【殺してごめん】外国人には謎。日本人だけの信仰・害虫供養

 

明治時代、それまでにはなかった海外由来の恐怖の感染病・ペストが日本で流行して、人びとを震え上がらせた。
「ペスト菌はネズミが運ぶ。ネズミを駆除しろ!ヒャッハー!」となって、日本で多くのネズミが殺されてしまった。
ちなみに東京市は1匹5銭で買いとっていた。
くわしいことは前回の記事を。

【思わぬ文明開化】東京で“はだし禁止令”が出された理由

当時の様子はよく分からないけど、ネズミからしたら“虐殺”だったはず。

 

とても日本人らしいと思うのはこの“大量虐殺”のあと、ネズミを鎮魂するための石碑を立てたこと。
それは東京・渋谷の祥雲寺にある。
殺害されたネズミがすみやかに成仏(か?)できるように、「数知れぬ 鼠もさぞや うかぶらむ この石塚の重き恵みに」という歌が彫られた大きな慰霊碑が立てられた。

明治三十二年(1899)から数年間にわたりペストが流行したとき、 予防のために殺された鼠の霊を供養して明治三十五年に建てられた珍しい動物慰霊碑です。

祥雲寺

そのおかげか、大正15年を最後にペストは日本からなくなった。

 

 

殺害してから、手を合わせる。
日本人には昔からそんな信仰がある。

犬や猫なんかのかわいらしいペットと違って、蚊やゴキブリなどの害虫やネズミなんかは見つかったら駆除される。
「天は人の上に人をつくらず」という話は昆虫レベルでお花畑なのだ。

すぐれた殺虫剤を開発するにはその効力をテストしなければならず、業界大手のアース製薬は日々、多くの害虫さんに犠牲になってもらっている。
社員はそれを嬉々としてやっているサド集団ではなく、深い罪悪感を感じていて毎年12月に兵庫県にあるお寺で害虫の供養をおこなう。

日経ビジネスの記事(2018年10月22日)

2017年は研究開発部員の正社員ほぼ全員にあたる約80人が参列した。本堂にはハエ、カ、ゴキブリ、マダニなどの7種の「遺影」を並べ、1人ずつ焼香をし、手を合わせる。

アース製薬の懺悔「いっぱい殺して、ごめん」

 

「いっぱい殺して、ごめんなさい」
「(実験用の害虫の)おかげさまで商品開発ができています。商品開発がうまくいきますように」

という懺悔と願いを込めて社員は手を合わせているとか。
ちなみにこの研究所では、100万匹のゴキブリと1億匹以上のダニなどを飼育している。
見学は全身全霊で拒否させてもらう。

古代中国の思想に、敵国の力を利用して他国をおさえて自分が利益を得るという「夷を以て夷を制す」がある。
人間が安全で住みやすい環境をつくるためには、害虫を駆除しないといけない。そのためにの武器を開発するには、多くの害虫の命をうばう必要がある。
「いっぱい殺して、ごめん」で相手が納得するかわからないけど、これは必然だ。

このニュースにネットの反応は?

・へー、虫の供養なんてやってたのか。しかも30年前から。
・動物愛護の人って殺虫剤とかも使わないのかな?
・参列したいとは思いません・・・
・遺影って。まあでも何かしら無きゃダメなのか。

 

いままでアメリカ人、イギリス人、タイ人、インド人、トルコ人、ブラジル人などの外国人に聞いてみたけど、こういう「害虫供養」をしている国はひとつもない。
キリスト教・仏教・イスラーム教のさまざま文化圏の人でもこの発想が理解できなかった。
どこ国でもゴキブリや蚊を殺虫剤で殺すことはあるけど、会社がお金と時間をかけて害虫を供養する理由がわからない。
日本人は基本的にとてもまじめだけど、ときどき訳のわからないことをすると外国人はよく言う。
「害虫供養」もそのひとつだ。

 

 

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8 件のコメント

  • 一寸の虫にも五分の魂ってことわざがあるよなぁと思ってちょっと検索してみたら「The fly has her spleen and the ant has gall.」という英語のことわざが紹介してありました。 でもこれって「魂」じゃあないですよね。
    国が違うとゴキブリもほかの虫と同じただの虫と思う国があるのと同じですかね。 
    「魂」という概念の感覚の違い。
    そうそう~アースやキンチョーでは新人さんには避けて通れない人体実験があるそうです。
    それは~蚊にかまれる役! 蚊よけや虫刺されの商品開発のためなんだそうです。 大変ですね(>_<)

  • 日本人の、虫あるいは無生物(針とか手拭とか)に対する供養の慣習は、仏教の不殺生戒、先祖供養、伝統的な怨霊信仰、古いモノにつく付喪神(つくもがみ)、妖怪伝承、などがごっちゃになって現代に伝わっているのかもしれないですね。だって、ぬりかべ(壁のお化け)や一反木綿(褌みたいなお化け)なんて、海外じゃあり得ない。
    またたとえば、欧米人にとって、「秋の夜の虫の声」は単なる雑音に過ぎず、本来ならば「あっても無くても構わない」背景雑音なのだそうです。つまり彼らにとって「虫」は「動物」の仲間に分類されていないのか? 単なる動く物体? そういえば、ハリウッド映画で夜に屋外で刑事が見張っているシーンなど、虫の声が背景効果音で入っているのを聞いたことがないですね。日本映画であればそんなのたくさんありますけど。

  • 日本の仏教に「草木国土悉皆成仏」という言葉があります。
    草木や国土のようなものでさえ仏性があって、成仏するということです。その意味では人間と対等ですけど、キリスト教文化圏ではこんな考え方は伝統的にはないでしょう。
    その人体実験は最悪ですね。
    害虫だけではなくて研究員も犠牲になっているとは。頭が下がります。

  • おっしゃる通りでこれは複数の混在したものだと思います。
    外国人の場合、害虫やモノは論外としてペット供養もほとんどないし、あっても日本ほど本格的ではないと言いますから、これは本当に独特のものでしょう。

  • 大学に実験動物の供養塔があって一年に一回関係者一同がそこで小さな供養式みたいなものをしていたことを思い出しました

    人間と同様に動物にも魂があるから供養をしたり感謝したりって感覚は動物愛護の観点からも残り続けてほしいですね

  • それはとても興味深いです。
    そういう供養塔があるのは日本以外にどれだけあるんでしょうね。
    害虫でも実験動物でも犠牲になってもらった命には手を合わせる信仰や習慣は尊いですよ。

  • もう一つ思い出すのが、クジラ漁の町にある「クジラの供養塔」についてです。こんなもの・考え方が日本にはあることを、おそらく、クジラ漁反対派の欧米人は全く知らないのでしょうね。
    欧米人にとって、動物とは、人間に同等の「仲間」や「ペット」であるか、そうでなければ、人間に奉仕する「奴隷・下働き」かあるいは「食われるための家畜」、さらには「人間に害をなすもの」のいずれかしかないのでしょう。だからあんなにクジラ漁に対してヒステリックに反対をするのだと考えます。

  • クジラについていえば、日本にきて初めて「日本人は想像以上にクジラを食べていない」と驚いた外国人が多いです。
    海外メディアの報道から、まるで牛や豚のように日本全国で日常的に食べられているように考えていたけど、日本ではクジラの肉を提供するレストランがほとんどない。
    クジラ食は例外的ということを伝えるべきでしょう。

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    今まで、東南アジア・中東・西アフリカなど約30の国と地域に旅をしてきました。それと歴史を教えていた経験をいかして、読者のみなさんに役立つ情報をお届けしたいと思っています。 また外国人の友人が多いので、彼らの視点から見た日本も紹介します。