あれから3年。徴用工問題で日本・韓国動かず、原告イライラ

 

2018年10月30日、韓国の最高裁が元徴用工訴訟で日本企業に賠償を命じ、原告が勝利して正義が負けた。
これは1965年の日韓請求権協定・経済協力協定をひっくり返す判決で、日本政府は国際法違反だと猛反発し、日本企業も政府と歩調をそろえて賠償に応じていない。

そんな3年を振り返って、原告の弁護士や支援者が日本政府と「戦犯企業」を批判したという。
中央日報の記事(2021.10.28)

「日帝強制動員賠償」大法院判決3年…「なんの変化もなかった」

イム・ジェソン弁護士は記者会見でこう話す。

「3年間なんの変化もなかった。3年が過ぎたのに強制動員を謝罪して賠償しろという原則的な話をそのままにしているのが残念でもどかしい」

市民団体のイ・グクオン代表はこんな感じ。

「いまからでも被害当事者が亡くなる前にこの問題を緩慢に解決できる道を日本が自ら探すことが日本の未来にも役に立つだろう」

 

この3年間なんの変化もなかった、という虚しさは日本も同じだ。

産経新聞の記事(2021/10/28)

徴用工訴訟 動かぬ韓国、原告は1000人超え 最高裁判決から30日で3年

日本企業を提訴した原告は千人を突破し、先月には資産売却命令が出されて日本企業の現金化が見えてきて、状況は着実に悪化している。
現金化されたら日韓関係はオワリだ。
日本政府は韓国に経済制裁を行うだろうし、韓国側も”制裁返し”をして両国関係は、これまで経験したことのない暗黒状態に突入する。
でもこうなると、より大きなダメージを受けるのは韓国だ。
それでこれ以上の関係悪化を避けるため、韓国政府内では解決策がいちおう議論されている。
でもそれは、日本が求める国際法違反の是正からはほど遠く、とても受け入れられないものらしい。
文政権は消極的な対応に終始していて、徴用工問題には何の進展も見られなかった。
3年が過ぎたのに、合意や国際法を守れという原則的な話をそのままにしているのが残念でもどかしい。

 

韓国司法も混乱している。
18年に最高裁が原告勝訴を言い渡したのに、その後の裁判で、日韓請求権協定を根拠に「訴訟による賠償請求は認められない」と最高裁の判決を否定する地裁判決も出された。
同じ内容の訴訟なのに、判決がなんで180度ちがうのか?
司法は迷走してるし、メディアも原告側も振り回されて戸惑っている。

最近では韓国政府が賠償を肩代わりする「代位弁済」案が浮上し、韓国の政治家は「現実的な解決策の一つ」と評価する一方、原告側の弁護士は「代位弁済は判決を無効化させる方策で(受け入れは)不可能だ」とこれを否定。
日本は過去の協定でこの問題は「解決済み」としていて、その立場を動かすつもりはない。
いろんな方面で混乱しているようだけど、日本としては、ボールを持ってる韓国の動き出しを待つしかない。

今年はじめの会見で文大統領は、日本企業の資産売却について「望ましくない」と述べた。
でもそれだけ。
そう言っただけで、具体的な解決策をいまだに提示していない。
けっきょく韓国政府にこの問題を解決する意思はなさそうだし、徴用工訴訟で「動かぬ韓国」はこれからも続くだろう。

読売新聞の記事を見ても、文大統領がリーダーシップを発揮する気配はゼロ。(2021/10/29)

「資産現金化」手続き進む、文在寅氏は「打開」主導せず…韓国側で「賠償金の肩代わり案」

 

でも実はこの状態は数年前、10年以上前からずっと変わっていないのだ。

日韓請求権協定・経済協力協定で日本は韓国に3億ドルを無償供与し、低金利で2億ドルを貸し出した。
さらに日本の民間企業は3億ドルの資金協力を行った。
ジャーナリストの池上彰氏が2014年に発行された本の中で、日本は約束したことすべてを行ったことに触れこう書く。

日本は韓国に賠償代わりに経済協力資金を渡しているのだから、後は韓国国内の問題である。韓国の国民が損害賠償を請求したかったら、韓国政府に言うべきことだ。これがこの条約以後の日本の主張です。

「そうだったのか!朝鮮半島 (集英社) 池上彰」

 

この経済協力資金で「漢江の奇跡」と言われる経済成長を実現して、いまの経済大国としての韓国がある。
後は韓国国内の問題で、これ以上、日本が韓国に渡すカネはないのだ。
18年の判決のまえから日本は同じことを繰り返し言っていたけど、韓国は動かなかったし、日本も譲歩しなかった。

「3年間なんの変化もなかった。賠償しろ」という話は韓国政府にするべき。
「この問題を緩慢に解決できる道」を韓国政府が探すことが韓国の未来にも役に立つのだろう。

 

 

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    今まで、東南アジア・中東・西アフリカなど約30の国と地域に旅をしてきました。それと歴史を教えていた経験をいかして、読者のみなさんに役立つ情報をお届けしたいと思っています。 また外国人の友人が多いので、彼らの視点から見た日本も紹介します。