人類最後の秘境といわれる大穴、人はそれを「アビス」とよぶ。
孤児の少女・リコが“探窟家”だった母親と会うため、ロボットのレグと一緒にその巨大な穴に潜り込み、不思議な生物と出くわしながらもアビスの探検をすすめる。
そんな日本アニメ『メイドインアビス』がハリウッド映画になることがきまった。
といってもまだその発表があっただけで、いつ上映されるかは未知。
とりあえずアビスの大きさを見てほしい。
地面にぽっかり開いた黒い穴。
その深部をずっとず~っとたどっていくと、そこには別世界が広がっていて~、と穴は人間の想像力をかき立ててくれる。
そんな「穴系物語」で世界で一番有名なものは、白ウサギを追いかけてウサギの穴に落っこちた少女・アリスが繰り広げるファンタジー冒険もの、『不思議の国のアリス』(Alice’s Adventures in Wonderland)で間違いない。
世界中で翻訳された本のナンバーワンが聖書で次がシェイクスピア作品、そして3番目が『不思議の国のアリス』と言われる。
地下世界で行われるお茶会や、ジャケット・傘・懐中時計の白ウサギの格好は当時のジェントルマンそのもので、物語のいろんなところにイギリス文化が表れている。
日本なら、平安時代の貴族・小野篁(おのの たかむら:802年~853年)の不思議伝説がある。
小野は夜になると井戸に潜って地獄に行ってエンマ大王に仕え、朝になると井戸から人間界へ戻ってきて、天皇に仕えていたという話が『今昔物語集』にある。
くわしいことはこの記事を。
地獄と京都を行き来した小野篁
さて話はイエメンだ。
「ああイエメンか、イエメンね。でどこ?」という人が続出と思われるから、まずは基本情報をおさえておこう。
イエメンはアラビア半島の先端にある国。
面積:55.5万平方キロメートル(日本の約1.5倍弱)
人口:約2,892万人(2018年)
首都:サヌア
民族:主としてアラブ人
言語:アラビア語
宗教:イスラム教(スンニー派及びザイド派(シーア派の一派))
以上の数字は外務省のイエメン共和国(Republic of Yemen)基礎データ から。
イエメンのことは知らなくてもここにある都市「モカ」なら、知らないけど実は知っている。
日本人がよく飲むモカコーヒーは、ここから出荷されていたことからそう呼ばれているのだ。
最近、この国には「バルホートの井戸」とよばれる巨大な穴があることを知った。
それはまさにリアル・アビス。
VIDEO Surrounded in mystery and tales of demons, the Well of Barhout in Yemen’s east — known as the “Well of Hell” — is a little-understood natural wonder. The giant hole in the desert of Al-Mahra province is 30 metres wide and thought to be between 100 and 250 metres deep pic.twitter.com/BpGxDIpZeR
— AFP News Agency (@AFP) June 21, 2021
人類最後の秘境といわれる大穴ってここじゃね?
これは日本人のイマジネーションを刺激する穴だ。
・イエーメンっちゃホリデー!うきうきの貞子であった
・スターウォーズでボバフェット食べちゃうやつ
・最深部にグリフィスが居そう
・サンドワームっぽいのが出てきた穴だな。
・黙示録の獣「やあ」
・考え過ぎよモルダー、あなた疲れてるのよ
別に落ちたって、目玉が真っ黒になんてならないわよ
この穴は幅約30メートル、深さは100~250メートルと考えられている。
穴の奥には酸素がほとんどなくて空気も流れていないから、底にまで到達した人はなく、正確な深さは誰にも分からない。
アビs、バルホートの井戸を50~60メートルほど下りたことのある人は、中で奇妙なものを見て、奇妙な臭いがしたという。
とにかく謎めいた大穴だ。
ユーチューバーには格好のネタだろうけど、ちょっと手に負えそうにない。
「深淵をのぞく時、深淵もまたこちらをのぞいているのだ」というニーチェの言葉もこのスケールだと通じなさそう。
さて、そんな巨大な穴を見てアラブ人は何を想像したか?
地元では悪魔の言い伝えがあって、住民はこれを「地獄の井戸(Well of Hell)」と呼ぶという。
底から悪臭がしてくることから、この穴は悪魔の監獄として造られたものだと人々は信じている。
また、穴に近づいたら吸い込まれてしまう、ここには邪悪な生き物が住んでいる、という話が伝わっていてこの穴に近づく人はいない。
穴について話すことさえ不吉で、恐ろしくて口にしない人もいるという。
地面に開いた暗い穴は、世界中の人たちの想像力をかき立ててくれる。
でも、その表れ方はそれぞれの文化によって違う。
とりあえず実写版『メイドインアビス』のロケ地はきまったらしい。
朗報
この記事のあと、ついに人類は「地獄の井戸」の奥底に到達した。
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アビス(ABYSS、英語で「深淵」「地獄」の意味)と言えば、私は、昔のハリウッド映画「アビス」を思い出しますね。若き日のジェームズ・キャメロンが脚本・監督した深海SFアクション映画です。海洋調査隊が、深海に住む未知の知的生命体に出会うという話です。その知的生命体が万能の道具として操る「海水造形物」ですが、当時にしては画期的なSFX(特殊撮影技術)で描かれていました。そのSFX効果が成功したからこそ、キャメロン監督は次作の「ターミネーター2」において、T-1000(悪役の液体金属ロボット)を登場させる企画を思いついたとのことです。
もう一つ、この映画「アビス」の凄いところは、人間が超深海へ潜水するための技術として、「液体呼吸」を扱っているところです。映画の中でマウスが液体呼吸をするシーンが出てくるのですが、これ本当に「高濃度溶存酸素液体」の中にマウスを沈めて、実際に、数分間の「液体呼吸」状態で水中でも生き延びている様子を撮影しています。液体呼吸ができれば、超深海の水圧にも人体が耐えられると考えられているのです。
この技術は、その後の日本アニメ「エヴァンゲリオン」において、エヴァのパイロット達がLCLという液体中に沈んで液体呼吸をしながら操縦するというネタになっています。また、最近のハリウッド映画「パシフィック・リム」においても、怪獣と戦う巨大ロボットの操縦者達は、やはり操縦スーツの中で「液体呼吸」をしている様子が描かれています。これら巨大ロボット映画で、パイロットが液体中に沈んだ状態で操縦しているのは、強烈な衝撃や加速度を受けても「液体中であればほとんど影響を受けない」というのが理由です。
「アビス」はそういう意味だったんですね!
初耳です。
ありがとうございます。