きょう10月29日は、というか毎月この日は「肉の日」だ。
焼き肉店やレストランがよくキャンペーンをしているから、それは近所の店で確かめてもらうとして、この日は現在のトルコの誕生日でもある。
1923年10月29日、オスマン帝国を終わらせたケマル・アタテュルクが初代大統領に就任して、現在につづくトルコ共和国が成立した。
*アタテュルクは「父なるトルコ人」を意味する称号。
アタテュルクの改革によってイスラム法(シャリーア)はもはや国法ではなくなり、トルコはイスラム国家から世俗主義(脱・宗教)国家へと生まれ変わった。
翌年24年に起きた動きを見ればそれが分かる。
オスマン一族の国外追放、マドラサの廃止と世俗教育の導入、シャリーア法廷の廃止を決議し、イスラム保守派を排除した。さらに改革を進め、トルコ帽やヴェールの廃止、女性の解放、パシャやベイといった旧来の称号を廃止し、姓を付けることを義務付けた。
「オスマン帝国六白年 (中経出版) 斎藤優子 」
そして新生トルコは明治の日本と同じく、西洋諸国をモデルに近代化を目指す。
🇹🇷本日10月29日は、98周年を迎えるトルコ共和国の建国記念日です!
Happy October 29 Republic Day!#トルコ #建国記念日 #98周年#GoTürkiye #RepublicDay #HappyRepublicDay #October29 pic.twitter.com/F2heryhHG9
— トルコ共和国大使館 文化広報参事官室 (@tour_turkiyejp) October 29, 2021
そんな国から来ていまは静岡県に住んでいる知人が、日本人はやさしいし日本の生活は快適で、もう母国に帰れないほど気に入っているけれど、日本人から「トルコはイスラムの国」、「トルコはアラブの国」という前提で話をされて、“イラっ”とすることがあると不満を言う。
こう思っている日本人はきっとアラブと中東の違いがよく分かってなくて、頭の中でごちゃ混ぜにしているのだ。
中東と日本は遠く離れているし、アラブといえばアブラのイメージが強い。
よく話題になるのは「カルロスゴーンのいま」ぐらいで、中東とアラブの違いを知らなくても日本の生活で特に困ることはない。
だからよくワカランのも仕方ない。
でも、日本にいるトルコ人さんを「またか…」と思わせないように、また一般常識としてもアラブと中東の違いを知っておいた方がいい。
この違いを知らない人はかなりいる。
日本や海外でよく言われる「中東」は、東西はイランからエジプト、南北はアラビア半島からトルコまでの地域をさす。
これにパキスタンやモロッコを加えた「拡大中東」という概念もあるから、詳しいことは 中東 をクリックしてくれ。
知人のトルコ人に言わせると、アラブとはアラビア語を話す人の文化圏で、中東とは地理的(政治的)な概念のこと。
トルコは中東にある国だけど、トルコ革命でケマル・アタテュルクがオスマン帝国時代に使っていたアラビア文字を廃止し、西洋人が使うラテン文字に切り替えた。
だから、
Bira var mı?(ビールありますか?)
Bira yok.(ビールはありません。)
というトルコ語の文字と、下のアラビア文字はまったく違うのだ。
رسمتي ل زينيتسو من أنمي قاتل الشياطين
أتمنى تعجبكم ❤
アラビア語で日本のアニメを楽しむ人たちによる「Team Otaku Club」(たしか前身はArab Otaku)というのがネット上にあって、知人のエジプト人がこの会のメンバーにいる。
でも先ほどのトルコ人はアラビア語が分からないから、アニメが超好きなんだけど、このアラヲタ(アラブ・オタク)の一員になることはできない。
共和国になるまえのオスマン帝国の時代なら、トルコはアラビア文字を使うアラブの国だったから、「Team Otaku Club」のメンバーになる資格はあった。
*もちろんトルコ社会では、いまでもイスラム教の影響は大きい。
べブライ語を使うイスラエル、ペルシャ語を使うイランもトルコ同様、中東の国だけどアラブの国じゃない。
アラビア半島~モロッコにはアラビア語を使う国が多いので、アラブ世界は中東よりも範囲は広い。
モロッコはアフリカ大陸にある国だけど、知人のモロッコ人は自分をアラブ人、そしてモロッコをアラブの国と考えている。
ちなみにモロッコは「日が沈む」を意味するアラビア語「マグリブ」にある国。
アラブ世界は東西2つに分けることができ、イラクからエジプトまでをマシュリク(太陽が昇るところ)、リビアからモロッコまでをマグリブ(太陽が没するところ)と呼ぶ。
マグリブと呼ばれる地域
イスラム教の聖典『クルアーン(英語でコーラン)』はアラビア文字で書かれているから、アラビア語を母語としている国はイスラム教を国教とする「イスラムの国」であることが多い。
(ひょっとしたら全部そうかも。)
だからアタチュルクの改革によってイスラム法(シャリーア)が国法ではなくなり、イスラム国家から世俗主義国家になったトルコは「イスラムの国」ではないのだ。
イスラエルも違うから、「中東=イスラム世界」ということではない。
イランはちょっと複雑。
まずペルシャ語を使っているからイラン人はアラブ人ではないし、イランはアラブの国でもない。
でもイスラム教(シーア派)を国教と定めているから、イランは客観的にはイスラム国家だけど、個人レベルになると、イスラムのイメージを嫌って「イランをイスラムの国と言わないほしい」という人もいる。
ということでどうだろう。
中東とアラブの違い、そして世俗化(脱・イスラム教)したトルコはもうアラブの国ではないことが、おわかりいただけただろうか。
世界の国名・地名:語尾の「イア(ia)」はラテン語で「~の国」
世界の見方や常識が変わる15の地図。これが本当の地球だった。
トルコがアラブの国ではないことは昔から十分に理解していますが・・・、
> アタチュルクの改革によってイスラム法(シャリーア)が国法ではなくなり、イスラム国家から世俗主義国家になったトルコは「イスラムの国」ではないのだ。
??? 全然意味が分かりません。
Wikipedia「トルコ共和国」より:
> 宗教構成は、宗教の帰属が身分証明書の記載事項でもあることからかなり正確な調査結果が存在する。それによると、人口の99%以上がムスリム(イスラム教徒)である。
もしも「『イスラムの国』ではない」と認められたいのであれば、国民の多数派がイスラム教を捨てるか、もしくは改宗しなければムリですね。それが世界の常識だと思いますよ。まあ、トルコは何とかしてヨーロッパの一員として認められたいので、「自分たちはイスラムの国ではない(でも宗教はイスラム教です)」という訳のわからん主張をしたがる、その気持ちは理解できますが。
イスラム教では、宗教に関して嘘をつくことが認められているのですか?
主観は人それぞれですが、特定の宗教が憲法で国教と定められているかどうかによります。
信者の割合ではありません。
>トルコは何とかしてヨーロッパの一員として認められたい
これはトルコの現状を確認する必要がありますね。