【違うのだよ発想が】日本料理の冷やし中華、中国人の感想は?

 

そうか。
ついに夏がやってくるのか。

 

 

七夕の7月7日は、1年を24の季節に分けた二十四節気のひとつ、小暑となることが多い。
それで、これから本格的に暑くなるぞココロセヨ、ということでこの日が「冷やし中華の日」となった。
それにしても日本の夏の始まりを中華が伝えるとは。

日本の夏の風物詩で、俳句の季語にもなっている冷やし中華
こんな名前をしているけど実はこの食べ物は和風で、中国とほとんど関係なく日本で生まれた創作料理だ。
冷やし中華の誕生説には1933(昭和8)年に東京の揚子江菜館、1937(昭和12)年に仙台の龍亭で生まれたという2つの説がある。

でもこの2店のまえに、1929(昭和4)年に発刊された料理本に冷蕎麦(ひやしそば)の作り方として、麺をゆでて酢、砂糖、氷をまぶし、その上にキュウリやタケノコを乗せ、冷スープや醤油などをかけるという冷やし中華の原点になりそうな食べ物の記述もある。

冷やし中華の爆誕説は他にもあってややカオス。
とにかく日本で生まれた中華料理とおぼえておいて間違いない。

 

具材を放射線状に、縦に並べて配置するのは富士山をイメージしているという。
さっきの農水省の冷やし中華のほうがそれっぽく見える。

 

中国料理であえて言えば、冷やし中華に近い一品を挙げるとしたら「涼麺」がある。
でも日本にいた中国人に言わせると、「いやー、涼麺はたしかに夏の食べ物ですけど、冷やし中華とはちがいますよー」とのこと。
何がちがうかと言うと、まず涼麺は冷たくない。
ただこれは「火で熱しない」というだけで、常温で出される麺料理だから、氷や氷水を使う冷やし中華とは根本的にちがう。

中国語版ウィキペディアを見ると、冷麺の専門店の中には麻醤油が香りを放つように冷麺を軽く温める店もあるという。

部分涼麵專賣店的涼麵也是以微溫的方式上菜,以確保麻醬遇熱散發香氣。

涼麵

 

火を通したら「涼」と矛盾するのでは?
という感覚は日本人のもので、中華圏では軽く火を通したものも「涼麵」の範囲内にあるのだろう。
実際、上の項目にある涼麵の画像は常温っぽくて、冷涼感が伝わってこない。
ちなみに日本のざるそばは「日式荞麦涼麵」とある。
ただ中国は広いし、料理にもいろんな種類がある。
さらに最近ではラーメンや餃子などの日本の中華料理が逆上陸しているから、氷を使ってよ~く冷やした涼麵もあるかもしれぬ。

ちなみに先ほどの中国人は「だって冷たいじゃん」とざるそばは食べなかったけど、冷やし中華は「おいしいから好き」と言う。
でも彼はそれを中国料理とは認めず、日本料理とみていた。
逆に考えると、中国人が日本にはない麵料理「冷やし日本」を作るようなものか。
まさにクールジャパン。

*中国料理と中華料理のちがいのひとつに、中華料理は日本人の好みに合うようにアレンジされた中国料理ということがある。
だから本場の料理なら中国料理になる。

 

インド人の留学生が大学近くのコンビニでバイトをしていたとき、おにぎりを温めてほしいと頼むのは中国人か台湾人で日本人だとその割合がガクッと減るから、その理由を不思議に思っていた。
留学生の寮に住んでいて中国人や台湾人の学生を知っていた彼は、日本人を含め東アジアの人間をまとめて「同じような人たち」と考えていたから、この明らかな差異の理由が分からない。
それはね、中華圏の人たちは基本的に冷たい食べ物が嫌いだからなんだよ。

知人の台湾人が春ごろ日本へ旅行に来たとき、ボクがコンビニ弁当をそのまま食べようとしたら、「温めないのですか?なんで?」とかなり驚かれた。

国土交通省HPによると、中国人の温かいもの好きは食事によって病気を予防したり治療する「医食同源」の発想によるものらしい。

「医食同源」の思想のもと、健康にも気を遣っている。全ての食材には固有の性質があり、食べることで身体が冷えたり温まったりすると考えており、一般的に、温かい食事を好み、冷たい食事は好まない。

中国

冷やし中華と涼麵の根本的なちがいもこの考え方によるものだろう。

 

 

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1 個のコメント

  • 「冷やし中華」は中国料理を装った日本の料理です。それは間違いありません。
    その意味からすると、むしろ名前は「冷やかし中華」の方が正しかったかもしれませんね。

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    今まで、東南アジア・中東・西アフリカなど約30の国と地域に旅をしてきました。それと歴史を教えていた経験をいかして、読者のみなさんに役立つ情報をお届けしたいと思っています。 また外国人の友人が多いので、彼らの視点から見た日本も紹介します。