7月22日、東京五輪・開会式の前日のきょう、組織委員会(とたぶん政府も)がパニック状態におちいっている。
原因は開会式の制作・演出を担当した中心人物が、20年ほど前に“人類最大の悲劇”を揶揄(やゆ)したから。
「当時には当時の常識や価値観があった!」
「一部の発言だけを切り取るのは間違っている!」
「彼はそのことを反省して、いまは高い倫理観を持っている!」
なんて言い訳が一切通じない、絶対的なタブーというのがこの世界にはある。
第二次世界大戦中に、ナチス=ドイツがおこなったホロコーストがまさにそれ。
これは日本なら高校世界史でならう出来事で、いまでは中学校でも学んでいるかもしれない。
地球で暮らす人間なら、知っておかないといけない最低限の常識だ。
ホロコースト
600万人が殺されたと言われる、ナチス=ドイツによるユダヤ人虐殺のこと。この用語は「旧約聖書」に由来する。ユダヤ人絶滅を目指し、アウシュビッツなど各地の収容所で計画的に虐殺がおこなわれた
「世界史用語集 (山川出版)」
こナチス=ドイツが国家として、ユダヤ人という一つの民族を意図的・計画的に絶滅させようと考え実行した戦争犯罪がホロコースト。
なるべくカネがかからず短時間で、しかも労力を必要としない殺害方法を考えたこの悪魔は、ユダヤ人を一か所に集めて毒ガスを噴射し絶命させることにした。
ナチスはユダヤ人を文字どおり「害虫」と考えていたらしく、上の説明に出てきたアウシュヴィッツ強制収容所ではこんなことが行われていた。
使用したガスは「チクロンB(防疫施設で伝染病を媒介するノミやシラミの退治にも使用)」で、効率良く処刑を行うための研究班を配し「32分で800名の処刑が可能であった」とされる。
毒ガスによって一度に大量殺害されたユダヤ人
連合軍が到着したとき収容所には大量の死体が放置されていた。
画像は「NHK 映像の世紀 第5集」のキャプチャー
NHKの『映像の世紀』は学校で、生徒に視聴を義務付けていい神ドキュメント番組
ノミやシラミを退治するチクロンBで、犠牲者は20分ほど生き地獄の苦しみを味わって死んだという。
ナチスはこうして“効率良く”、ユダヤ人を処刑していった。
もちろんこれはホロコーストのほんの一部を切り取ったものだから、全体像はぜひ調べて確認してほしい。
ユダヤ人虐殺で使われたチクロンBの空き缶
画像はMichael Hanke
東京五輪の開会式で、実質的に演出のトップを務めていた演出家で元お笑い芸人が、1990年代に舞台で「あのユダヤ人大量惨殺ごっこやろうって言った時のな」と発言していたことが発覚して、五輪組織委員会はこの人物を即座に解任。
辞退や辞任なら最低限の名誉は守られただろうけど、それすら許されず排除された。
江戸時代の武士に切腹を認めず、問答無用で首を飛ばしたようなもの。
『オリンピズムの目的は、人間の尊厳の保持に重きを置く平和な社会の推進を目指すために、人類の調和のとれた発展にスポーツを役立てることである。』
あらゆる価値観のなかで、このオリンピズムから最も遠く離れている行為がナチスのホロコースト。
世界中に影響力を持つユダヤ人団体の「サイモン・ウィーゼンタール・センター」は「どれだけ創造性のある人物でも、ナチスによるジェノサイド(虐殺)の犠牲者をあざける権利はない」と怒り、国連の事務次長は「決して冗談のネタにしたりやゆしたりしてはいけないことが、世界にはいくつかある。ホロコーストもその一つ」と批判した。
ナチス政権は障害のあるドイツ人も虐殺した。(お笑いコントでホロコーストを持ち出した)この人物を東京オリンピックに関わらせることは、600万人のユダヤ人の記憶を侮辱し、パラリンピックを残酷に嘲笑することになる、とこのユダヤ人団体は言う。
The Nazi regime also gassed Germans with disabilities. Any association of this person to the Tokyo Olympics would insult the memory of six million Jews and make a cruel mockery of the Paralympics
SWC Condemns Anti-Semitic Remarks by Director of Opening Ceremony of Tokyo Olympics
この抗議声明のなかで、「ユダヤ人大量惨殺ごっこやろう」が「Let’s play Holocaust」と英訳されていた。
「ホロコーストで遊ぼう!」みたいな感覚だろう。
「レッツ・プレイ・ホロコースト」という言葉が持つ恐ろしさ、おぞましさはとても言葉では表現できない。欧米人も絶句するはずだ。
もう一度、山積みにされた遺体の画像を見てほしい。
これで何をどう楽しむのか。
いま世界では日本語ではなく、「Let’s play Holocaust」が拡散されているから、ちゅうちょない「損切り」でこの演出家はあっさり解任された。
でも、この虐殺をやゆした罪を償うにはこれだけでは不十分だ。
明日の開会式では、この人物がかかわった演出部分をすべてカットして、入場行進と聖火の点火だけにする案がいま組織委員会で浮上している。
開会式でホロコーストのイメージが付くのは最悪だから、そこはまるごと削除されても仕方ない。
ことし2月に森氏が女性蔑視発言問題で五輪組織委会長を辞任して、開会式4日前には障害者いじめ発言で音楽担当が辞任、2日前に五輪文化プログラムに出演予定だった絵本作家が過去のいじめ問題などで辞退、そしてトドメはきょう、前日に演出担当が解任されるという異常事態にネットはちょっとした夏祭り状態だ。
・もはや演出も作曲もAIにやらせるしかない時代がきたな
・競技そっちのけで外野のトラブルの方がよっぽど注目を集めるスポーツイベントがかつてあったろうか
・何人辞めるんだよw
・次はだれよ
まだまだ居るだろ
高度な倫理観の持ち主がw
・誰だよ
選りすぐりの変な奴らを起用した奴は
・この問題の本質は1芸人の問題では決してなく
ホロコーストネタで笑う大衆がいるって事ではないの?
「Let’s play Holocaust」の破壊力はすさまじく、開会式だけでなく東京五輪が吹っ飛びそうなほどだ。
毎日新聞の記事で大会関係者がこう頭を抱える。(2021/7/22)
今度は演出担当者「五輪潰れかねない」 開会式前日の衝撃
これは大げさではなくて、五輪憲章にユダヤ人虐殺は絶対に触れさせてはいけない。
ここ数年だけでも、日本ではホロコーストやナチスに関するいろんな失敗をしている。
日本人が犯した「ナチスの失敗」。しまむら・欅坂46・Jリーグ
さて明日の開会式は一体どんなものになるのか。
組織委の人たちの想像を絶する修羅場の中にいるはず。
それはそれとして、国際化のいまは世界の人たちと交流することが当たり前の時代なのだから、日本の歴史教育でもナチスによるホロコーストについて、その目的や方法などをもっとくわしく教えるべき。
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> 画像は「NHK 映像の世紀 第5集」のキャプチャー
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> 国際化のいまは世界の人たちと交流することが当たり前の時代なのだから、日本の歴史教育でもナチスによるホロコーストについて、その目的や方法などをもっとくわしく教えるべき。
まったくもってその通りだと思います。自由主義を掲げる世界の常識ですね。
でもそれがどうしてできないのか? おそらく、一部日本人の持っている、戦前の「韓国・中国に対する日本人の行為」についての誤った認識が、ナチスのホロコーストに関する教育を躊躇させているのだと私は推定します。
どうして、自分たちの肉親を信じられないのかなぁ・・・。そんな残虐非道な行いを、私達の祖父祖母や両親がやれたはずがない。それほど冷酷になれる人達でしたか?
向うは小林と小山田を混同もしているし、あのネタも実際にやったのではなく、それはダメだという話の流れだったのに言葉だけでこの騒ぎ。しあも反ユダヤ主義者と大上段から決めつけ。
本人があの発言は完全に間違いだったと認めています。
お笑いコントでホロコーストを持ち出すのはマズいです。