日本語とドイツ語の「酒飲み」が、ウワバミとキツツキのわけ

 

毎年10月ごろドイツで、「世界最大のビールの祭典」といわれるオクトーバーフェストが開かれる。

東京ドーム約9個分という広大な会場に巨大テントが作られて、そこでビールを飲むべし、飲むべし、そして飲のむべしという状態になり、ソーセージやプレッツェルなんかを好きなだけ食べる。
世界的にも有名なこのイベントについて、くわしいことはオクトーバーフェストをクリックしてくれ。

知人のドイツ人に「オクトーバーフェストってのはどんな祭り?」と聞くと、「クレージーだよ」と言って笑う。
ここで人びとは浴びるほどビールを飲んで、歌って踊って吐いて、そのあと地面に倒れるらしい。

 

これ、オクトーバーフェストの酔っ払いの動画なんで、優雅や上品なんて期待しないでくださいね。

 

 

こんな同時多発的ではないとしても、酒を飲んで意識をなくす人は日本でもよくいる。

アルコールに国境はないし、そういう大酒飲みはどこの国にもいるはず。
ドイツ語でそんな人間を表す言葉があるか聞いてみると、あちらでは「キツツキ」というそうだ。
この鳥はその名の通り、するどくて固いくちばしでもって、毎秒20回ほどの速さで何度も木を突いて穴を開けてしまう。
何度も何度も酒を口に運ぶような人間を、ドイツでは「キツツキ」と表現するという。

 

画像:Thomas Kraft (ThKraft)

 

酒が大好きな人間、ドイツでいう「キツツキ」を日本語では「酒豪」とか「ウワバミ(巨大な蛇)」なんていう。
ほかにも左党や上戸というんだが、その由来についてはこの記事をどうぞ。

【酒を持ってこい】左党(左きき)や上戸の由来って?

 

日本語を勉強しているそのドイツ人にウワバミ(蟒蛇)について話すと、

「なんでヘビなの?それは川や湖を泳ぐから、水と関係している?」

なんて疑問を口にする。
ヘビと酒が結びつかないらしい。
さて、なんで日本語では酒飲みをヘビで表現するのか?

もともと大きなヘビを古代の日本人は「おろち」と呼んでいて、15世紀ごろからそれに代わって「ウワバミ」が使われるようになった。
ヘビはわりと大きな生き物を丸のみにしてしまうから、大量の酒を飲む人間がいつしか「ウワバミ」と呼ばれるようになる。
ほかにも日本神話に登場するヤマタノオロチ(八岐大蛇)を、ウワバミと考えたという説もあり。

8つの頭と8本の尾を持った怪物・ヤマタノオロチがやってきて、櫛名田比売(くしなだひめ)という美しい娘を食べてしまうという話を聞いた須佐之男命(スサノオノミコト)が、「よっしゃ、オレにまかせろ」と言って化物退治を引き受けた。
ヤマタノオロチにしこたま酒を飲ませて眠らせることに成功すると、スサノオは「天羽々斬(あめのはばきり)」という刀で化物の身体を切り刻む。
するとヤマタノオロチの体内から、「天叢雲剣(あめのむらくものつるぎ)」が出てきた。
これが天皇を証明する三種の神器のひとつ、草薙剣(くさなぎのつるぎ)でいまは愛知の熱田神宮のご神体になっている。

酒を飲んで酔いつぶれたヤマタノオロチをウワバミとみて、酒飲みをそう表現するようになったという説もある。

 

 

ヤマタノオロチを退治するスサノオ
このあと櫛名田比売を妻にするというハッピーエンドが待っている。

 

 

酒飲みや酒好きという意味では同じでも、ドイツの「キツツキ」は何杯もビールや酒を飲むという回数、日本の「ウワバミ」はその量に注目しているという違いがある。
表現でいうとキツツキのほうがカワイイけれど、オクトーバーフェストを見る限り、その実態はきっと逆。

 

 

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今まで、東南アジア・中東・西アフリカなど約30の国と地域に旅をしてきました。それと歴史を教えていた経験をいかして、読者のみなさんに役立つ情報をお届けしたいと思っています。 また外国人の友人が多いので、彼らの視点から見た日本も紹介します。