感謝の気持ちでも差別は差別：タイ人・韓国人への“つり目”

差別とは気持ちではなくて、行為が問題になるのだ。

スポーツの国際大会で、ヨーロッパ人選手がアジア人選手に対して人種差別行為をしたとして、いま世界的に批判が上がっている。

６月１日にイタリアで行われた女子バレーボールの試合でタイチームとの対戦中、セルビアの選手が人差し指でまぶたを引っ張るいわゆる「つり目」をした。
これは東南・東アジアの人たちへの侮辱行為で人種差別にあたる。
騒動が起こるとセルビアの選手は、そのとき仲間に「タイチームのような守備をしよう」と伝えたかっただけだと釈明。
タイ人を差別する意識はまったくなかったし、非礼なことをするつもりもなかったという。
謝罪を受けてタイの選手はもう許すと言っているのだが、国際社会はそう甘くない。

セルビアのバレーボール連盟も公式に謝罪した。
しかし、謝るのなら誤るな。
ひたすら頭を下げていればよかったのに、「事を荒立てないでください」と余計なことを言ったため、「これは謝罪になっているのか？」とさらに批判を集めてしまった。
鎮火するつもりが燃料を投下してしまい、さらに炎上させるという惨事は世界中である。

いま世界はセルビアの選手や連盟の願いと正反対の方向へ動いている。
国際バレーボール連盟（FIVB）に対して、人種差別行為を行ったセルビア選手を処罰するよう求めるネット署名活動が始まった。

”初犯”ならまだよかったけど、セルビアの女子代表チームには“前科”がある。
2017年に集合写真で複数の選手が「つり目」のポーズをしたとき、これは2018年に日本で行われる大会を意識したもので、「日本人への差別的行為だ」という批判を受けた。
失敗したっていいじゃないか、人間だもの。
それはそうなんだが、同じ失敗を同じようにくり返すのはダメだろ。

これに日本のネットの声は？

・アジア人に対しては軽い気持ちでこういうことやるんだよな
・吊り目　糸目　狐面
日本人には萌え要素です
・なんで差別なのか意味がわからんよなぁ
嫌だというならタレ目ポーズで返してやればいいんじゃないw
・マジでアジアバカにしてたんかｗ
・対抗してセルビア女性を小バカにするポーズを考えたいが
美人すぎてつらい

悪意なく「つり目」をして、それが人種差別行為となってあとで大騒することはたまにある。
２０１８年のサッカーW杯ロシア大会で韓国がドイツに勝利したことで、結果的にメキシコの決勝トーナメント進出がきまった。
狂喜乱舞・歓喜雀躍したメキシコ人は韓国に感謝の気持ちをこう伝える。

@Telemundo, don’t let your host make racist gestures on the air. 😐 Thanks!@UnNuevoDia #MundialTelemundo pic.twitter.com/01lCzOULvP

— Jimmy Sanchez (@JimmyJam99) June 27, 2018

このときのメキシコ人は韓国人に対して１００％感謝の気持ちしかない。
差別やバカにする意識は１ミリもなかったけど、でも残念ながら無知だった。
「つり目」はアジア人への人種差別のジェスチャー（racist gestures）という指摘が上がって、みんなSNSにアップした投稿を一斉に削除、そして「韓国のみなさんごめんなさいでした」というメッセージへ変わった。

一般人ならそれで済むけど、テレビ局のアナウンサーは謹慎処分をくらった。

テレビ中継されている国際試合で差別行為を行ったら、チームや自分があとで処罰を受けることは知っていたはずだから、あのセルビア人選手にタイ人への差別意識があったとは思えない。
でも、軽くバカにする気持ちはあったかも。
上のメキシコ人の場合は韓国人には感謝や善意しかなかった。
でも人種差別では気持ちよりも行為が問題視されるから、相手を差別したり蔑視したりする悪意や意識がなくても、「つり目」のポーズなんかをしたら一発アウト。

英BBCの記事によるとメキシコでの騒動があったとき、ある韓国人がツイッターでこう言った。（29 June 2018）

“Saying the gesture was racist is okay. But if you go beyond that and start saying [to Mexicans that] ‘you are even looked down by the US’ then you yourself become a racist.”

Mexico and South Korea World Cup celebrations soured by racist gestures

メキシコ人のジェスチャーが人種差別だと言うのはいい。
でも指摘を超えて、メキシコ人に「おまえたちもアメリカから見下されている」なんて言い始めたら、自分も人種差別をする側になったということだ。

「タレ目ポーズで返してやればいいんじゃない」なんて、差別に差別で返すと待っているのはカオス。
指摘や批判だけに留めておいたほうがいい。