【誤解される日本】ノーフィニングだし、クジラ肉も少ない

 

韓国政府による動物保護の方針に、住民が反発している。

政府がミンククジラを海洋保護生物に指定しようとしていると知り、そのクジラの肉を食用に販売している人や、韓国固有の文化と考える人たちが「受け入れられない」と猛反発。
この政府の動きはどうやら“外圧”によるものらしい。

朝鮮日報の記事(2021/05/20)

海洋水産部の関係者は「国際社会では鯨を保護する規制を強化する流れにある」とした上で「混獲された鯨の流通を今後も続ければ、米国や欧州向けの水産物輸出に悪影響が出る恐れがある」と説明した。

鯨肉は販売できなくなるかも…長生浦住民ら怒り /蔚山

 

韓国政府としては、クジラ肉の流通禁止を求める動物保護団体の声も気になる。
こうしたクジラ漁に反対しているのは主に欧米で、そして韓国にとって「国際社会」の90%は欧米の国々が占めている。(たぶん)

欧米からクジラ漁の抗議を受けている事情は日本も同じだ。
でもこれは文化の問題だから、存続か廃止かはその国の人間が決めればいい。海外から、あーだこーだと言われたら、「バカめだ。バカめと言ってやれ」でいい。
といっても、やっぱり欧米社会の声は無視できないからむずかしい。

 

いま世界的に保護が叫ばれているのはクジラだけじゃなく、つい最近、イギリス政府がコレの輸入を禁止すると発表しニュースになった。

 

 

サメのヒレを乾燥させた中華料理の食材、それがフカヒレ。
*フカ(鱶)もサメ(鮫)も同じ魚のことなんだが、フカのほうは大きめのサメを指すことが多い。

高級食材で有名なフカヒレのスープを食べて飲んだところ、はっきり言って味はイマイチ。
値段を考えたら、(他人の金でもない限り)二度と食わん。

 

フカヒレのスープ

 

イギリス人が批判しているのは、フィニング(シャークフィニング)という行為。
サメを捕まえたらそのヒレだけを切り取って、残りはポイっと海に投げ捨ててしまう。
金になるヒレをできるだけたくさん手に入れるには、それ以外のデカい図体は捨てたほうが“効率的”だ。

でヒレを失ったサメはどうなるか?
うまく泳ぐことができなくなるから、海の底に沈んだり窒息死したり、他の捕食者によって食べられてしまう。

Unable to swim effectively, they sink to the bottom of the ocean and die of suffocation or are eaten by other predators.

shark finning

 

日本語版ウィキペディアに「フィニング」の項目はなく、「ふかひれ」の中でほんのすこし触れているだけ。
対して英語版では独立した項目が立てられていて、かなり長い説明がされている。
日本と欧米では、意識や関心の大きさがまったく違うことがよくわかる。
2010年にハワイはフカヒレの所持、販売、流通を禁止した最初の州となった(ban the possession, sale, and distribution)という記述を読むと、なんか日本社会における覚せい剤のような扱いだ。

 

フィニングという鬼畜行為はその残酷さから、欧米を中心に世界中で非難の対象となっている。
イギリスはこれに強く抗議するため、フカヒレの輸入禁止をきめたのだ。
フカヒレ以外にも、ガチョウやアヒルに無理やりエサを食べさせ、肝臓を肥大化させて作るフォアグラの販売禁止も検討するという。
ちなみに世界三大珍味といえば、フォアグラとトリュフとキャビア。

これに日本のネットの声は?

・屠殺された豚肉牛の映像見て平気なやつだけ食べなさい
・知能の尺度で優劣つけるやつらが明らかに知能の劣る鮫を保護して牛豚を殺すのはおかしい
・ヒレだけ切って他は捨てるとか今でもやってるの?
・でも、お前らフランス人はウサギの肉食うって聞いたら引くだろ?
・インスタでフカヒレのタグ付けたらサメの死骸山盛り画像を貼られたわ

 

 

香港でおこわれたフカヒレ(やサメ漁)への抗議活動
下は何かかわいい。

 

 

数年前、新婚旅行で日本へやって来たイギリス人のカップルから、

「私たちは日本が大好き。でも、ケセンヌマのフィニングには心が痛む。あれは本当に残酷だ」

という話を聞いた。

ああフィニングかあ、うんフィニングね。
でフィニングってなに?と彼らにきいて、初めてそのことばを知ったでござる。
結論から言うと、フカヒレで有名な気仙沼市ではサメ漁はおこなわれているが、フィニングはしていない。
調べてみたら、日本でフィニングは禁止されているからできるワケないのだ。
むしろフィニングとは逆の精神で、気仙沼ではサメの肉をはんぺんなどに加工しているし、皮は財布の材料にする。骨もサプリメントの原料になって、可能な限り多くの部分を利用している。

ということで気仙沼はフィニングに反対の立場であることをイギリス人に話すと、「そうか。なら良かった」と笑顔を見せた。

 

7年前、ある日本企業が「残酷なフカヒレ漁反対キャンペーン」をおこなうと発表すると、気仙沼の水産関係者から、「サメ漁に対する根拠のないマイナスイメージが広がる」と怒りの声が上がった。

毎日新聞の記事(2014年05月28日)

東日本大震災の津波で漁業・水産加工施設が大きな被害を受けた同市は、特産のサメ製品を復興の起爆剤の一つに位置づけており、経済的な打撃を懸念している。

サメ漁:気仙沼の漁師ら「反フカヒレキャンペーン」に憤り

気仙沼や日本の他の場所で、フィニングをしているとカン違いしている人は国の内外にけっこういる気がする。

 

フカヒレを乾燥させているところ

 

そのイギリス人カップルと一緒に、浜松に住んでるアメリカ人と夕食を食べたときのこと。
「日本ではフィニングがおこなわれていないと聞いて安心したよ」と話すイギリス人に、そのアメリカ人は「日本はかなり誤解されている」と言う。

「自分も来日する前まで、日本ではクジラ漁が盛んで、その肉は全国的に食べられていると思っていた。チキンやビーフみたいにね。でも実際はまったく違った。クジラの肉なんて数年に一度見るぐらいで、一般的には流通していないし、クジラ漁をする地域も本当に限られている。欧米メディアの記事で情報を得る人たちは、きっとこういう現実に気づいていない」

そんな話を聞いてイギリス人カップルも、気仙沼をはじめ日本について誤解していたことはあると言う。

ということで、日本はフカヒレを生産してもフィニングはしていないこと、クジラの肉を食べてもその量はとても少ないということを、もっと世界に発信するべき。
誤解に基づくバッシングほど有害で迷惑なものはない。そして読者をそう誘導する欧米のメディアはきっと多い。
「国際社会では鯨を保護する規制を強化する流れにある」と韓国政府は言うのだが、韓国のクジラ漁に対しても誤解や先入観があるのでは。

 

 

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今まで、東南アジア・中東・西アフリカなど約30の国と地域に旅をしてきました。それと歴史を教えていた経験をいかして、読者のみなさんに役立つ情報をお届けしたいと思っています。 また外国人の友人が多いので、彼らの視点から見た日本も紹介します。