今回はベトナムの話ですよ。
なのでまずは外務省ホームページ「ベトナム社会主義共和国(Socialist Republic of Viet Nam)基礎データ」にあるこの国の基本を押さえておこう。
面積:32万9,241平方キロメートル
人口:約9,762万人(2020年)
首都:ハノイ
民族:キン族(越人)約86%、他に53の少数民族
言語:ベトナム語
宗教:仏教、カトリック、カオダイ教他
東西の日本と違ってベトナムは南北に長い国だから、一般的に北ベトナムと南ベトナムに分けられる。
日本人も好きな麺料理のレーザーラモン、ではなくてフォー
日本でベトナムというと春巻きやコーヒー、それに最近ではバインミーといった食文化が有名で、わが浜松ではここ数年、ベトナム料理屋がいくつもオープンした。
でも残念ながらここ数年、『ベトナム人犯罪』という嫌な言葉を聞く機会が増えてきた。
これは民族性とは関係なく、そもそも在日ベトナム人は増加傾向にあるのだから、犯罪件数がそれに比例するのはある意味仕方ない。
だからといって、していいわけではないが。
でもベトナム人の犯罪によって、間接的にほかの在日ベトナム人が被害にあっているのも事実。
そういうニュースが報道されるとネットでは、「またベトナム人か…」という日本人の書き込みが大量にされて、その件と無関係のベトナム人が風評被害を受けることになる。
それとは別でベトナム人犯罪が日本で報道されると、「それは北ベトナム人のしわざ」といったベトナム人の書き込みをけっこう見かける。
すると当然、「いい加減なことを書くな!証拠をだせ!」と北ベトナム人が怒りだして、バトルがぼっ発することもめずらしくない。
日本の大学に通うベトナム人(北部出身)と、そんな南北対立の話をしたことがある。
日本でも、関係がよろしくない都市や地域はあるもんだ。
東京をライバル視する大阪人はよくいるし、4年間の京都住みの経験から、京都人は大阪人と一緒に『関西人』とまとめられるのを嫌う。
でもベトナム人いわく、ベトナムの南北対立はそんなもんじゃねえ。
もっとずっと深刻だ。
ただ南ベトナムの人が北をライバル視、ときには憎んでいるけれど、北ベトナムの人は南をあまり意識していないと言う。
「ベトナム人の犯罪が起きたときに、「あれは南ベトナム人のしわざだ」なんて書き込む北の人はいませんよ」というのが彼の感覚。
このへんは、大阪をライバル視する東京人が少ない事情に似ている。
東京は神奈川をより強く意識するらしい。
南ベトナム人がそんな複雑な気持ちを持つ決定的な理由は、きょうの記念日をみればわかる。
4月30日は「南部解放記念日(ベトナム解放記念日)」というベトナムの祝日だ。
約10年にわたるアメリカ軍との戦争は1975年4月30日、北ベトナム軍がアメリカの傀儡国家、ベトナム共和国の首都サイゴンを手に入れて終わった。
この出来事を現在のベトナムは「サイゴン解放」と呼ぶ一方、アメリカでは「サイゴン陥落」と言う。
日本では後者が多いという印象。
南ベトナム解放民族戦線(北ベトナム軍)による攻撃から逃げる南ベトナム市民
でもベトナム人の中にも「解放」ではなく「サイゴン陥落」と言う人がいて、当然それは南部に多い。
これによって仕事を失った南ベトナム人はたくさんいたし、ボクがベトナム旅行で会った南の人は、親からそのときの辛さをたっぷり聞かされて、自然と恨みがうつってしまったと話す。
もちろん南ベトナム人が持つ北へのイメージは、世代や個人によって大きく違うから、ひとまとめに表現することはムリ。
ボクのまわりでも北と南の人たちはよく集まって食事会を開いたり、一緒に遊びに行っているから、「仲良きことは美しきかな」以外の言葉が見つからない。
それに南部出身のベトナム人にきくと「政治でいえば北は嫌い。でも個人で付き合うなら関係ない」とみんなが言う。
ということは、昼間は北ベトナムの人と楽しく過ごして、アパートに戻ってからベトナム人犯罪のニュースを見ると、「あれば北ベトナム人のしわざ」と書き込む南の人がいるかもしれない。
さすがにそこまでの闇は見えないけど。
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まあでも、なんのかんの言ってもベトナムの人々は北も南も、自分たちが同一民族であることは認識していますからね。ベトナム式漢字(「チェノム」でしたっけ?)を廃止して、旧宗主国フランスのアルファベットに文字を統一したのも、北の隣国である中国と一線を画して、自民族独立性を国民に再認識させることが目的なのでしょう。
北ベトナム人と南ベトナム人の間に横たわるかもしれない反感も、さほどのことはないと思いますよ。
それに比べて、ミャンマーやインドネシアのように多民族ごちゃまぜの国は大変だ。