【世界で日本だけの文化】幸運の“白い生き物”が生んだ元号

 

このところ、日本で「白い生き物」がいくつも発見され話題になっている。
先月5月には兵庫県豊岡市の農業用水路で白いナマコが見つかり、いまは水族館「城崎マリンワールド」で展示されていて「かわいい」との高評価をゲット。

京都北部の海(京都は海に面している!)では3月に白いナマコが、4月にはダイナンギンポ(30㎝ほどの太くて長い魚)が見つかり、いまはそれぞれ大切に育てられている最中だ。
目立つ白色は外敵に襲われやすいから、そういう白い生き物は生き残るのがかなりむずかしい。
そんな毎日がサバイバルのような白系生物は、日本では昔から「幸運の象徴」と考えられ大事にされてきた。

今回発見された白いナマコは京都府の水族館『丹後魚っ知館』に届けられ、飼育担当の原口さん(36)は多くの人に幸運のおすそ分けをしたいと考えているようだ。

京都新聞の記事(2021年5月23日)

新型コロナウイルスの影響で現在は休館中だが、「開館できるようになれば、見に来た来場者に幸運を届けてほしい」と話す。

「幸運の象徴」白い生き物、京都の海で相次ぎ発見 ナマコやダイナンギンポ

白いペンギン
遺伝情報の欠損によって白い個体(アルビノ)が生まれることがある。
今回のもたぶんこれ。

 

日本人は白を特別高貴な色と考えていた。
『古事記』には神が白い鹿や猪になったり、死んだヤマトタケルが白鳥になったという記述があるし、奈良時代には天皇だけが白い衣服を着ることができた。
もともと敵に襲われやすいハードモードな一生を送っているから、白い生き物が人間に見つかるのはすごく珍しい。
だからそんなレアものが発見されると、「これはめでたい!」ということで元号が変更されることもあったのだ。
大化6年(650年)にいまの山口県で白いキジ(雉)が見つかって朝廷に献上されたことから、元号は大化から「白雉」へ変えられた。
「白系生物が見つかったから変えちゃいました」系の元号はこれが日本最古の例。
ほかにも白い亀が発見されたことで神亀、宝亀、嘉祥、仁寿に改元にされたし、白鹿によって天安や元慶という元号ができた。

 

時代に名前(称号)をつける元号は中国でうまれた文化で、それが日本に伝わると本邦初の元号「大化」がつくられた。
この制度はベトナムや朝鮮半島にも伝わり、それぞれ元号を使っていたけれどやがて廃止され、本家の中国も元号を使わなくなったから、いまでもこの文化を保っているのは世界で日本だけになった。
中国では失われた制度だから、日本はぜひこの文化を守ってほしいと言った中国人もいる。

現代では一人の天皇に一つの年号(元号)をさだめる一世一元の制が一般的なんだが、それは明治時代から始まった、日本の歴史の中ではかなり新しいやり方だ。
中国皇帝のように「統治者がその時代・時間を“支配”していた」というワケでもない。
飛鳥~江戸時代まではめでたい生き物が出たり、疫病や災害など不幸なことがあって、国民の気分を一新したいときに元号が変えられることもよくあった。
だから、「幸運の象徴」である白い生き物がいくつも見つかった今回も、むかしなら元号を変えるに十分な理由になったはずだ。
この日本だけの文化はこれからも大事にしていきたい。

 

 

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今まで、東南アジア・中東・西アフリカなど約30の国と地域に旅をしてきました。それと歴史を教えていた経験をいかして、読者のみなさんに役立つ情報をお届けしたいと思っています。 また外国人の友人が多いので、彼らの視点から見た日本も紹介します。