中国で『黄色』が皇帝のシンボルカラーになった理由

 

コロナ禍のこの一年を色で例えたら、「灰色」と答えた人が一番多かった。

日本経済新聞の記事(2021年4月18日)

灰色の生活、桃色になれ 1000人アンケートに切実な願い

自粛自粛の生活で、スッキリした気持ちになれないという人がいま日本にあふれている。
これからの一年間の願望を色で表すと、安らぎを象徴する「桃色」が最多で、灰色の現状から桃色への未来を望んでいる人がいま多いらしい。

これにネットの反応は?

・去年も今年も灰色、来年も灰色だろう
・てめえらの血は何色だ
・頭が真っ白って感じでは。(´・ω・`)
・いきなり桃色になる雰囲気じゃないな
・今年は真っ青かもしらん

 

こんな感じに人間は色に意味を与えることができる。
個人の気持ちや好みを超えて、ある民族が色で特定の価値観や考え方をあらわすと、それは立派な文化だ。
つーことでここでは、日本の歴史や伝統に大きな影響を与えた中国を見てみよう。

中国では伝統的に黄色が徳の高い高貴な色として尊重されていて、時代や色の濃度などによって違いはあるが、基本的には皇帝だけしかこの色を使うことができなかった。
中国を統治した最初の皇帝(ただし伝説上)が黄帝というのは偶然ではないだろう。

 

黄帝
英語にするとまんま「Yellow Emperor」

 

清の第11代皇帝・光緒帝(こうしょてい:1875年 – 1908年)

 

隋王朝から皇帝(天子)の服となったのが「黄袍(おうほう)」。
今日はウキウキだから桃色の服がいいな~というチョイスは、プライベートなら可能かもしれないけど公務では絶対に無理。

 

北京の紫禁城のように、黄色の屋根と赤い塀(へい)に囲まれたところが皇帝の居住空間で、黄色の瓦が禁止されていた民衆は青い瓦を使っていたという話をガイドから聞いた。

 

中国で黄色は皇帝のためのまさにスペシャルカラー。
明清の時代になるとその考え方が強くなっていったという。
個人的には黄色の家に黄色の服だと精神的に病みそうなんだが、中国でこの色は権力の象徴だったから、黄色をまとって人々の前に姿を現すのも皇帝の仕事のうちだったはず。

では、なんで黄色が至高の色となったのか?

その理由としてよく挙げられるのは五行思想だ。
この中国の古代思想によると、世界にあるすべてのものは木・火・土・金・水の5種類の元素からできていて、相互に影響を与えている。
春夏秋冬の四季が移り変わるのも五行思想で説明できる。

約2000年前にできた漢字辞典の説文解字では、土について「地の萬物を吐生する者なり」という説明がされている。
この5元素の中でも、人間にとって最重要となる農作物をはじめ万物を生み育てる土(ど)は特に重視されていたようで、下の図のように中央に配置されている。

 

 

世界の中央にある色が、そのまま皇帝のシンボルカラーになるのはもはや必然。
順番としては五行思想で黄色が皇帝の色となって、その色の服や屋根ができて、さらに黄帝という伝説的な皇帝が名付けられたのだろう。

 

 

 

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2 件のコメント

  • > この5元素の中でも、人間にとって最重要となる農作物をはじめ万物を生み育てる土(ど)は特に重視されていたようで、下の図のように中央に配置されている。
    > 世界の中央にある色が、そのまま皇帝のシンボルカラーになるのはもはや必然。
    > 順番としては五行思想で黄色が皇帝の色となって、その色の服や屋根ができて、さらに黄帝という伝説的な皇帝が名付けられたのだろう。

    ところで、土の色を「黄色」で表すのは必ずしも世界標準の考え方ではないと思います。日本でもそうですが、滋養分に富んだ土の色はむしろ「黒」ですよね。これを中国では「黄色」としたのは、たぶん、黄砂の生じる砂漠地帯から流れてくる「黄河(=黄色の粘土を多く含んだ水の流れる河)」の影響ではないでしょうか。実際に黄河の川の水は真っ黄色です。黄河の周辺は、昔は豊かな穀倉地帯であったし。(エジプトの洪水と同じような事情か?)
    それともう一つ、黄色という色は「黄金」を表す色であったことも、黄帝=>皇帝と関係しているのかもしれません。でもこれはどっちかと言えば、西アジア起源で西域を通じてやって来た騎馬民族の影響かも。

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    今まで、東南アジア・中東・西アフリカなど約30の国と地域に旅をしてきました。それと歴史を教えていた経験をいかして、読者のみなさんに役立つ情報をお届けしたいと思っています。 また外国人の友人が多いので、彼らの視点から見た日本も紹介します。