アホみたいに暑い夏が終わって9月の終わりごろになると、「秋風に揺れるピンクや白のコスモス」、「コスモス満開」といったニュースを見かけるようになる。
まえに「富士山が見たいですー。」というバングラデシュ人の女性がいたから、富士市の公園に連れて行くと、そこには上の写真のようなキレイなコスモスが咲いていた。
このコスモスという花はね、「宇宙」をあらわすギリシャ語の「コスモス 」と同じ言葉なんですよー。という話をバングラデシュ人から聞いて、はじめてコスモスの語源を知った。
ニッポン放送の「花も宇宙も…コスモスと呼ばれるヒミツ」には古代ギリシャ時代、哲学者のピタゴラスがはじめて宇宙を「コスモス」と呼んだとある。
地球を含めた世界のすべては「数的・美的な秩序を根源としている」という考えから、宇宙もコスモスと呼ぶようになったという。
いつも同じ場所で輝く星座を見て、秩序正しい世界と思ったのかも。
ちなみにコスメティクス(化粧)の語源もコスモスだ。
コスモスの原産地は中南米。
スペイン人が植民地支配していたメキシコでこの花を見つけ、花びらがキレイにバランスよく並んでいることから、「コスモス(調和・秩序)」と名付けた。
日本には明治時代に伝わったから日本史全体でいえば「最近」とも言えるけど、いまでは秋の季語になるほど親しまれている。
かわいらしい見た目に反してけっこうタフな生命力があるらしく、日の当たって水はけの良いところなら、やせた土地でもよく育つから全国的に植えられたらしい。
「宇宙」と同じ語源のコスモス
花が大好きというバングラデシュ人は、公園の案内にあった「秋桜」に引っかかった。
「なんでコスモスは日本では秋の桜なんですか? この花と桜にはどんな関係があるんですか?」と聞いてくる。
日本で生まれ育ったから「秋桜」と書いてコスモスと読むのは知ってたけど、桜の意味なんて考えたこともない。
だからいつものように聞こえなかったフリをするか、「そんなことより野球しようぜ!」と誤魔化そうとしたけれど、このバングラデシュ人はガチで知りたいようだったから、スマホで調べてみたとこれは「敵性語」だったことが判明。
戦前の日本ではアメリカやイギリスとの関係が悪化していくこと、両国を「敵性国」とみなすようになり、1940年(昭和15年)ごろから英語を敵性語と考え社会から排除していった。
それまでの外来語を無理やり日本語にした結果、
「ストライク」→「正球」
「ボール」→「悪球」
「ファウル」→「圏外」
「アナウンサー」→「放送員」
「レコード」→「音盤」
という言葉に置き換えられていく。
上のはまだいいとして「油揚肉饅頭」はかなりハードで、「軍粮精」になると意味不明にもほどがある。
*油揚肉饅頭(あぶらあげにくまんじゅう)はコロッケ、「軍粮精」(ぐんろうせい)はキャラメルのこと。
こんな感じで、植物の名称も和風に変えられていった。
「コスモス」→「秋桜」(あきざくら)
「シクラメン」→「篝火草」(かがりびそう)
「チューリップ」→「鬱金香」(うこんこう)
「ヒヤシンス」→「風信子」(ひやしんす / ふうしんす)
「プラタナス」→「鈴懸樹」(すずかけのき)
こうしてコスモスに「秋桜」という当て字が作られ、1977年に山口百恵さんの「秋桜」が大ヒットして日本でこの表現が定着した。
なんでコスモスが「秋の桜」になったのかは謎。
とにかくヨーロッパ人はこの花を見てコスモス(秩序・宇宙)を思い浮かべて、秋になると全国で咲くこの花を日本人は桜のように考えたのだろう。
「鬼畜米英」の時代の産物だけど、秋桜というキレイな名称を消すのは惜しかったのか、現代にも残っていてバングラデシュ人の疑問につながった。
コメントを残す