【歴史の立て直し】孫基禎にみる、日本人と韓国人の発想の違い

平和と国際協調を理念とする五輪を間近にして、競技とはまったく関係ない争いがぼっ発したらしいですよ。

中央日報日本語版の記事（2021.06.17）

「孫基禎選手」がなぜそこに？　…日本オリンピックミュージアムの荒唐な展示

といっても日本はこのクレームを相手にしていないから、争いというより独り相撲と言った方が正解。
では、その発端となった孫基禎（ソンギジョン、そんきてい）という人物について簡単に紹介しよう。

孫は日本統治時代の1912年に生まれて、1936年のベルリン五輪では日本の選手として出場し金メダルを獲得した。
戦後の韓国では、1988年のソウル五輪で聖火ランナーをつとめた国民的英雄だ。
でもだからこそ、ベルリンオリンピックに「日本代表」として出場したことに、国民感情としては納得できない。

といってもこのとき朝鮮半島は日本の統治下にあって、韓国という国家は存在していなかったし、国際オリンピック委員会（IOC）は民族ではなくて国単位で考えていたから、世界基準でいえば孫基禎は日本代表以外の何者でもない。
＊孫自身は自分を韓国（朝鮮）人と考えていた。

「彼の国籍が韓国だったら良かったのに！」と強く願うのはいいとしても、その気持ちを歴史的事実にしようするのが隣人さんの悪いところ。
IOCの公式記録では孫の金メダリストとしての国籍は日本となっている。
それに不満な韓国・北朝鮮は自国籍と表記するよう要請をしているが、IOCの公式記録に変更はない。日本の金メダリストのままで、過去を変えようとはしない。
これは現在の価値観や感情で、変更していいものではないから。

だから、ベルリンにある孫基禎の像にも「日の丸」が刻まれている。
でもこれだと孫が「日本代表」になってしまい、韓国国民の情緒と合わないから、これを無理やり「韓国代表」に変えてしまった国会議員がいた。
1970年に韓国のパク・ヨンロク議員が夜にベルリン五輪記念スタジアムに不法侵入し、約５時間かけて、記念碑に刻まれた「Japan」を金づちノミで削って「Korea」と彫り込んだ。
そのあとの展開がコレだ。

後に気づいた職員が警察に通報して、ドイツ警察は不法侵入および公共財産破壊の容疑で朴の逮捕状を発行したが、すでに朴は韓国へ出国していた。なお、ドイツ当局は後に記念碑の国籍を「Japan」に戻した。

孫基禎

国際常識だと違法行為なんだが、韓国でこれは国民感情に合っているから“義挙”になる。

先ほどの中央日報の記事（「孫基禎選手」がなぜそこに？　…日本オリンピックミュージアムの荒唐な展示）はこういう認識が前提になっている。

日本オリンピックミュージアムが孫基禎を、「自国の選手のように紹介している事実が明らかになった」と韓国は怒るけど、IOCの公式記録で「日本の選手」となっているのだから仕方ない。
これが歴史的事実だ。
それは韓国の歴史認識からすると、根拠のないバカげた主張（荒唐）になるから、「孫基禎は『韓国人』という事実を世界にきちんと発信すべきだ」となる。
日本の展示はその世界（IOC）の認識に沿ったものなのに。

今回の騒動を、韓国にくわしいジャーナリストの黒田勝弘氏は産経新聞のコラム「ソウルからヨボセヨ」でこう書く。（2021/6/19）

韓国では「歴史の正しい立て直し」といって現在の観点から過去を裁き、事実を変えたり消したりすることがよくある。日本の五輪ミュージアムもそんな韓国人見物客の〝愛国パフォーマンス〟に要注意ですよ。

金メダルの歪曲　マラソン孫基禎をめぐるイチャモン

韓国では国民感情が最優先されるから、そのときどきの基準で過去を作り変える。
この「歴史の正しい立て直し」という発想は韓国人の大きな特徴だ。
最終的な解決を確認した慰安婦・元徴用工問題も、あとになって「まだ解決していない！」と言い出して、事実を変えたり消したりする。
一方、日本人は「歴史の立て直し」という発想をしないから、一度約束したことについては、あとから内容を変えることを嫌う。
国会議員がよその国に行って、記念碑の内容を勝手に変える違法行為なんてしたら、それこそ国の恥。しかしあちらではそれは正義の行為。
孫基禎をめぐっては、日本人と韓国人の価値観や発想の違いがよく分かる。