何ともならないとは分かっているけど、でも何とかしてほしい新型コロナウイルス。
2020年2月26日の朝7時の時点で、国内の感染者数は170人で死亡者は1人となっている。
ちなみに国外の感染者は約8万人、死亡者は約2700人という状況だ。
北海道から沖縄まで全国各地がこのウイルスに襲われていて、神奈川・愛知・長野で感染者が出たから、ここ静岡もきっと時間の問題だ。
*このあとやや閲覧注意
日本は衛生管理や医療の面では世界的な先進国のはずだけど、ウイルスを抑えることはできないし(現時点では)、社会的に混乱や不安も広がっている。
いまは新型肺炎だけど、明治の日本を襲ったヒトからヒトへの感染症はペストだった。
皮膚が黒くなって死に至る人が多いことから、ヨーロッパでは「黒死病」とも呼ばれたペストの恐怖はこの写真を見ただけで伝わるはず。
くわしいことはこの記事を。
ペストは日本に存在しなかった病気で、そのウイルスは海外からもたらされた。
1899年(明治33年)に日本で流行して神戸、大阪、浜松などで45人の感染者がでて、40人が死亡した。
戦慄の致死率だ。
ペスト菌はネズミがもたらすものとされたことから「ネズミ狩り」がおこなわれて、東京市の場合は1匹5銭で買い上げていた。
ペスト騒動の思わぬ副作用で、日本人が「文明開化」のレベルをひとつ上げたのもこのころ。
1901年に警視庁が「ペスト予防の為め東京市内に於ては住屋内を除く外跣足(はだし)にて歩行することを禁ず。」という裸足(はだし)禁止令を出したのだ。
いまでは裸足で外に出かけることはアブノーマルだけど、このころの日本では首都でも靴や下駄をはかずに出歩く人が多かったということだろう。
裸足の外出が変な目で見られるようになったのは明治以降だ。
これは明治期に西洋文化および西洋医学(破傷風予防など)の考え方が流入して以降の傾向である。
でも、「はだし禁止令」を出した日本政府の真の目的は別にあったらしい。
表面上は衛生的ではないというのが主な理由ですが、未開の蛮風たる裸足をなくすことで首都の体面を重んじるという動機が陰では働いていたということです
開国百年記念文化事業会編『明治文化史. 第13巻』
外国人の目を意識した「恥の文化」によるものだった。
ペストがはやる少し前、1885年(明治18年)にシドモアというアメリカ人がやって来た。
度々日本を訪れた親日家であり、日本に関する記事や著作も残している。ワシントンD.C.のポトマック河畔に桜並木を作ることを提案した人物である。
日本人が欧米に学んで、必要なところを吸収して日本を急速に近代化させる様子を見て、シドモアはこう驚いた。
日本の陸海軍の創設、警察機構、行政組織は諸外国の最高例を範とし、また教育機関は完璧で、米国、英国、ドイツも制度から得た賞賛すべき最高結合体となりました。
さらには郵便制度、灯台、電信、鉄道、病院も西洋と同じ方式を採用しています。
すべてこれらは、緩慢な成長、遅鈍な発達、悠長な必要性の所産ではなく、ほとんど自発的に日本帝国の魔術的指揮棒の一振りで完成させたのです
「シドモア日本紀行 (講談社学術文庫)」
でも庶民の頭の中は江戸時代から進歩していない部分もあって、「日本帝国の魔術的指揮棒の一振り」でも、国民に靴をはいて外出させることは徹底できなかった。
政府ができないことでも、感染症の恐怖をもってすれば可能になることもある。
でも、今回の新型肺炎パニックではポジティブな副作用が見当たらない。
こちらの記事もいかがですか?
日本人「外国人は汚れている!」② イギリス王子にお祓い・神風連の乱
ポジティブな副作用としては中国一極依存から脱する動きができるのではないかということです。
多くの企業が中国から部品や商品を国内に持ってこれず打撃を受けているので、今後は生産国を分散させたり国内に拠点を移したりとリスク管理が進むと思います。
中国一国にしがみつくところも出てくるとは思いますが、それはそれです。
好むと好まざると、これからそういう動きをしないとダメでしょう。
静岡も中国頼みでかなりのダメージを受けました。