【米国・英国人の謎】日本で”蛍の光”が別れの曲になったワケ

 

イベントの内容や目的と、まるで合っていない格好や言動をすることを「場違い」という。
もし日本の結婚式で参列者が祝福を表す白いネクタイではなくて、葬式の黒ネクタイをしていたらこの場違いはもう致命的だ。

国が違うとこんなことは日常茶飯事。

知人のアメリカ人は日本の結婚式で「アメイジング・グレイス」を聴いたとき、鳥肌が立つような違和感を感じたと言う。
日本では結婚式の鉄板「アメイジング・グレイス」は、本場アメリカでは死を連想させる“デス・ソング”だったから。
黒ネクタイほどではないとしても、彼女にとってはこの「場違い感」も半端なかったはず。

くわしいことはこの記事を。

文化の違い:米国人、日本の結婚式のアメイジンググレイスに衝撃

日本と外国では価値観や好みが違うから、同じものでもまったく違う使われ方をされていてもおかしくない。
むしろその場違いを楽しんで、相手の文化を知るきっかけにすべきだ。
ということで、もうひとつそんな話を紹介しよう。

 

ボクが車を出して、浜松に住んでいたアメリカ人とイギリス人をイオンに連れて行って買い物をしていたときのこと。
「せっかくの機会だし車だから」といろんなモノをまとめ買いする彼らのせいで、店内には『蛍の光』が流れ始めた。
すると2人とも「えっ?」という顔をする。

この曲はもともとはスコットランドの民謡で、準国歌のような扱いを受けている『オールド・ラング・サイン』だ。
欧米でも有名なこの曲を彼らが知っていてもおかしくない。
アメリカのコストコで「うさぎお~いし~」の『故郷(ふるさと)』が流れたら、日本人なら「何がはじまるんです?」となるだろうから、彼らの反応もわかる。
特にイギリス人にとっては母国の曲なのだから。

「これは日本の文化というかお約束で、店で『蛍の光』が流れると、もうすぐ営業終了だから急いでくれという意味になるんだ」と話すと、「そうか。でもなんで、この曲が終わりの歌なんだ?」とイギリス人が不思議そう。
彼らの感覚だとアメリカやイギリスで『蛍の光(Auld Lang Syne)』は、新年になると歌う始まりの歌だったからから、違和感を感じるらしい。

イギリスやアメリカ合衆国など英語圏の国々では、大晦日のカウントダウンで年が明けた瞬間に歌われる。台湾、香港では卒業式、葬儀などで、フィリピンでは新年と卒業式の両方で歌われる。

オールド・ラング・サイン

 

ちなみにスコットランドでは年始のほか、披露宴や誕生日などで歌われる。
2020年1月に欧州議会がイギリスのEU離脱協定案を可決すると、スコットランドの議員らが総立ちでこの歌を歌ったのは記憶に新しい。
日本でこの曲が終わりやサヨナラを伝えるBGMになったのは、「終了を惜しむ」ということが理由だったというから、原曲のニュアンスはないこともない。

イオンにいたアメリカ人とイギリス人はこの曲を聞くと「新しい始まり」と、日本の真逆をイメージすると言う。
だから半端ない違和感。
「なんで日本ではこれが“別れの曲”になったんだ?」という彼らの疑問が気になったんで調べてみた。
するとまず、明治時代に始まった音楽教育で西洋の音楽が採用され、メロディーはそのままで日本語の歌詞をつけた歌が「小学唱歌集」という日本初の音楽教科書に載った。
それで日本で『蛍の光』が広く知られるようになり、旧日本海軍の兵学校の卒業式でこの歌が使われたことが日本で「サヨナラの歌」になったきっかけになったようだ。

アメイジング・グレイスやオールド・ラング・サインのように、ところ変わればまったく別の使われ方がされた結果、外国人が「場違い」を感じる現象は世界中で発生しているはず。
そこから外国の文化や自国でそうなった歴史を知ると、国際化の良い勉強になる。

 

日本人のボクとしては、新年を祝う花火とともにマライアキャリーさんが歌う「オールド・ラング・サイン」にコレジャナイ感を感じる。

 

 

もし日本の結婚式で外国人がサプライズ・プレゼントとしてこの歌を歌い始めたら、その場にいた日本人はどんな反応をするのか。

 

 

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1 個のコメント

  • > ボクが車を出して、浜松に住んでいたアメリカ人とイギリス人をイオンに連れて行って買い物をしていたときのこと。
    > 「せっかくの機会だし車だから」といろんなモノをまとめ買いする彼らのせいで、店内には『蛍の光』が流れ始めた。

    私が子供の頃の体験から知る限りでは、スーパーマーケットの閉店ソングよりも、パチンコ屋の閉店ソングとして採用された方が時期的にはかなり早かったと思いますよ。中部地方だけなのかなぁ?

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    今まで、東南アジア・中東・西アフリカなど約30の国と地域に旅をしてきました。それと歴史を教えていた経験をいかして、読者のみなさんに役立つ情報をお届けしたいと思っています。 また外国人の友人が多いので、彼らの視点から見た日本も紹介します。