【怪獣の王ゴジラ】核実験の衝撃・名前の由来・海外の見方

 

先週、メキシコで海上油田の近くにある海中パイプラインで火災が発生。

 

 

それを伝える日テレニュース24の報道がこれ。(2021/07/05)

「ゴジラ出現か」海に巨大な炎 メキシコ

たしかにこのオレンジの炎や立ち込める煙は、この世のすべてを終わらせるモンスターの登場シーンにふさわしい。

 

 

でも、ゴジラを生み出したのは火災じゃない。
あの怪獣が登場したきっかけは、1954年にアメリカが南太平洋のビキニ環礁で行った核実験だ。
広島型原子爆弾の約1,000倍の威力をもつ水素爆弾が炸裂し(ブラボー実験)、たまたま付近にいた第五福竜丸の船員が被ばくする。
その後、「原水爆による犠牲者は、私で最後にしてほしい」と言い残し久保山愛吉が亡くなった。
つまり日本は、原爆と水爆の両方の被害をうけた唯一の国ということになる。

この核実験と第五福竜丸事件が日本社会にすさまじいに衝撃を与えたことは言うまでもなく、これが『ゴジラ』を生み出すこととなった。

同年3月に行われたビキニ環礁での核実験と第五福竜丸、第十三光栄丸の被爆事件が社会問題となっていた。これに着想を得た田中は、「ビキニ環礁海底に眠る恐竜が水爆実験の影響で目を覚まし、日本を襲う」という特撮映画の企画を立てた。

ゴジラ

 

はじめは『海底二万哩から来た大怪獣』というタイトルだったものの、それじゃ長すぎるということで、「ゴリラ」と「クジラ」を合わせて新怪獣は「ゴジラ」と命名された。
ちなみに、ウェブブラウザの「Mozilla」はゴジラをもじったものだし、ピザーラの社名は「ピザ」と「ゴジラ」を合わせたもの。
日本生まれのピザで、ゴジラのように愛される店になって欲しいという創業者の願いが込められている。

 

だから『水爆大怪獣』となる。

 

ゴジラは海外でもすっかり有名だ。
英語版ウィキペディアには「世界的なポップカルチャーのアイコン」(a worldwide pop culture icon)とか、「怪獣の王」(King of the Monsters)と紹介されている。
1970年代にはドラキュラ、キングコング、オオカミ男、ミイラ、フランケンシュタインといった怪物を上回り、ゴジラは最も人気のある映画のモンスターに選ばれた。

まあここまではわかるし誇らしいとして、意外だったのがゴジラに対するこんな海外の見方だ。

核放射線によって目覚めた巨大怪獣のゴジラは、広島・長崎への核爆撃と第五福竜丸事件がまだ日本人の記憶に新しかったの中で、核兵器の比喩として考え出された。
また、ゴジラはアメリカを表していて(メタファー)、眠りから覚めた巨大な獣が日本に恐ろしい復讐をするという説もある。

With the nuclear bombings of Hiroshima and Nagasaki and the Lucky Dragon 5 incident still fresh in the Japanese consciousness, Godzilla was conceived as a metaphor for nuclear weapons.Others have suggested that Godzilla is a metaphor for the United States, a giant beast woken from its slumber which then takes terrible vengeance on Japan.

Godzilla

 

広島・長崎への原爆投下や、ゴジラが核兵器やアメリカを暗喩するという話は初耳。
「マジか?」と思ってこの見方の根拠を見たら、すべて外国人が主張しているものだった。
日本の制作側にそういう意図があったかは不明だけど、どうやら海外でゴジラはそう見られているらしい。

 

 

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1 個のコメント

  • > 広島・長崎への原爆投下や、ゴジラが核兵器やアメリカを暗喩するという話は初耳。
    > 「マジか?」と思ってこの見方の根拠を見たら、すべて外国人が主張しているものだった。
    > 日本の制作側にそういう意図があったかは不明だけど、どうやら海外でゴジラはそう見られているらしい。

    あー、このような日本と欧米での「発想の違い」を理解するには、「災害」に対する欧米人の考え方を知る必要があります。欧米人にとって「災害」とは、自然現象的に発生して人々の身に降りかかるものではなく、人知を超えた存在である「神」が、人間たちに対して、能動的に与えるものなのです。たとえば日本人は台風を普通は「台風~号」のように番号で呼ぶが、アメリカ人は「ジェーン台風」「キャサリン台風」などのように人名をつけて表します。また旧約聖書において背徳の街であるソドムとゴモラが滅びたのも、自然の天変地異によるものではなく、神が意図的に起こした天変地異によるものです。
    だから、「ゴジラが原水爆による災害を象徴する」ものであるとすれば、それを聞いた欧米人が「それではゴジラは、原水爆をこの世にもたらした『アメリカ』を暗喩するものなのか!」という連想が働くのも、ごく自然のことなんです。

    その一方で、日本人は、ゴジラだろうと、キングコングだろうと、キングキドラやモスラやラドンであろうと、どこか特定の「国」や「人間」を象徴するものだとは考えません。日本人にとってそれらの怪獣たちは、自然現象の一部として日本へやってきた、あるいは未来人や宇宙人など「理解できない人外の存在」がもたらした「災害」の一種なんです。

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    今まで、東南アジア・中東・西アフリカなど約30の国と地域に旅をしてきました。それと歴史を教えていた経験をいかして、読者のみなさんに役立つ情報をお届けしたいと思っています。 また外国人の友人が多いので、彼らの視点から見た日本も紹介します。