結局、女性も船に乗ることになって解決した。

 

 

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1 個のコメント

  • 単に別ルートを通れば良いだけの話。余所は余所。何でもグローバル化しようというのが大間違いの元。

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    今まで、東南アジア・中東・西アフリカなど約30の国と地域に旅をしてきました。それと歴史を教えていた経験をいかして、読者のみなさんに役立つ情報をお届けしたいと思っています。 また外国人の友人が多いので、彼らの視点から見た日本も紹介します。